中絶は妊娠何週目まで? 手術可能な時期を教えてください
想定外の妊娠により、中絶せざるを得ない場合もあるでしょう。このような場合、どのくらいの時期までなら中絶できるのか、中絶手術はどんな手術なのかも気になるところですよね。今回は、中絶が可能な時期や中絶手術について「ショコラウィメンズクリニック」の木崎尚子先生に、詳しく話を聞きました。
監修医師:
木崎 尚子(ショコラウィメンズクリニック 院長)
東京女子医科大学卒業。川崎市立井田病院・川崎病院で初期研修。東京女子医科大学病院産婦人科、国際親善総合病院産婦人科、湘南藤沢徳洲会病院産婦人科、茅ヶ崎徳洲会病院産婦人科などを経て、2021年10月、横浜市都筑区にショコラウィメンズクリニックを開院。古くから薬能があるとされ、また、人を癒やしたりリラックスしたりする効果があるとされるチョコレートのように、ほっとできる空間を提供したいとの思いから、「ショコラウィメンズクリニック」と命名。
目次 -INDEX-
人工妊娠中絶とは
編集部
人工妊娠中絶手術について教えてください。
木崎先生
人工妊娠中絶手術は、「母体保護法」が適応される場合で、今回の妊娠を中断しなければならないときに行う手術です。母体保護法では、「人工妊娠中絶とは、胎児が、母体外において、生命を保続することのできない時期に、人工的に、胎児及びその付属物を母体外に排出すること」と定義されています。
編集部
適応となるケースについて教えてください。
木崎先生
人工妊娠中絶が認められるケースには2つあります。ひとつは、母体の健康上、妊娠の継続または分娩が困難な場合または経済上の理由がある場合で、もうひとつは、暴行もしくは脅迫によって性交の抵抗・拒絶することができなかった場合です。このいずれかに該当しない場合は、中絶することができません。
編集部
手術は妊娠何週目まで受けることができるのでしょうか?
木崎先生
手術ができる時期は、母体保護法によって妊娠22週未満(妊娠21週6日まで)と定められています。それ以降はいかなる理由があっても中絶はできません。また、妊娠11週6日までの初期中絶と、それ以降の中期中絶では、手術の方法が異なります。初期中絶の時期でも、妊娠10週を過ぎると胎児もどんどん大きくなり、それに伴い手術も難しく、母体の負担も大きくなります。そのため、胎のう(赤ちゃんの袋)の確認後は、なるべく早く手術をすることが望ましいとされています。
編集部
中絶は未成年であっても受けられますか?
木崎先生
法律上は、何歳であっても親の同意は必要ありません。ただし、未成年(18歳未満)の場合は、保護者・親権者の同意、署名を必要とする医療機関が多いです。
中絶手術について
編集部
初期中絶手術について教えてください。
木崎先生
初期中絶手術には、「掻爬(ソウハ)法」と「吸引法」の2種類があります。掻爬法は、日本で古くから一般的に用いられてきた方法です。事前に子宮の入口を拡げ、子宮内容物をスプーンのような器具で掻き出します。基本的な技術ではあるものの、盲目的に手作業で行うことが多いため、出血量が増えたり、子宮内膜が損傷したりするリスクがあります。そのため、医師の技術経験も重要です。
編集部
では、吸引法はどのような手術でしょうか?
木崎先生
吸引法はWHO(世界保健機関)も推奨している手術方法で、ストローのような吸引管を子宮内に挿入して、子宮内の胎児や胎盤などの内容物を吸い出す方法です。「電動真空吸引法(EVA)」と「手動真空吸引法(MVA)」があり、手動真空吸引法では、事前に子宮の入口を拡げる処置は不要であることが多いですね。いずれの手術も、ほとんどの場合麻酔(鎮痛・鎮静)をして行ういます。手術時間は10〜15分程度で、痛みや出血も少ないことが多く、ほとんどの場合日帰りもしくは1泊入院で行うことが可能です。
編集部
中期中絶手術についても教えてください。
木崎先生
12週以降の中期中絶では、子宮の入口を拡げる処置をした後、薬を使って人工的に陣痛を起こして流産させる方法をとります。体の負担や心の負担も大きく、数日の入院が必要となります。また、中期中絶の場合は、死産届の提出と胎児の埋葬が必要となり、金額の負担も大きくなります。
編集部
手術後、健康状態や将来の妊娠に影響することはありますか?
木崎先生
中絶手術を受ける時期は、早い方が手術後の体への影響は少ないでしょう。手術後も、適切に診察を受けていれば、将来の妊娠について大きな心配もいりません。
編集部
手術は保険適用ですか?
