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【体験談】服用していた薬のせいで難病に! 「大腿骨頭壊死症」

 更新日:2023/03/27
【体験談】服用していた薬のせいで難病に 「特発性大腿骨頭壊死症」

たとえばAとBの2つの病気を持っていた時、「Aへの治療がBに悪影響を及ぼす」「Aで体力が落ちているのでBへの治療ができない」といったことも実際に起こります。闘病者の小塩さんは、2012年に好酸球性肺炎を発症し、その治療で使うステロイドによって、2013年に大腿骨頭壊死症という難病も抱えることになったそうです。そんな当時から、これまでの体験について話を聞きました。

※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2022年1月取材。

小塩綾子さん

体験者プロフィール
小塩 綾子

プロフィールをもっと見る

愛知県在住。2012年に好酸球性肺炎、2013年に大腿骨頭壊死症を発症。現在は、ここまで回復してきた経験とクラシックバレエの体の使い方を用いて、心地よく楽に動くための体の土台づくりをする個人レッスンを行っている。

柏木 悠吾

記事監修医師
柏木 悠吾(医療法人社団橘会橘病院)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。

肺炎とその治療

肺炎とその治療

編集部編集部

肺炎の治療後に骨に異常が出たそうですが、経過を教えていただけますか?

小塩綾子さん小塩さん

私はクラシックバレエをやっていたのですが、2011年の秋頃から、踊ると咳が出ることがありました。2012年の3月末にバレエの公演があったため、病院には行かず、咳があってもそのままにしていましたが、公演後も徐々にひどくなり、日常生活で少し動くだけでもだるくて息切れがするようになったため、さすがにおかしいと思って病院に行きました。そこで「好酸球性肺炎」という診断がついて、絶対安静となり、ステロイドによる治療を受けました。内服薬だけではなく、私の場合は咳が出ると喘息のような喘鳴が出ることがあったので、ステロイドの吸引薬も使用し、徐々に息苦しさは無くなりました。やがて、その約1年後の2013年の5月末に、バレエを教えている最中に、左のお尻辺りが痛くなりました。

編集部編集部

それで病院を受診されたのですか?

小塩綾子さん小塩さん

お尻が痛くなってすぐに、町の整形外科に行きました。そこでレントゲンを撮ったときは、所見で分かるようなものはなく、筋肉の痛みではないかと言われたので、整体に通い、施術や鍼を受けました。

編集部編集部

その効果はありましたか?

小塩綾子さん小塩さん

いいえ。いつまで経っても改善せず、むしろどんどん体がこわばり、股関節の動く範囲も狭くなっていきました。痛みも、お尻以外に、脚の付け根、骨盤の横へと広がっていったのです。7月末にバレエの発表会が迫っていて、このままではいけない、どうにかしなくてはと焦っていたので、友達に勧められた別の整形外科へ行きました。そこでレントゲンを撮ったところ、「大腿骨頭壊死ではないか?」と言われ、別の日に股関節専門の先生にもう一度見てもらったところ「大腿骨頭壊死症」という確定診断がつきました。

ふたつの病気

ふたつの病気

編集部編集部

どんな病気なのでしょうか?

小塩綾子さん小塩さん

大腿骨頭という、太ももの骨の付け根が壊死してしまうというもので、骨が脆くなるためひどくなると潰れてしまいます。壊死だけでは痛みがないことが多く、大体、陥没骨折が起こって痛みがでます。ステロイドの使用や大量のアルコールが原因になっていることが多く、私の場合もステロイドの服用が原因でした。

編集部編集部

どのように治療を進めていくと医師から説明がありましたか?

小塩綾子さん小塩さん

手術をするか温存するかの2択で、私の状態だと、手術をしたほうが良いレベルだと言われました。壊死の範囲も広く、難しい手術になるだろうとのことでした。加えて、好酸球性肺炎の方の状態が良くなかったことと、数ヶ月ろくに動いていなかったため体力も落ちていて、股関節周囲の筋肉もかなりなくなってしまっていたため、筋肉がないから手術は厳しいかもしれない、とも言われました。

編集部編集部

そのときの心境について教えてください。

小塩綾子さん小塩さん

「治療で服用していたステロイドのせいで……」という、やりきれない気持ちが強かったです。

編集部編集部

結局、治療はどうされたのですか?

