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【体験談】摂食障害で155cm・30kgでも「痩せている」とは思えなかった

 更新日:2023/03/27
【体験談】摂食障害で155㎝・30㎏でも「痩せている」とは思えなかった

「痩せたい」という願望を抱いたことがあるという人は、少なくないと思います。一方で、「美味しいものを食べる幸せ」を感じたことがない方も、ほとんどいないのではないでしょうか。闘病者のmoeさん(仮称)は、13歳で「神経性食欲不振症」という、食べたくても食べられない状態になり、入院治療を受けました。155cmで30kg程度となっても、痩せているという感覚がなかったという当時の経験を、詳しく話してくれました。

※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2021年11月取材。

moeさん

体験者プロフィール
moeさん(仮称)

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1999年生まれ、2012年に神経性食欲不振症と診断される。現在はボディコンテスト出場を目指して、体重を増やしつつトレーニングに励んでいる。また、Instagramを通じて摂食障害について広める活動をしている。

別府 拓紀

記事監修医師
別府 拓紀
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。

食事が恐怖になる「神経性食欲不振症」

食事が恐怖になる「神経性食欲不振症」

編集部編集部

最初に不調や違和感を感じたのはいつですか?

moeさんmoeさん

中学1年生(13歳)の夏でした。私自身は病気という認識はなかったのですが、明らかに痩せ細り、頻繁に不調を訴えるようになったのを心配した親が病院へ連れていってくれました。私自身は、痩せているという感覚はありませんでした。病院へ行くとすぐに入院が決まり、家に帰ることなく入院生活が始まりました。

編集部編集部

受診から、診断に至るまでの経緯を教えてください。

moeさんmoeさん

中学1年生の時に初めて病院へ行った際は、155cmで30kgくらいで、すぐに拒食症を疑われました。診察で私自身に痩せすぎているという感覚や体の危機感がなかったこと、食事に対する恐怖や食事をとることができないという症状が明らかになり、神経性食欲不振症という診断になりました。

編集部編集部

どんな病気なのでしょうか?

moeさんmoeさん

神経性食欲不振症とは、食事に対する恐怖やカロリーに対する恐怖があり、食べたいけど食べられない状況に陥ってしまう病気です。自分自身は痩せすぎているという自覚がないため、どんどん体重を落としていきます。人それぞれ病状や心理は異なりますが、痩せることや食事のカロリーに異常なまでのこだわりや執着を持つ方が大半です。減っていく体重に喜びを感じ、それを自分の存在価値やストレス発散に繋げることも多いです。一度この病気になってしまうと抜け出すことが難しく、治療が長引くことが多いようです。

編集部編集部

そのようになったきっかけが何かあったのですか?

moeさんmoeさん

食事をとらなくなったきっかけや原因はいまだにわかっていません。もともと155cmで40~42kgぐらいで、特に太っているわけでもなく、ダイエットは意識していませんでした。もしかしたら、食事を減らしていくことで周りに何か気づいてもらいたかったのかもしれないです。そして、承認欲求というか、食事を減らすことや痩せることで、自分の存在価値を得ようとしていたのかもしれないです。

体重増加とともに行動範囲が増える「行動療法」を行う入院生活

体重が増えると行動範囲を増やしてもらえる「行動制限療法」という入院生活

編集部編集部

どのように治療を進めていくと医師から説明がありましたか?

moeさんmoeさん

入院していたころは、行動療法を取り入れていました。行動制限を行い、食事ができたり、体重が増えたりすると行動範囲を増やしてもらえるという治療法です。テレビや読書、お風呂、散歩の制限がありました。目標体重に達成すると行動制限が徐々になくなり、それと同時に1日の摂取カロリーが200kcalずつ増えていき、最終的には1日2000kcalをとっていました。食事は看護師さんが配膳・下膳するのですが、完食するまでは下げてもらえないというシステムでした。そんな日々を送って、36kgになったら退院を検討するという治療計画でした。

編集部編集部

そのときの心境について教えてください。

moeさんmoeさん

行動療法を行なっているときは、とても辛かったです。体重が増えないとお風呂すら入れないため、「何としてでも食べないと」という気持ちと、食べたくても食べられないという葛藤がありました。トイレや歯磨きまで自由にできないということが本当に嫌で、泣きじゃくった記憶があります。自分の体が食べ物を受け付けてくれないので、私は一生ベッドの上なのではないかと本気で思いました。まだ中学生だったこともあり、不安と恐怖と治療への抵抗でとにかく泣いていました。体はとても危険な状態であるのに、そのくらい入院も行動療法も嫌で最後まで抵抗を続けていました。