木崎先生
人工妊娠中絶は、ほとんどの場合は健康保険の適用にはならず、自費扱いとなります。しかし、妊娠の継続が母体の生命を脅かすおそれがあると判断された場合には、保険適用となることもあります。費用は施設によって異なるほか、提示の価格に加え麻酔料や検査代が追加になる場合もあるため、事前に確認してください。
編集部
手術はどんな医療機関で受けられますか?
木崎先生
人工妊娠中絶を実施できるのは、母体保護法により指定された「指定医師」のみですので、母体保護法指定医と標榜している医療機関でしか受けられません。また、12週以降の中期中絶は、入院設備がある医療機関でしか行うことができません。初期中絶しか対応していない医療機関も多いので、こちらも確認が必要です。
編集部
手術当日、必要な持ち物はありますか?
木崎先生
法律に則って行う手術のため、必ず本人と配偶者の同意および署名、捺印が必要になります。結婚している場合は、相手が夫以外であったとしても、戸籍上の配偶者の署名でなければいけないので、注意が必要です。基本的にご本人と配偶者双方の同意が必要ですが、強姦等の性犯罪やDVによって妊娠したときや相手が亡くなられているとき、相手が誰かわからないときなどはご本人の同意だけで中絶手術を行うことが可能です。法律上、結婚されていない方は本来、本人の同意のみで足りますが、パートナ-の同意が必要な医療機関が一般的です。
中絶の選択をするときの考え方
編集部
中絶を選択せざるを得ない場合には、体への影響も含め、できるだけ早く手術を受けたほうが良いですよね。
木崎先生
そうですね。体への影響だけを考えても、初期中絶の方が負担は軽くなります。妊娠中は胎児が大きくなっていくため、妊娠週数が進むと中絶による母体の負担も増加することが考えられます。また、妊娠中は出産に向けてホルモンバランスが大きく変化していくため、そのような状態での中期中絶では、体調を戻すまでにも時間がかかってしまうのです。しかし、それぞれご事情があると思いますので、初期・中期中絶にかかわらず、できるだけ早く手術を受けるようにしてください。
編集部
妊娠が分かり、中絶を検討する場合には、どんなタイミングで受診したら良いのでしょうか?
木崎先生
中絶を検討される場合には、どうするのかを決めてからではなく、妊娠している可能性に気付いたときに、まずは受診をしてください。早めに気付くには、生理予定日を1週間過ぎても生理が来ない場合、市販の妊娠検査薬を利用するか、産婦人科で尿検査を受けましょう。市販の妊娠検査薬で陽性が出たら、できるだけ早く産婦人科を受診してください。産婦人科で陽性が出た場合も、中絶を考えているなら、その旨を医師に伝えてください。
編集部
なにより早いほうが良いわけですね。
木崎先生
妊娠週数は最後の生理の日から数えますが、たまたま排卵が早く起こっていたり、生理だと思っていた出血が本当は生理ではなかったりすることもあり、ご自身が思っているより週数が進んでいることもあります。妊娠しているかどうかを医師にしっかり確認してもらうことで、早い時期にご自分にとってより良い選択が可能になるでしょう。
編集部
中絶を考えていても、なかなか踏み切れない場合にはどうしたら良いのでしょうか?
木崎先生
患者さん個々の事情や心境によって、そのようなこともあると思います。しかし、医師に早めに相談することで、ご自身の正確な妊娠週数の把握や、いつまでに決めたら最も安全に手術ができるのか、出産する場合はどうしたら良いのかなどのアドバイスを受けることができます。当院ではオンラインによる中絶の相談を行っていますが、医療機関によってそのような対応をしているところもあると思います。まずは話だけ聞いてみたいという方も、オンライン相談を行っている医療機関について調べてみると良いでしょう。
編集部
ありがとうございました。最後に読者の皆様にメッセージをお願いします。
木崎先生
予定外の妊娠の場合、これからどうしたら良いのだろうといろいろ不安だと思います。様々なご事情があり、妊娠を諦めるという選択しなくてはいけないこともあるでしょう。1人で悩まず、まずは医療機関に相談にいらしてくださいね。
編集部まとめ
人工妊娠中絶は妊娠22週未満までしか受けることができず、さらに12週以降の中期中絶では、体への負担や経済的な負担も大きくなります。また、実際にはご自身が想定しているよりも週数が進んでしまっていることもあるため、まずは医療機関に相談してみましょう。
医院情報
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診療科目 | 婦人科、産科、予防医療、美容診療、外来手術、ユースクリニック |