腎臓が悪いとロキソニンを飲まない方がいい? 服用時の注意点を薬剤師が解説
病院や町の薬局でも目にすることがある「ロキソニン」。日常生活の中でよく使用している方も多いのではないでしょうか。しかし、腎臓に問題があるとロキソニンが飲めない場合があるという話しを聞いたことがあります。一体腎臓とロキソニンにはどのような関係があるのか、またどのような場合にロキソニンを飲まない方が良いのか。薬剤師の福田さんに解説していただきました。
監修薬剤師:
福田 治樹(薬剤師)
ロキソニンは腎臓で処理される薬
編集部
腎臓が悪いとロキソニンを服用できないと聞いたことがあります。ロキソニンは腎臓に対してどう影響するのでしょうか?
福田さん
ロキソニンは非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)という分類に属する薬で、主な薬効は解熱や鎮痛です。体内に入ったロキソニンが役割を終えた後、腎臓で処理され体外に排泄されるのですが、薬剤が排泄される際に、腎臓に大きな負担がかかることがあります。
編集部
なるほど。排泄の際に影響があるのですね。
福田さん
それだけでなく、ロキソニンは副作用でも腎臓に大きな影響を与えます。ロキソニンはプロスタグランジンという物質を抑えることで、痛みや熱を抑えます。しかし、このプロスタグランジンが抑制されることで腎臓の血流も抑えられてしまうのです。その結果、腎臓の負担が増加してしまい、腎臓の機能が下がってしまうと言われています。
編集部
ロキソニンのような痛み止めは全て腎臓で処理されるのですか?
福田さん
いいえ、全てではありません。薬剤はロキソニンのように腎臓で処理されるものだけでなく、肝臓や消化管粘膜、肺などでも処理(無毒化)されます。その中でも最も大きな役割を持っているのが肝臓です。肝臓は薬剤の分解や無毒化の専門臓器で、多くの薬剤が肝臓で処理されます。ロキソニンのように痛みや熱を軽減させる薬は、肝臓などでも処理されているものもあります。
編集部
ロキソニンが処理されないと何が起きますか?
福田さん
ロキソニンが処理されないと、身体に多くの異常をきたします。仮に頭痛時にロキソニンを過量に服用した場合、頭痛が服用前よりも悪化することがあります。これは頭痛を早く治したいと考える方がやってしまう、よくある事例です。ロキソニンが処理されずに体内に残ると、これと同じ状態になってしまうのです。また、副作用も注意が必要です。ロキソニンの副作用には、体温の過剰な低下や胃痛などの消化管障害、腎臓障害などがあります。ロキソニンが処理されず溜まると、副作用がより強く出てしまう可能性があります。十分に処理されないことで、有害な作用の方が強くなるのです。
腎臓が悪いとロキソニンを飲めない場合がある
編集部
どのような人はロキソニンを服用しないほうが良いのでしょうか?
福田さん
腎臓に関して疾病の診断を受けている方や、医師から腎機能の著しい低下を指摘されている方は服用しないようにしてください。ロキソニンの添付文書には、「重篤な腎機能障害のある患者は投与しないこと」と明記されています。具体的には急性腎障害、ネフローゼ症候群などと診断されている方が当てはまります。こういった診断を受けている方はロキソニンの服用はしないようにしましょう。また、具体的な疾病の診断をされていない方でも、医師から腎臓の状態が重篤であるとの指摘をされている場合も同様です。
編集部
腎臓が悪い状況で、無理にロキソニンを飲むとどうなりますか?
福田さん
腎機能がさらに悪化する可能性が高いですね。腎臓は血液などの体液をろ過することで、不要な水分や物質を体外に排泄すると同時に、必要な水分や物質は体内に留める役割を持っています。この機能が低下することで、余分な水分が体内に溜まるむくみや、身体に必要なたんぱく質まで排泄してしまうタンパク尿が現れます。また、ロキソニンがうまく排泄されずに体内にたまってしまう結果、体温低下や胃腸障害などの重大な副作用が発現する原因にもなってしまいます。
編集部
腎臓の機能が下がっている場合でも、軽度であれば飲めることがあるということでしょうか?
福田さん
添付文書には「重篤な腎機能障害がある場合」と記載されていますが、軽度の腎機能障害の方でも注意が必要です。自己判断をしてしまった結果、腎機能が今よりも悪化してしまう危険性があるからです。ロキソニンと似た作用を持ち、腎臓に負担をかけない薬剤も存在します。腎機能低下の程度にもよりますが、少しでも腎機能に低下がみられる場合は、一度医師に相談してから判断してください。
ロキソニンは市販でも手に入るので注意が必要
編集部
市販で買えるロキソニンは病院でもらえるものと同じですか?
福田さん
市販の購入できるロキソニンは医療用医薬品と同等の薬剤です。町の薬局やドラッグストアで購入できる薬剤は、「一般用医薬品」又は「Over The Counter:オーバー・ザ・カウンター(OTC)」と呼ばれ、身体への影響が大きい順に一~三類まで存在します。また、医師が発行する処方箋により受け取ることのできる薬剤を「医療用医薬品」と言います。ロキソニンはスイッチOTCと呼ばれ、処方箋無しでも医療用医薬品と同等のものが市販で購入できるようになっています。ただし、薬剤師の説明がないと購入ができないものもあるので注意が必要です。
編集部
「ロキソニン」という商品名でなければ、大丈夫なのでしょうか?
福田さん
商品名に「ロキソニン」の文字がなくても、同様の成分が薬剤に含まれる場合があります。総合感冒薬や総合解熱鎮痛薬が主な例です。総合薬は何種類かの薬剤が1粒又は1包に配合されているもので、商品名だけではどんな薬剤が含まれているか分からない場合が多いです。不安な場合は、薬局やドラッグストアの薬剤師に相談してみましょう。
編集部
どうしてもロキソニンを服用したい場合はどうすれば良いですか?
福田さん
ほかの薬剤では思うように効果が得られない、昔から愛用しておりほかの薬剤を使うのは抵抗がある、など人それぞれ背景は異なると思います。どうしてもロキソニンを服用したい方は、自己判断せずに医療機関を受診して医師や薬剤師に相談しましょう。
編集部まとめ
痛みや熱を和らげてくれるロキソニンは、腎臓に対して大きな影響を与えるということがわかりました。また、腎臓の状態によっては飲んではいけない場合があります。腎機能に不安がある場合の使用は、必ず医師や薬剤師に相談した上で検討してください。