【闘病】子宮筋腫で子宮全摘出術に至るまで ~納得いく治療を受けるために~
仮に青信号で横断歩道を渡っていても、車が赤信号で突っ込んでくる可能性はゼロではないように、基本的に何ごとも絶対の安心はないものです。だからこそ他者に身を委ねる手術・治療であれば、自身が納得した方法を受けたいと思うものでしょう。闘病者のakkoさん(仮称)が子宮筋腫の治療と手術までに経験したことについて、詳しく話を聞かせてもらいました。
※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2022年7月取材。
体験者プロフィール:
akkoさん(仮称)
1977年生まれ。神奈川県在住。職業は医療従事者。子宮筋腫となり、手術も経験。そのほかメニエール病の闘病経験もあり。
記事監修医師:
鈴木 幸雄(産婦人科専門医・婦人科腫瘍専門医)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。
きっかけは妊婦健診
編集部
どういったきっかけで病気を知ったのですか?
akkoさん
27歳で妊娠した際、妊婦健診で子宮筋腫を指摘されました。位置的に問題はなく、大きさも約2cmということで、経過観察となりました。無事に出産を終え、その後の検診で筋腫は消失していると言われたので、そこからは30歳を過ぎるまで数年間放置していました。その間、特に不調などは感じていなかったのですが、35歳の時に婦人科系の検診を受け、子宮筋腫が5cm程度にまで大きくなっていることを指摘されました。
編集部
子宮筋腫とはどんな病気なのでしょうか?
akkoさん
子宮筋腫は子宮の筋肉にできる良性の腫瘍で、2~3人に1人は子宮筋腫があるというくらい実は一般的なようです。
編集部
そこからの経過はどうなっていったのですか?
akkoさん
その時も経過観察と言われたので、私自身あまり問題視しておらず、2〜3年に一度、検診を受ける程度でした。検診のたびに筋腫が少しずつ大きくなっていることは確認していましたが、治療を強く勧められることはありませんでした。42歳の時に便秘が気になりはじめ、子宮筋腫の影響かと思い、かかりつけ医に相談したところ「どちらでも良いが、気になるようなら治療しましょう」と言われ、真剣に治療を検討しはじめました。
編集部
「どちらでも良い」とは?
akkoさん
筋腫がかなり大きくなっているので、もし子宮筋腫茎捻転などを起こしてしまった場合は、激痛で緊急手術になると思うが、必ずしもそうなるわけではないので、積極的に手術を選択しなくても良いということでした。
編集部
治療について、どのような説明を受けましたか?
akkoさん
医師からは「子宮を温存して薬物治療を行っていくか、子宮を温存する必要がないなら摘出手術の方が確実」と言われました。私自身も看護師で、ある程度の知識はありましたが、経験者に相談したり自分でいろいろ調べたり、かかりつけ医に相談したりしながらどうするか考えました。
編集部
どのような治療を選択したのですか?
akkoさん
今後の妊娠は考えていないこと、筋腫のサイズと数、そして、仕事も家庭も今後さらに忙しくなるであろうことなどから、手術をして子宮を摘出するのが妥当だと判断しました。子宮を温存すると継続的に通院する必要があるとのことだったので。
編集部
その時の心境を教えてください。
akkoさん
「手術は嫌だけれど、やるなら確実に治療したい」と思いました。出産経験や仕事柄から、摘出に対する抵抗はありませんでした。
自分が納得できる治療を求めて
編集部
実際の治療はどのように進めましたか?
akkoさん
帝王切開歴があったので、かかりつけ医の助言に従い県内の総合病院を受診しました。初診の時に、継続的な通院治療は難しいため摘出希望であることを伝えましたが、そこでは子宮温存療法を勧められました。
編集部
意見がわかれましたね。
akkoさん
はい。私としてははっきりと「摘出術をしたい」という希望もあったため、結局、新たなオピニオンを求めることにしました。子宮摘出術についても徹底的に調べ、手がけている手術の術式や今までの症例数などを病院のホームページで確認し、都内の総合病院を受診しました。かかりつけ医に事情を説明し、紹介状を再度書いてもらいました。
編集部
なるほど。もう一度病院を変更されたのですね。
akkoさん
はい。診察や検査の結果、そこでは手術が妥当と診断されました。その病院では、内診の際も「筋腫が大きく、入り口も歪んでいて難易度が高い」と難しいポイントをきちんと説明してくれました。私としては安心できそうだと感じたので、気持ちよくお任せすることができました。その後順調に通院、入院、手術と進み、術後の経過も良好で、1ヶ月、3ヶ月、1年のフォローを経て治療終了となりました。
編集部
手術について、もう少し聞かせてください。
akkoさん
手術前日に入院し、当日は、自分で歩いて手術室に入りました。酸素マスクをつけて点滴ルートを取った後に麻酔をしたのですが、そこからの記憶はなく、気づいたら手術後でした。手術は筋腫が癒着していて大変だったらしく、麻酔時間を入れるとトータルで5時間以上かかりました。
治療技術はもちろんのこと細やかな配慮にも感激
編集部
術後の痛みはどうでしたか?
akkoさん
痛みはありましたが、もともと酷い片頭痛持ちで痛みには強いようでした。手術翌日にはウロウロ歩き回っていたので、看護師さんにビックリされました。術後に痛み止めの点滴も使いましたが、呼吸抑制感が強く出たので使ったのは一度だけで、あとは坐薬のみで対応しました。
編集部
ほかに何か印象的なエピソードがあれば教えてください。
akkoさん
手術の前に「帝王切開の傷の上から切るけれど、思ったより筋腫が大きかったり癒着が強かったりしたら、申し訳ないけれど下方にT字に切開させてください」と説明を受けました。結果、帝王切開の傷のピッタリ真上に切開して頂いていたので、傷口がそれ以上大きくなることはなく、細やかな配慮と技術に感激しました。
編集部
現在の体調はいかがですか?
akkoさん
体調は良好です。子宮は摘出しましたが卵巣は温存したのでホルモンバランスも変わりなく、子宮がないことによる不都合は特にありません。生理がないのはとても楽です。
編集部
最後に、読者に向けてメッセージをお願いします。
akkoさん
今はインターネットも発達しているので、手術や治療を受ける際は自己学習をし、どんな病院かをきちんと調べて受診することが重要だと思います。特に病院選びは、施設情報ではなく、かかりたい科の医師に目を向けて調べると良いと思います。ネットの情報も玉石混合であったり、紹介された病院でもあまり情報のないところに行くのは勇気が要ったりするかもしれませんが、自分自身が納得して満足のいく治療を受けるためには重要なことだと思います。
編集部まとめ
医療行為がリスクゼロということはないわけですから、それならば前もって納得できる治療や手術を受けたいところです。そのためには、自分で情報を取りに行くことも重要なのかもしれません。現代はインターネットで病院の施設情報や医師情報を事前に詳しく得ることができますので、上手に活用することもそのための1つの手であることは間違いありません。