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【体験記】動悸と息切れで動けず。「慢性血栓塞栓性肺高血圧症」(CTEPH)とは

 更新日:2023/02/21
【体験記】動悸と息切れで動けず。慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)とは

慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)という難病があります。エコノミークラス症候群と似ているそうで、闘病者も一度はそう診断されたといいます。ほかにも本態性血小板血症も判明し、現在も治療中という宍戸さんに、これまでの闘病経験について話を聞きました。

※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2022年5月取材。

宍戸さん

体験者プロフィール
宍戸 真記子

プロフィールをもっと見る

北海道常呂郡在住、1967年生まれ。家族構成:2児の母で現在は夫と2人暮らし。診断時職業は元酪農業/役職なし。

丸山 潤

記事監修医師
丸山 潤
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。

動悸と息切れで動けない

動悸と息切れで動けない

編集部編集部

病気に気づいた体調の変化は何でしたか?

宍戸さん宍戸さん

2013年ごろ、歩行時に動悸と息切れを自覚しました。自宅でも階段の上りがきつくなったり、歩くことが出来なくなったりすることがあったので、近くの病院Aの循環器内科を受診しました。

編集部編集部

受診した病院ではどのような検査を行い、結果はどうでしたか?

宍戸さん宍戸さん

採血と造影CTを撮ることになりました。その結果「肺の血管に血栓が詰まっているから、酸素をうまく取り込めなくて、息切れを起こしている」のだと。そのときは、エコノミークラス症候群と診断されました。ワーファリンとフロセミドという薬の服用で治療開始しましたが、息切れなどの症状は改善しませんでした。

編集部編集部

その後、どういう経過をたどって病気が確定したのですか?

宍戸さん宍戸さん

最初の医師の対応・診療姿勢に疑問を持ったため、別の病院Bも受診しました。そこでの心エコー検査などで慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)と診断されました。特定疾患に認定されるまでワーファリンとフロセミドでの治療を続け、その後はアデムパス服用と在宅酸素療法を開始することになりました。

編集部編集部

宍戸さんには、もう1つご病気があると聞きましたが。

宍戸さん宍戸さん

はい。2015年春、普段から通院していた精神科の病院で採血をした際に「血小板の数値が100万/μlを超えている」と連絡があり、病院B(CTEPHの診断を受けた病院と同じ)の血液外来を受診しました。すぐに骨髄穿刺をして、その結果、難病である本態性血小板血症が判明しました。

編集部編集部

病気が判明した時、どのような心境でしたか?

宍戸さん宍戸さん

エコノミークラス症候群と言われた時よりもCTEPHと判った時の方がショックでした。真っ先にスマホで病気のことを調べ、CTEPHを含む肺高血圧症の5年生存率が4割程度という文言を見て、毎晩泣いて過ごしましたね。

編集部編集部

CTEPHの治療はどのようなものでしたか?

宍戸さん宍戸さん

2018年に、某大学病院で肺シンチグラフィ検査を行い、その結果、同年に3回の入院で計7回の肺動脈バルーン形成術を受けました。その後は病院B(CTEPHの診断を受けた)でアデムパス、フロセミド、エリキュース投薬で様子を見ながら、前述の某大学病院で2019年に2回、2020年に2回、肺動脈バルーン形成術を受けました。

編集部編集部

治療中や薬の副作用についても教えてください。

宍戸さん宍戸さん

まだ肺圧が高かった最初の頃の肺動脈バルーン形成術では、酷い喀血を起こして中断することも度々でした。また、エリキュースとバイアスピリンの影響で歯磨きの度に歯ぐきから出血していました。突発的に大量の鼻血が出ました。あと、アデムパスの副作用の頭痛が辛かったです。

編集部編集部

入院中はどのような気持ちでしたか?

宍戸さん宍戸さん

本を読んだり、スクラッチアートに没頭したり、手紙を書いたり、割とリラックスしていました。行動範囲が病棟内と制限されていたので、欲しいものがある時は車椅子で助手さんにコンビニまで連れて行ってもらっていました。

編集部編集部

病気の情報収集はされましたか?

宍戸さん宍戸さん

スマホで片っ端から主にCTEPHの方のネット検索をかけました。そこで手術を受けた大学病院の肺動脈バルーン形成術治療のことを知りました。また、Instagramで同じCTEPHの人を集めて、グループラインを作り、そこで情報交換もしました。

患者と向き合って診察を

患者と向き合って診察を

編集部編集部

医師や看護師など、医療関係者からの説明は十分でしたか?

宍戸さん宍戸さん

最初の病院Aでは病気の説明はなく、こちらから何か言うと必ず否定されていたので、気分は全くよくありませんでした。ほかの患者のいる前にもかかわらず、看護師から30分以上も大声で説教されたことがありました。病院Bと大学病院では納得のいくまで説明を受け、満足な加療を受けられています。色々と相談にも乗ってもらえていました。

編集部編集部

医療関係者に望むこと、伝えたいことはありますか?

宍戸さん宍戸さん

まずは、診察時に目を見て欲しいですね。こちらを1度も見ることなく、パソコンの画面だけ眺めて診察が終了し、話も十分に聞いてもらえなかったときはわだかまりが残りました。

在宅酸素療法のため、動きが制限される。

在宅酸素療法のため、動きが制限される。

編集部編集部

治療を開始して、生活にどのような変化がありましたか?

宍戸さん宍戸さん

CTEPHの治療を始めたばかりの頃は、在宅酸素療法が24時間だったので、行動が大きく制限されてしまいました。肺動脈バルーン形成術を11回終えたあと、やっと昼間に酸素供給機器を外すことが出来ました。まだ外出時は携帯酸素が必要なので、家の中にいる時より外出時の制約は多いです。動悸や息切れがまだあるので、家事は休み休みやっています。仕事は障がい者支援施設でのアルバイトをした時期もありましたが、現在はどこにも就いていません。

編集部編集部

治療中の心の支えとなったものは、何でしたか?

宍戸さん宍戸さん

一番大きいのは主治医からの励ましの言葉でした。そして夫や子どもたちの存在です。

編集部編集部

あなたの病気を知らない方へ、一言お願いします。

宍戸さん宍戸さん

早期発見がなかなか難しい病気だと思います。もし動悸、息切れのある方は、我慢せず、早めに循環器内科受診をおすすめします。また、セカンドオピニオンも重要だと思いました。

編集部編集部

現在の体調はどうですか?

宍戸さん宍戸さん

酸素供給機器を外す時間が長くなってきたのですが、まだ肺の末梢血管にある血栓が取り切れずに残っているため、万全とは言えません。血小板数値は40万台と安定しているので、引き続き服薬を続けています。ですが、特に困った自覚症状はなく過ごせています。少しずつですが家事も手伝うことができるようになり、気持ちも安定しています。もう少し体調が良くなったら、リモートワークでできる仕事をしてみたいですね。

編集部まとめ

医師にもさまざまな人間がいますし、また彼らの言動から患者さんが受ける心象もまたさまざまです。病気を治すための基本は患者と向き合い、寄り添っていくことだと思いますが、宍戸さんのようなミスマッチをなくす意味でも、セカンドオピニオンは大切だと改めて思います。

この記事の監修医師