~実録・闘病体験記~ 小学生で急性リンパ性白血病を患った女性「病気の過去も人生の一部」
急性リンパ性白血病とは、簡単にいうと「血液のがん」です。がん化した細胞(白血病細胞)が骨髄を占領し、正常な血液細胞が減少してしまいます。そのため免疫系の機能低下、貧血、出血傾向などの症状が見られます。今回はそんな急性リンパ性白血病と闘ってきた、入江真依さんに、闘病期間の話を聞かせてもらいました。
※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2021年12月取材。
体験者プロフィール:
入江 真依
愛知県在住、1993年生まれの28歳。昨年結婚し、現在は夫と2人暮らし。11歳の時に急性リンパ性白血病を発症し、約半年間入院する。その後1年半の外来治療を経て、14歳で治療終了。現在は、寛解状態であるが、治療で使用したステロイドによる晩期合併症の特発性大腿骨頭壊死症を抱えながら生活している。大学卒業後は夢だった看護師になるも晩期合併症のため継続できず、2年前に小児がん相談員を目指して転職。現在は医療ソーシャルワーカーとして病院に勤務している。
記事監修医師:
村上 友太
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。
こんなに元気なのに、血液のがん?
編集部
急性リンパ性白血病と判明した経緯について教えてください。
入江さん
11才のときに頭と左耳の後ろに“できもの”ができたのです。特に痛くも痒くもなかったのですが、念の為に近くの皮膚科を受診しました。すると「大学病院で一度診てもらった方が良い」と言われ、大学病院を受診。「悪性のものではなさそうだけど、念のために手術しましょう」とのことで、局所麻酔にて手術を行いました。1週間後に抜糸のため再受診をしたところ「病理検査の結果から悪性の疑いがある」と言われ、そのまま小児科へ行くことに。そして外来・入院での検査を経て、急性リンパ性白血病の診断を受けました。
編集部
はじめにカラダに起きた異変、初期症状はどのようなものでしたか?
入江さん
できものがあること以外は特に何も症状はなく、至って元気な小学生でした。だからこそ自分ががんだと言われて驚きましたね。
編集部
急性リンパ性白血病と判明したときの心境について教えてください。
入江さん
「こんなに元気なのにがん?」と信じられない気持ちでした。そして漠然とした怖さがありました。
編集部
どのように治療を進めていくと医師から説明がありましたか?
入江さん
「入院して抗がん剤治療を行う」と説明を受けました。小学生の私にはよく分からなかったのですが、抗がん剤を使用すると吐き気がしたり、気持ち悪くなったりすると言われ「これから自分はどうなるのだろう」と不安を感じましたね。
急性リンパ性白血病によって一変した生活
編集部
急性リンパ性白血病発症後、生活にどのような変化がありましたか?
入江さん
元気に小学校へ通っていた生活が一変しました。入院して治療を受けると、様々な副作用に襲われ、家にも帰れずガマンの毎日でしたね。
編集部
薬の副作用などはありましたか? ある場合、その薬名も教えてください。
入江さん
抗がん剤は全体的に吐き気がしたり、体がだるくなったり、腰が痛くなったりしました。あとはステロイドの影響で顔がまんまるになり、食欲もすごく増しました。
編集部
現在、合併症などはありますか?
入江さん
治療に使用したステロイドによる晩期合併症で特発性大腿骨頭壊死症がありますね。あと成長期に左右の脚長差が出たので、軽度の側弯があります。そしてその側弯による腰痛もありますね。
編集部
症状の改善、悪化を予防するために気をつけていることはありますか?
入江さん
股関節周りが硬くならないように、また腰の筋肉が硬直しないようにストレッチやウォーキングなどの運動を心がけています。以前は足の病気が悪くならないよう安静にしていたのですが、リハビリをするようになって、考え方が変わりました。リハビリの先生から「安静にしているのではなく運動して鍛えよう」「姿勢を直して歩きかたを見直そう」と指導していただき、今でも実践しています。
編集部
治療中の心の支えはなんでしたか?
入江さん
家族の存在です。4歳年上の姉は当時高校1年生でしたが、部活も入らずにほぼ毎日病院へ来てくれました。両親も泊まり込みで一緒にいてくれました。また、友達からも千羽鶴や手紙をたくさんもらい、とても嬉しかったです。
編集部
現在の体調や生活などの様子について教えてください。
入江さん
足腰の痛みは多少あるものの、毎日フルタイムで仕事に行っております。じつはがんの後遺症とは別にバセドウ病もあり、甲状腺の亜全摘術も受けているので、内服はずっと続いています。同年代の子たちより体力がなかったり、疲れやすかったりはしますが、比較的元気に過ごしています。通院も3~6カ月に1回程度です。
過去の自分と読者に伝えたい
編集部
もし昔の自分に声をかけられたら、どんな助言をしますか?
入江さん
「明けない夜はない、だから大丈夫」。将来の私は病気になったことで出会えた人たちがたくさんいて、色んな人に支えてもらって幸せに過ごしているよ、と声をかけたいです。
編集部
急性リンパ性白血病を意識していない人に一言お願いします。
入江さん
身近に小児がんの人はなかなかいないと思います。ですから、まずは小児がんのこと、急性リンパ性白血病のことを知ってもらいたいです。小児がんと闘っている子どもたちはたくさんいること。そして小児がんは寛解しても、晩期合併症を抱えて生活している人は多いということも。あと「AYA世代」と呼ばれる若年成人のがん経験者の存在も知ってもらいたいです。知ってもらうことから理解は広まると思うので。もっと「出来ないことを助けてもらいながら一緒に生活していける社会になってほしい」というのが私の願いです。
編集部
医療従事者に望むことはありますか?
入江さん
闘病中のしんどいときなどは看護師さんに足浴をしてもらったり、背中をさすってもらったりしたことがすごく嬉しかったです。忙しいなかでも子どもが子どもらしくいられるように、これからも子ども本人の声に耳を傾けて向き合ってもらえると嬉しいです。
編集部
最後に、読者に向けてのメッセージをお願いします。
入江さん
小児がん経験者と言っても、人それぞれ価値観は異なると思います。私にとっての小児がんは、人生の一部であり、人生の全部ではありません。同時に病気を経験していなければ今の私はないため、病気になった過去も大切な人生の一部だと思っています。ですから、これからも病気と共に、周りの方々の助けを借りながら、いのちいっぱい生きていきたいと思います。もっとたくさんの方に小児がんやAYA世代のがんと闘う人たちへの理解が広がっていくことを祈っています。
編集部まとめ
「病気を経験していなければ今の私はない」「病気になった過去も大切な人生の一部だと思っている」といえる入江さんは、本当に強い方だなと思いました。また11才のときに「念の為に近くの皮膚科を受診した」という行動が、病気の早期発見に繋がったのではないかと思います。入江さんのように「身体に異変を感じたらすぐに病院に行く」という選択肢をひとりでも多くの方に実践してほしい、と願うばかりです。