子どもが縄跳びを上手くとべない原因は? 練習方法のコツを作業療法士が解説!
縄跳びは手で縄を回しながら足はジャンプするという、手足をバラバラに動かすスキルが必要になってきます。縄跳びが上手くとべず練習中という、お子さんにはどんな練習方法がいいのでしょうか。教え方のコツなどもあわせて、子どもが縄跳びを上手くとべない原因について、「作業療法士」の宮田さんに話を伺いました。
監修作業療法士:
宮田 里依(作業療法士)
縄跳びが上手くとべない原因として考えられること
編集部
そもそも、縄跳びがとべないとは、どういう状態のことですか?
宮田さん
縄跳びが上手にとべていない時の特徴としては、縄の位置とジャンプするタイミングが合っていない、ジャンプの高さが低い、回している手の位置が高すぎる、低すぎる、左右差がある、空中での姿勢が不安定、 着地が不安定、など様々な状態があげられます。
編集部
上手くとべない原因には、何が考えられるのでしょうか?
宮田さん
手と足の協調運動が上手くできていない、などの原因が考えられます。協調運動とは、手と足それぞれ別の動きを同時に行うことをいいます。縄跳びでは両手はそろって縄を回し、降りてきた縄をタイミングよくジャンプして乗り越える、という動作に手と足の協調運動が必要になってきます。さらにそれを連続して何回もテンポ良く繰り返す必要があり、協調運動が苦手な子どもにとっては非常に難易度の高い運動になります。
編集部
手と足の協調運動の練習をすれば、縄跳びは上手になるのでしょうか?
宮田さん
協調運動の練習で縄跳びが上手になる場合もありますが、そもそも身体の軸が不安定だったり、自分の身体がどのように動いているかイメージできていなかったりすることも多く、その場合はただ闇雲に手足を同時に動かす練習だけをすればいいとは限りません。まずは、土台のための身体づくりが不可欠になってきます。
縄跳びが上手くとべるようになるために家庭でできること
編集部
縄跳びが上手になるための、身体づくりについて教えてください。
宮田さん
まずはトランポリンやバランスボールの力を借りて、上下にジャンプすることで重力方向に力を加え、身体の軸を安定させる取り組みが有効です。また、手押し車や縄くぐりなどで、自分の身体がどのように動いているかをイメージする力を高めていくといいでしょう。さらには重くて大きいものを押す・引っ張るといった動作、高いところによじ登るといった全身を使った運動も身体づくりには欠かせません。
編集部
基礎の身体づくりができてきたら、次は手と足の協調運動の練習でしょうか?
宮田さん
はい、手と足の協調運動の具体例としては、まずは大の字に寝転がります。そこから両手を頭上方向へ、脇をさらに開くようにスライドさせていくと同時に、両足は直立姿勢のようにピタッと閉じる、という動きを行います。初めはなかなか同時に動かすことが難しいかもしれません。これを繰り返し、スムーズにできるようになってきたら、次は両手を「気をつけ」の姿勢のように脇を閉じていくと同時に、両足を大の字に広げます。このようにいくつかパターンを変えて、手と足それぞれ別の動きを行なっていくといいでしょう。
編集部
ほかにも、遊びの中でできる手足の協調運動はありますか?
宮田さん
例えば、普段から大縄跳びやトランポリンで遊んでいたら、いつもの遊びのレベルアップとして、ジャンプしている最中に空中で手をたたく、頭上で手をたたく、背中の後ろで手をたたく、などの動作を取り入れるといいと思います。空中にいる間にタイミングよく手をたたくのは、初めは案外難しいですが、だんだんとできるようになるはずです。
すぐに改善できる!? 魔法の声かけ
編集部
上手くとべるようになるには時間がかかりそうですね。すぐに改善できることはありますか?
宮田さん
お子さんにもよりますが、いくつかの声かけや練習方法だけで大幅に改善することもあります。実際にこの方法で上達したお子さんたちを何人か見てきました。
編集部
その具体的な声かけと練習方法を教えてください。
宮田さん
まずは姿勢を整えることが大切です。背中が丸まって猫背のような状態になり、顔が下を向いてしまうことが多いので、何か目印になるものを指定し、そこを見ながらジャンプするようにアドバイスします。また、ジャンプが上手でないとドシンドシンと大きな足音を立ててしまうことが多いので、つま先から静かに着地するように注意を促します。小さな男の子などは「忍者みたいに」とアドバイスするとイメージもつきやすく、楽しんでくれることが多いようです。また、初めは縄を動かした瞬間にジャンプをするお子さんも多いので、「回してからジャンプ」のようにタイミングを取りやすいような声かけをします。
編集部
1度に全てやったら混乱しそうです……。
宮田さん
もちろん、全てを一気に伝える必要はありません。伝えるのは一つずつでも良いですし、どの声かけや練習方法がその子に合っているかを見極めることもとても大切です。
編集部
最後に読者へメッセージがあればお願いします。
宮田さん
幼稚園や保育園、小学校などで縄跳びをする機会も多いと思います。上手にとべないことで苦手意識や劣等感を持ってしまったり、集団生活に拒否を示すようになってしまったりすることも少なくありません。今日紹介したような遊びを通して、縄跳びが上手になる身体づくりという視点で、楽しみながら取り組んでみてください。
編集部まとめ
縄跳びが上手くとべないとひと言でいっても様々な原因や、それに合わせた練習方法があることが分かりました。ただ闇雲に縄跳びの練習をするのではなく、上手くとべない原因を分析し、その子に合った練習方法や身体づくりを行い、縄跳びを好きになるような取り組みができるといいですね。