中絶手術の方法や術前・術中・術後の流れを産婦人科専門医が解説
やむをえず中絶手術を受けることになった場合、手術の方法や流れなどを把握していないと不安な気持ちになるでしょう。また、手術時に痛みがあるのかも知っておきたいところです。今回は、中絶手術に関する疑問を「GYNメディカルグループ」代表の村上先生に解説していただきました。
監修医師:
村上 雄太(GYNメディカルグループ 代表)
東邦大学医学部卒業。東邦大学医療センター大森病院産婦人科を経た2001年4月、東京都豊島区に位置する「池袋クリニック」院長に就任。2003年、「GYNメディカルグループ」設立。「ゆりかごから墓場まで」をモットーに患者目線の医療を提供して、女性が安心して仕事や家庭で活躍できるように心と体のケアをおこなっている。母体保護法指定医師。日本産科婦人科学会専門医、日本抗加齢医学会専門医。
目次 -INDEX-
中絶手術について
編集部
そもそも、中絶手術は痛みを感じるものなのでしょうか?
村上先生
従来の中絶手術で痛みが出るのは、手術そのものではなく子宮頸管を広げる処置です。子宮頸管に棒状の器具を挿入して、水分を吸収させて子宮頸管を徐々に拡張していく方法が非常に痛いとされています。麻酔も少量しか使用しないため、処置の途中で目が覚めてしまうことも少なくありません。しかし、現在は「無痛中絶手術」という方法もあります。
編集部
無痛中絶手術は、従来の方法と何が違うのですか?
村上先生
棒状の器具を挿入して子宮頸管を広げる処置は同じですが、無痛中絶手術は麻酔の分量や配合を調整して、途中で目が覚めるようなことはないように配慮しています。また、従来のものより細い器具を挿入して子宮頸管を広げていくことで、それほど痛みを感じることがなくなりました。
編集部
なるほど。妊娠してからどれくらいの時期まで受けることができるのでしょうか?
村上先生
母体保護法によって、「21週6日目まで」と定められています。一般に、妊娠4週目~11週6日目までの期間におこなう中絶手術を「初期中絶」、妊娠12週目~21週6日目までの期間におこなうものを「中期中絶」と言います。中期中絶に比べて初期中絶の方が体への負担も少なく費用も抑えることができます。
編集部
初期中絶と中期中絶では、中絶の方法が違うのですか?
村上先生
はい。初期中絶の場合、子宮の内容物を吸引する「吸引法」と掻き出す「掻爬法(そうはほう)」の2種類があります。一方の中期中絶では、陣痛を起こして分娩する「分娩法」が採用されます。初期中絶はほとんどの場合、日帰りでもおこなうことが可能ですが、中期中絶だと入院が必要になります。また、中期中絶の手術後に役所へ「死産届」と「死産証書」の書類を提出し、「死胎火葬許可証」を発行してもらわなければなりません。
中絶手術の流れ
編集部
中絶手術の流れについて教えてください。
村上先生
まずは婦人科を受診してください。そこで、まずは妊娠しているかどうかを診断して、妊娠している場合は妊娠週数を把握します。患者さんが中絶手術を希望する場合は、手術の内容や術後のケアについての説明をさせていただきます。また、血液検査をして血液型を確認するとともに、当院ではHIVや梅毒、B型肝炎、C型肝炎に感染していないかも確認します。さらに子宮頸部がん検査や淋菌感染症検査、クラミジア感染症検査もおこないます。
編集部
受診の当日に手術をすることもあるのですか?
村上先生
医療機関によって異なります。当院では、事前検査を綿密におこなう必要があるため、基本的には診察と手術を別の日に設定しています。その一方、診察と同時に手術をおこなう医療機関もあります。
編集部
手術当日の流れを教えてください。
村上先生
術衣に着替えていただき、手術室で静脈注射による麻酔薬を投与します。その後、細い器具で丁寧に子宮頸管を広げて、内容物を子宮から取り出します。手術時間は約10分程度です。
編集部
手術後はすぐに歩いたり動いたりできるのですか?
村上先生
手術が終わって1~2時間後には歩けるようになるので、それまでは院内で休息していただきます。その後、ご帰宅いただけますが、当日はなるべく安静にしてお過ごしください。
中絶手術を受ける際の注意点
編集部
無痛中絶手術を受けた後、日常生活に制限はありますか?
村上先生
翌日から普段通りの生活に戻っていただいて構いません。ただし、術後3日間は発熱の可能性があるので、できるだけ無理をせず安静に過ごしましょう。また、シャワーは当日からでも可能ですが、術後検診が1週間後にあるので湯船に浸かるのはそれまで控えていただきます。加えて、ジョギングなどの軽い運動や飲酒も1週間ほどは避けましょう。
編集部
手術後、月経はいつ頃戻るのですか?
村上先生
中絶手術を受けた後、最初に月経がくるのは、手術後30~50日くらいからです。ただし、ホルモンバランスが変化していることにより、一時的に月経量が増減したり、月経期間が長くなったり短くなったりすることもあります。
編集部
月経不順になることがあるのですね。
村上先生
はい。そのため、当院では中絶手術を受けてから1週間以内に、低用量ピルの服用を始めることを推奨しています。ピルを服用することでホルモンバランスが整って、排卵のタイミングを自分でコントロールできるようになります。月経周期が整えば、次回の出産を希望するとき、妊娠しやすくなるでしょう。なお、WHOも中絶手術後1週間以内にピルの服用を開始することを推奨しています。
編集部
ピルを服用する場合、いつまで飲み続ければいいのですか?
村上先生
「いつまで」という期限はなく、次の妊娠を望むときまで飲み続けるのがいいと考えます。上述したホルモンバランスを整える役割以外にも、子宮内膜症予防や望まない妊娠の回避など、ピルを服用することによって得られるメリットは非常に多いのです。ぜひ、自分の体を守るためにもピルの服用を検討してはいかがでしょうか。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
村上先生
中絶手術は、法律で守られている権利です。やむをえず中絶手術を決断した場合でも、決して自分を責めたり、悲観したりしないでほしいと思います。しかし、その一方で繰り返すべきことではないため、正しい知識をもったうえで適切な選択をできるようになってほしいです。不安やお悩みがあれば医師に相談して、自分の体を大切に守る選択をしていただきたいです。
編集部まとめ
従来の中絶手術と比べて、現在は痛みが出ないような工夫がなされているとのことでした。しかし、やむをえず中絶手術をすることになった場合、女性が抱える負担は身体的にも精神的にも大きいはずです。そんなとき、心から信頼できる医師との出会いが支えになることもあります。普段から相談できるかかりつけの婦人科医を見つけておくと、少しは不安も解消されるのではないでしょうか。
医院情報
所在地 | 〒171-0021 東京都豊島区西池袋2-35-8 |
アクセス | JR「池袋駅」 徒歩5分 |
診療科目 | 婦人科 |