【体験談】いつもの「疲れ」が難病だった… 健診で発覚「特発性多中心性キャッスルマン病」
「特発性多中心性キャッスルマン病」(以下キャッスルマン病)はリンパ節に異常をきたし、発熱や貧血などの症状を呈する疾患で、発症の原因はいまだ不明。キャッスルマン病は全国に1500人程しか患者数が居ないと言われている非常に稀な病気でもあります。慢性の経過をたどる場合が多く、適切な治療を行えば生命予後は比較的良好ですが、完治は難しく生涯にわたる継続的な治療をする必要があります。また臓器障害などを合併すると、生命予後が悪化してしまいます。キャッスルマン病と診断を受けた瀧川さんに、これまでの話を聞きました。
※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2021年12月取材。
体験者プロフィール:
瀧川 麻実
1982年生まれ、東京出身。スノーボードインストラクターをしつつ選手としても数々の大会で入賞を経験しその後長野県に移住。移住後は2人の子供にも恵まれ、子育てをする中で35歳の時、久しぶりに受けた健康診断で異常が見つかり即入院を勧められる。各種検査を行うもなかなか診断がつかなかった。その後、希少難病である「特発性多中心性キャッスルマン病」と診断がつく。現在も定期的に通院し、点滴治療をしながら状態を維持している状態。免疫抑制をしており日々の生活に制限はあるものの、周りの方々の理解のもと、スノーボードインストラクターを続けている。また元々の職業でもあった動物看護師としても復帰できている。
記事監修医師:
原田 介斗(東海大学医学部血液腫瘍内科)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。
特発性多中心性キャッスルマン病と分かるまで
編集部
キャッスルマン病と診断された経緯について教えてください。
瀧川さん
健康診断で総蛋白やアルブミン、CRP(炎症反応)などの数値が悪いと言われ、内科を受診したのです。触診でわかるぐらい全身のリンパが腫れていました。その後、病院で全身の精密検査をしました。そして血液検査の結果、免疫系の数値がかなり悪く、はじめは「IgG4関連疾患」と疑われ、大学病院を紹介されました。
編集部
大学病院へ行ったその後、どうなりました?
瀧川さん
大学病院で検査をした結果、肺病変も見つかり入院を勧められました。子ども達を家族に託しバタバタと入院しましたね。そして入院後も色々な科を受診し、全身の精密検査や、リンパ生検をしました。その後、検査結果を待たずに今できる治療を開始することに。IgG4関連疾患にはステロイド治療が有効とのことで、大量のステロイドの投薬がスタートしたのです。
編集部
その後にIgG4関連疾患ではなく、キャッスルマン病と診断されたのでしょうか?
瀧川さん
はい、大学病院に入院後、薬の量を徐々に減らし、退院することができました。それからは、通院治療に切り替えたのですが、ステロイドだけでは炎症反応が抑えきれなくなり、免疫抑制剤を使用するようになりました。それまではIgG4関連疾患と疑われていたのですが、リンパ生検など色々な検査の結果、キャッスルマン病の診断が下りました。結局、ステロイドと免疫抑制剤でもコントロールが難しかったため、アクテムラの点滴に切り替えて現在に至ります。
編集部
ご自身の「キャッスルマン病」について説明していただけますか?
瀧川さん
私の場合、全身に炎症が起き、熱が出たり、リンパが腫れたりしました。ほかにも貧血や倦怠感といった症状もあります。稀に肺疾患や腎疾患なども引き起こすみたいで、今のところ完治は難しい病だと言われています。
編集部
はじめに起きた異変、キャッスルマン病の初期症状はどのようなものでしたか?
瀧川さん
日々の子育てに追われていたこともあり、疲れやすさや貧血、息苦しさがありました。しかし、いつもの事だろうと思い、あまり深く考えていなかったのです。でもそれがキャッスルマン病の初期症状だったのかなと、今では思いますね。
編集部
キャッスルマン病が判明したときの心境を教えてください。
瀧川さん
診断を受けたときは目の前が真っ暗になりましたね。先生の前で泣き、待合室で泣き、帰り道でも泣いてしまいました。小さい子ども達がいるため、心配と不安が込み上げて来ました。
キャッスルマン病の影響
編集部
発症後、生活にどのような変化がありましたか?
瀧川さん
私の自覚症状はダルさや貧血など、比較的軽いものでした。そのため何かが激変したということはありません。現在は免疫を抑える治療をしているので、感染症予防の徹底を常に心がけるようになりました。
編集部
薬の副作用などはありますか?
瀧川さん
ステロイド治療をした事により不眠や食欲不振、ムーンフェイスで顔が丸々してしまいました。あとは全身毛むくじゃらにもなってしまいましたね。
編集部
キャッスルマン病の症状改善、悪化を予防するために気をつけていることはありますか?
瀧川さん
アクテムラの点滴の間隔を空けないこと、そして毎日投薬しているステロイドを必ず飲むこと。この2つは注意しています。忘れて時間が空き過ぎてしまうと、どっと身体が重くなり、動けなくなってしまうので。
編集部
治療中の心の支えはなんでしたか?
瀧川さん
やはり家族の存在ですね。私を心強く支えてくれました。そして「もう一度スノーボードをしたい、雪上に立ちたい」という気持ちも心の支えとなっていました。
編集部
現在の体調や生活などの様子について教えてください。
瀧川さん
ダルさや疲れやすさはたまにありますが、アクテムラの点滴のおかげで生活に困る事なく暮らせています。
難病にかかる可能性は誰にでもある
編集部
もし昔の自分に声をかけられたら、どんな声をかけますか?
瀧川さん
家族とご飯を食べたり、遊んだり、仕事したりできる日常は当たり前ではないよ、と伝えたいです。
編集部
キャッスルマン病を意識していない人に一言お願いします。
瀧川さん
年齢関係なく、定期的に健康診断を受けてほしいです。私も今回のことで「まさか自分が病気になるなんて」と思ったので。
編集部
キャッスルマン病という存在を知らない方はまだまだ多いでしょうね。
瀧川さん
そうだと思います。私も、現在は一人でも多くの方にキャッスルマン病について知ってもらうために、情報発信をしています。また、今まで作られていなかった医学専門書の発刊プロジェクトのクラウドファンディングに参加しました。
編集部
最後に、読者に向けてのメッセージをお願いします。
瀧川さん
希少難病にかかる確率はわずかですが、なってしまう可能性は誰にでもあります。数日前まで病院の窓の向こう側に居た自分が、ある日を境に病院から出られなくなってしまい、本当にショックでした。だからこそ、「自分は大丈夫」と決めつけないほうがいいと思います。
編集部まとめ
「年齢関係なく、定期的に健康診断を受けてほしい」という言葉は、久しぶりに受けた健康診断で異常が発覚した瀧川さんだからこそ伝えたいことなのだ、と感じました。ふつうに生活を送っていると、つい健康に対する意識は薄れてしまいますよね。でも、瀧川さんのおっしゃるとおり、誰にでも病気になってしまうリスクはあります。だからこそ、定期的な健康診断は怠ってはいけません。自分と周りの未来を守るために。