食への「許容」が少しずつ増えていった

食への「許容」が少しずつ増えていった

編集部編集部

治療や闘病生活の中で、何か印象的なエピソードなどあれば教えてください。

moeさんmoeさん

入院初めは食べ物を見るのも嫌で、食べようと思って口まで運んでも食べられない状況が続いていました。私は6人部屋での入院で、周りには同世代や自分より小さな子が入院していました。周りの子たちはみんな食事を楽しんで食べていて、とても幸せそうだなと感じました。最初は疎外感がありましたが、そのような環境にいるうちに、本当に少しずつですが、食事への抵抗がなくなり食べられる量も増えていきました。部屋のみんなで話しながら楽しく食べることで、こんなにも食事への恐怖や抵抗が和らいでいくのかと感じました。時間はかかりましたが、周囲の環境や楽しみながらご飯を食べるということだけで、こんなにも食事に対する意識を変えられると学べたことが入院中で一番印象に残りました。

編集部編集部

病気の前後で変化したことを教えてください

moeさんmoeさん

一番変わったことは、食事に対する楽しみができたということです。入院前は、食事の時間が1日の中で一番苦痛でした。食べたくないのに食べないといけないという、いわば地獄のような時間でした。ですが、退院後はある程度いろいろなものを食べられるようになって、食べたいと思うものができたり、行きたいお店ができたり、食事を自ら楽しむことができるようになりました。それまではできなかった外食ができるようになったり、スイーツが食べられるようになったり、少しずつ食への許容が増えていったことが大きな変化です。

編集部編集部

今までを振り返ってみて、後悔していることなどありますか?

moeさんmoeさん

一番の後悔は、周囲の声をしっかり聞けばよかったということです。痩せ始めたくらいに、両親や友達は心配して声をかけてくれていましたが、痩せる楽しさに溺れて何一つその声を聞き入れませんでした。あの時にちゃんとその声を聞いて、食事をとっていればこんなに苦しむことはなかったのにと感じます。

編集部編集部

現在の体調や生活はどうですか?

moeさんmoeさん

入院治療を受けた病院は遠いこともあり、現在は自宅近くのクリニックで月に一度診てもらっています。1か月間にあったことや、心理状態、今後どのようにしていきたいか、というお話をしています。実はコロナ禍になってからまた体重が下がり食事をとれない日々が続いてしまったのですが、ジムのトレーナーさんと出会ったことがきっかけで今はとても楽しく食事をとることができています。ですがまだ低体重が続いているので、増量のために日々の食事やカロリーの管理はしていて、目標体重に達するまではトレーニングもお休みしている状況です。体重を増やすことは難しいけれど、早くトレーニングを再開したいので頑張っています。

編集部編集部

医療機関や医療従事者に望むことはありますか?

moeさんmoeさん

もっと多くの病院で摂食障害を診てほしいです。私は診てもらえる病院を見つけるまで何件も病院へ行きました。国が定めている摂食障害専門病院は予約を取ることすら難しく、本当に自分が辛い時や困っている時に診てもらうことができません。心療内科にも何件も行きましたが低体重で受け入れてもらえませんでした。摂食障害で悩んでいる人、辛い思いをしている人はたくさんいます。少しでも多くの人が早い段階で、診察してもらえる環境をつくってほしいです。

編集部編集部

最後に、読者に向けてのメッセージをお願いします。

moeさんmoeさん

私は摂食障害になり10年経ちます。そして食べなかったことを本当に後悔しています。痩せすぎた外見だけでなく、体の機能や骨粗鬆症のリスク、妊娠が出来ない体になるかもしれないという不安や恐怖と今も闘っています。もし、周りに摂食障害かもしれないという人がいたら、声をかけてあげてください。摂食障害は一度なってしまうと回復まで時間がかかるし、本人も周りの人も辛い思いをしてしまいます。摂食障害に陥る前に周りが気づいてあげられれば、早い段階で救うことが出来るかもしれません。そして今摂食障害と闘っている方は、辛いかもしれません。どうしたらいいかわからないかもしれません。でも大丈夫。自分を信じて、治したいという意思が少しでもあったら乗り越えられます。私も頑張ります、乗り越えます。一緒に闘いましょう。

編集部まとめ

「拒食症」という言葉は聞いたことがありましたが、食事や体重に応じて行動範囲を増やす「行動療法」についてきちんと話を聞かせてもらったのは初めてでした。食事が「自由に行動するための手段」になってしまうのはお辛かったと思いますが、周りの方達に支えられながら「食べる楽しみ」を感じられるようになり本当に良かったです。そんな経験を経てからの「周りに摂食障害かもしれないという人がいたら声をかけてあげてください。」というメッセージに重みを感じました。moeさん、ありがとうございました。

この記事の監修医師