中絶手術にはどんな方法がある? 医師が掻爬(ソウハ)法・吸引法のメリットとデメリットを解説
産婦人科というとなんとなく敷居が高く感じる人もかもしれません。今回は、なかなか人には聞きにくい、でも知りたい「中絶手術の方法や実際の流れ」について、産婦人科医の村上雄太先生(GYNメディカルグループ 池袋クリニック)にMedical DOC編集部が話を聞きました。
監修医師:
村上 雄太(GYNメディカルグループ 池袋クリニック)
目次 -INDEX-
中絶手術の方法を医師が解説! 妊娠の週数によっても手術が違ってくるって本当?
編集部
妊娠中絶手術は、妊娠何週まで受けられますか?
村上先生
手術によって中絶を行うのが可能なのは妊娠12週未満となります。妊娠12週以降〜22週未満の方は、原則、手術ではなく、出産と同様に入院し、分娩して中絶を行います。22週0日以降は法律上、人工妊娠中絶手術を行うことができません。
編集部
早期の妊娠中絶にはどのような方法がありますか?
村上先生
早期中絶手術には、2つの種類があり、「掻爬(ソウハ)法」「吸引法」と呼ばれます。海外では、経口妊娠中絶薬も用いられていますが、日本では未承認のため使えません。
編集部
手術による影響などはありますか?
村上先生
日本産科婦人科学会の報告だと、中絶手術後に起こりうる影響として、月経不順、不妊症、習慣流産、次回出産時の障がいなどが挙げられていますが、統計学的なデータがあるわけではなく、手術との因果関係も示されていません。あくまで「中絶手術のあとに上記のようになった方がいるが、手術をしなくてもなっていたかもしれない」という状態です。
編集部
影響はあまりわかっていないのですね。
村上先生
そうですね。しかし、「手術」である以上、痛みや、麻酔薬によるめまいなどが起こる可能性はゼロではありません。
中絶手術の掻爬(ソウハ)法、吸引法のメリット・デメリットや痛みについて知りたい
編集部
先ほどおっしゃっていた2種類の術式について、もう少し詳しく知りたいです。
村上先生
「掻爬法」と「吸引法」ですね。まず、「掻爬法」は、スプーン状の器具や鉗子(かんし)を用いて、子宮内容物を掻き出す手術で、日本ではこちらの術式が多く用いられています。もうひとつの「吸引法」は、ストロー状の器具を子宮内に挿入し、子宮内容物を吸い出す手術です。
編集部
それぞれのメリット・デメリットなどはありますか?
村上先生
「掻爬法」は、古くから行われている手術法で、「中絶手術」を行っている医療機関であれば、どこでも受けられるというメリットがあります。一方で、子宮内容物を掻き出す際に、子宮穿孔や腸管損傷のリスクがあります。「吸引法」は、医師のスキルが必要とされており、受けられる医療機関は限られていますが、手術時間が短く、子宮内膜を傷つけるリスクが少ないため、身体にかかる負担が比較的軽いというメリットがあります。
編集部
中絶手術時の痛みについても教えてください。
村上先生
中絶手術の際、最も痛みを伴うのが「子宮頸管拡張」という、手術に先だって子宮頸管を広げる操作です。これは、手術前日などから行う場合は強い痛みを感じますが、手術当日、麻酔をかけたあとから行えば、痛みなく済ませることも可能です。手術時の痛みについても、麻酔でほとんどが緩和できます。麻酔をたくさん使えば痛みはなくなりますが、この時に難しいのは、麻酔薬には「呼吸抑制」などの副作用が起こりうるため、一度に大量を投与するのはリスクを伴うというところです。しかし、呼吸抑制の起こりにくい麻酔を2種類組み合わせることにより、1種類あたりの投与量を少なくし、リスクを抑えつつ、しっかりと痛みを緩和することができます。
編集部
入院期間はどのくらいになりますか?
村上先生
「掻爬法」と「吸引法」は基本的に、全ての方が日帰り手術となっています。術後の検診までは入浴はシャワーのみとなり、また、術後3日間程度は、抗生物質や子宮収縮薬など薬を服用していただきますが、それ以外については、翌日から普段通りの生活が可能です。激しい肉体労働などでなければ、翌日からお仕事にも行くことができます。
中絶手術の流れや費用は? 中絶方法や妊娠初期・中期などの違いで変わる?
編集部
実際の手術の流れについて教えてください。
村上先生
まずは、既往歴や最終月経日などを確認する「問診」を行い、その後、血液検査・エコー検査・性感染症検査などの「検査」と「診察」を行います。その後、麻酔をして手術、という流れになります。当院の場合は、これらを1回の来院で行うのではなく、検査・診察の際に手術日を決めていただき、後日改めて来院していただく形をとっています。手術時間は「掻爬法」「吸引法」いずれの場合も10〜15分程度です。
編集部
妊娠初期と中期では流れも違うのですか?
村上先生
先ほど解説したように、妊娠中期に入ると原則「手術」ではなく「分娩」になりますので、流れはもちろん変わります。対応している医療機関も少ないかと思いますので、各医療機関に確認してみてください。
編集部
費用はどのくらいかかりますか?
村上先生
中絶手術は保険の適用にならず、自費となりますので、各医療機関によって差がありますが、目安として10〜13万円程度かかります。そのほかにも、術前の検査代や術後の検診などの費用がかかる場合もあります。医療機関によっては、これらが「中絶手術」の費用に含まれていますが、そうでない場合もあるので、費用面が心配な方は、事前に確認してみてください。
編集部
最後に、MedicalDOC読者へのメッセージがあればお願いします。
村上先生
「中絶手術」を考えている方の中には、ご自身がどうしたいのか考えられない、現実を受け止められない、という方も多いと思います。まずは、妊娠したという現実を自分が受け入れること、その上で、どうするかを考えていただきたいと思います。どちらが良い、悪いということは全くありません。手術を選択したのであれば、自分を責めたり、後悔したりしないでください。もちろん、今後同じことを繰り返さないようにする、避妊の意識を変える、といったことも大切です。いつか、望むべきタイミングで、きっとあなたの赤ちゃんは来てくれると思います。
編集部まとめ
人は、長い人生の中で、いくつもの選択をします。その全てに後悔しない、というのは難しいかもしれません。まずは「どちらが良い、悪いということはない」という視点で、どんな選択をした自分も受け入れられると良いですね。信頼できる医師との出会いも大切だと思いました。
医院情報
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診療科目 | 婦人科・内科・泌尿器科・皮膚科 |