小塩綾子さん小塩さん

手術に耐えうる体力と、股関節周囲の筋肉をつける必要があったので、まずは理学療法士さんとリハビリをすることにしました。筋力はもちろんですが、関節などを正しく無理なく動かすということを教えていただき、痛みで全く上がらなかった太ももがパッと、しかも痛みもなく上がるようになったとき、一筋の希望の光が見えたことがとても印象に残っています。

編集部編集部

そんなに変わるのはすごいですね。

小塩綾子さん小塩さん

一時期は両松葉杖・車椅子を使用しなければならない状態になったのですが、痛みが少しずつ弱くなり、徐々に自力でも歩けるようになりました。リハビリで筋肉をつけながら経過観察していたら、4ヶ月たった頃に、主治医から「普通だったら骨頭が潰れる人が多いけど、あなたの場合は大丈夫みたいだね」と言われ、そのまま今に至るまで温存している感じです。

ふたりの主治医

ふたりの主治医

編集部編集部

好酸球性肺炎の方はどうなりましたか?

小塩綾子さん小塩さん

好酸球性肺炎は、治ったり再発したりを繰り返していたのですが、大腿骨頭壊死症になるまでは、ステロイドによる副作用などを把握していなかったので、言われた通りに薬を飲んでいました。しかし、診断がついてからは、一時期は肺炎になっても我慢して、自分でなんとかしようとしていたこともあります。それはそれで非常に辛く、ステロイドの治療効果を実感したので、その後は上手に付き合うようになりました。呼吸器内科の先生は、私がステロイドに恐怖心を抱いていることに対して、一定の理解をしてくださり、ステロイドを飲むことになっても、なるべく短い期間で終われるように配慮はしてくださっています。それでも、必要な時には「しっかり飲んでください」と言われますし、私もちゃんと言うことを聞いています。

編集部編集部

病気の前後で変化したことを教えてください。

小塩綾子さん小塩さん

痛みなく普通に生活できることの素晴らしさを痛感しました。息ができて、ご飯が食べられて、ゆっくり寝られることは本当に幸せなことです。そして、自分の脚で、行きたいところに行けることもとても素晴らしいことです。まだ少し、長時間のお出かけや旅行などでは痛みが出る不安はありますが、それでも以前と比べると夢のようです。あとは、自分の体は自分で守るという意識が大切だと感じました。治したかったからステロイドを飲んだわけですが、例えば薬を服用する時などは、どんな薬かを納得した上で取り入れることが大切だと感じています。

編集部編集部

今までの生活を振り返ってみて、反省点などはありますか?

小塩綾子さん小塩さん

関係あるかわかりませんけど、元々体力には自信があったのですが、それが油断に繋がったのかもしれません。高校・大学の頃から生活が乱れやすくなり、やはり睡眠や食事も大切にすべきだったと感じています。

編集部編集部

現在の体調や生活はどうですか?

小塩綾子さん小塩さん

ありがたいことに、2021年は、2012年に好酸球性肺炎になってから、初めて一度も肺炎にならず、ステロイドも服用しなかった年になりました。また大腿骨頭壊死症の方も、左脚の痛みや可動域制限はまだありますが、現在は、日常生活はほぼ支障がありませんし、クラシックバレエの入門レッスンを受けられるぐらいまでに回復しました。右の股関節にも、骨頭壊死の所見が見られていたのですが、2021年10月の診察で、主治医の先生から「壊死はあるけれど陥没骨折はしていなくて、骨頭が少し再生しだした」と言われました。これはなかなか凄いことなのだそうです。

編集部編集部

医療機関や医療従事者に望むことはありますか?

小塩綾子さん小塩さん

病気になった直後は、体が辛いのに加え、精神的にも参っているので、寄り添っていただけると嬉しいです。患者本人の治ろうとする意志や気力が充実し、そこに適切な治療が加わると、あり得ない奇跡が起こると思います。私の場合は、「筋肉がないから手術はまだ難しい」ときちんと説明してくださった整形外科の先生、リハビリを担当してくださった理学療法士さん、ステロイドに対する恐怖心を理解してくれている呼吸器内科の先生、誰が欠けても今の私はなかったと思います。

編集部編集部

最後に、読者に向けてのメッセージをお願いします。

小塩綾子さん小塩さん

病気になって、とても大変でした。しかし、そんな中でもプラスのこともありました。周りの人たちの優しさに触れ、何もできないところから、一つずつできることが増えていく喜びを知りました。人の痛みが今まで以上にわかるようになり、自分の体や健康についての知識もつき、積み重ねは裏切らないことも実感しました。身体は大変でしたが、周りに助けられて、本当にポジティブな気持ちで過ごしてこられたからこそ今があるので、そこは感謝しかありません。今後は、私がしてもらったように、誰かのお役に立てたらと思い、私の経験をお話しさせていただきました。皆さまが心身共に健やかに過ごせますことをお祈りしております。

編集部まとめ

一時期はステロイドを飲まずに我慢していたこともあったとのことですが、ステロイドに対する恐怖心を理解してくれている主治医との信頼関係で、うまく付き合えるようになったと言います。全体を通して、医療従事者との信頼関係が伝わってくる闘病体験記でした。

この記事の監修医師