FOLLOW US

目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. 医科TOP
  3. 病気Q&A(医科)
  4. 「拒食症」とは?原因や症状についても解説!

「拒食症」とは?原因や症状についても解説!

 更新日:2023/03/27
「拒食症」とは?原因や症状についても解説!

拒食症は過度なダイエットの結果たどり着くイメージがありますが、ストレスなど心理的要因により必要な栄養摂取を拒む摂食障害に分類される精神疾患の1種です。

とくにやせ信仰の強い10~20代の若い女性のおよそ1000人に1人の割合で発症します。極度な体重減少がみられる場合は命にかかわり、治療も困難なため軽視できません。

今回はご自分やご家族が「拒食症かも?」と感じた場合のおもな特徴や傾向について解説します。

また併発しやすい精神的・身体的な病気や治療方法についても紹介するため、参考にしてみてください。

伊藤 直

監修医師
伊藤 直(医師)

プロフィールをもっと見る
所属:平成かぐらクリニック院長 メンタルアシストプログラム総責任者、一般社団法人 健康職場推進機構理事長、医療法人社団 平成医会 理事

著書:精神科医が教える3秒で部下に好かれる方法

拒食症の症状・特徴

体重計に乗る女性

どんな症状がありますか?

  • 体調不良などによる一時の食欲不振でなく、太ること自体に恐怖を感じているため極端な食事コントロールをします。
  • それにより例え標準体重よりやせても自分が太っていると思い込み、食べてもすぐトイレで吐いたり下剤を乱用したりと、とにかく食べたことを無かったことにするのがおもな症状です。
  • また栄養不足の影響で無気力や集中力の低下、不安の憎悪といった状態になり攻撃性や衝動性も高くなるため、人とのトラブルも起こすようになります。

拒食症の人の特徴を教えてください。

  • はた目には極度にやせており体力の低下がみられても、とにかくアクティブにふるまいます。
  • どんなに体重が減っても自分ではやせていると思っていないため、周囲が病院での受診をすすめても頑なに拒否するなどこだわりの強さがみられます。
  • 学業や仕事の能率の低下も顕著で、日常生活に支障が出るレベルです。また食事を摂っても体重増加を恐れ嘔吐を繰り返すため耳下腺が腫れ、手に吐きダコがある方も多いのが特徴です。

拒食症の診断はどのように行いますか?

  • 体重の減少が診断基準となり、3ヶ月以上持続して標準体重の20%以上の減少があった場合拒食症と診断されます。
  • 標準体重はBMI(ボディマス指数)の値が22であれば適正とされ、算出には〔身長(m)×身長(m)×22=標準体重〕の計算式が用いられています。BMIが15kg/㎡未満は最も重度であり、標準体重を30%以上下回った場合は即入院の措置がとられるのです。
  • また数値的な基準のほかに標準体重よりはるかにやせているにも関わらず食事制限をやめない・嘔吐や下剤の乱用など具体的な行動も代表的な診断理由です。

どのような精神的な病気を併発するのでしょうか?

  • そもそも自分への自信の無さや自己肯定感の低さが拒食症の原因となっているケースがほとんどです。このことにより抑うつ状態を引きおこしやすくなります。
  • またアルコールや薬物依存など他の精神疾患も併発しやすく精神的に追いつめられると自傷行為をする傾向もあります。そして拒食症の方は元来他人と距離感をとりづらかったり、母親の過干渉により母子関係に問題がみられたりする状況が多いのが特徴です。
  • それが拒食症や精神疾患の連鎖の引き金になっている場合もあるため、どこに重点をおいて治療を進めるかが肝心になります。

併発する可能性がある身体的な病気も知りたいです。

  • 体重が著しく減ることで女性ホルモンが低下し、女性の場合は生理が止まるいわゆる無月経になります。
  • また栄養が不足するため便秘や貧血も伴います。
  • 血液を調べると白血球の減少や肝機能異常・低タンパク血症・高コレステロール血症などがみられ、これは日常の嘔吐が原因です。また骨粗しょう症や腎機能障害を引きおこすケースもあり、低体重が長期間続くと脳の萎縮もみられるようになります。

拒食症の原因

体重計の前にうずくまる女性

拒食症の主な原因は何でしょうか?

  • とにかく細くやせていることが美徳のような誤った価値観が一部にあるのは事実です。それを敏感に感知する若い女性の個々に低い自己肯定感や親子関係の不和など人間関係の不調・ストレスがある場合、拒食症につながるケースがあります。
  • 「やせてきれいになりたい」「認められたい」という一見ポジティブな願望と結びつくことで食べなければやせるという極端な行動に陥りがちです。
  • きっかけはダイエットという身近なものだけに隠された問題に周囲はもちろん患者さん自身も自覚がなく、気づけば取り返しのつかない状況が多くみられます。

遺伝は関係ありますか?

  • 無関係ではありません。根拠として拒食症になった方の家族に同じく摂食障害の傾向がみられることが多いのは事実です。
  • 家族で住まいを同じくしているという環境的要因もありますが、脳や遺伝の生物学的要因としては心配性や完璧主義・こだわりの強さ・衝動性など拒食症になりやすい気質はセロトニン系とよばれる脳の機能異常によるものではないかと考えられています。
  • いわゆる家族で性格や性質が似るということは珍しくないため、この点で拒食症が遺伝に関係あるという理由になります。

拒食症の治療方法

子供の手を握る人

精神的な問題が原因の場合はどう治療しますか?

  • まずは外来のカウンセリングのみで食行動の改善や心理的要因の克服を図ります。入院措置は重篤な栄養失調状態により身体がやせ衰え、無月経や電解質異常・肝機能障害などを併発している場合です。薬物療法は適切な栄養補給と月経の再開を促すホルモン剤やカリウム剤に不足した栄養素を補うビタミン剤、必要に応じ抗うつ剤の投薬が代表的です。そして心理的療法としてメンタルのケアなど身体と心の両面へアプローチする治療をおこないます。
  • 拒食症の多くは強いストレスや自己肯定感の低さ、学校や職場・家族間の対人関係の悩みやトラブルなどが背景にあります。そこから抑うつ状態や強迫神経症・自傷行為など心の病を合併するケースがあり、改善には抗うつ剤や精神安定剤を用いた薬物療法が必要です。
  • ただし薬物療法だけでは問題は解決しないためカウンセリングや認知行動療法などと組み合わせるのが一般的です。

治療する前の注意点を教えてください。

  • 拒食症とはわがままから起こるものではありません。
  • 一番辛い思いをしているのは自分の意思で食行動をコントロールできない患者本人のため、何はさておき身近な人間が拒食症への正しい知識を得て注意深く見守っていきましょう。
  • そして適切なサポートをしつつ手遅れにならないうちに専門の機関への受診を促すことが重要です。

患者の周りの人が気をつけるべきことはありますか?

  • 拒食症から下剤・睡眠薬の過剰摂取や自殺念慮を抱くようになる場合もあるため注意が必要です。
  • 実際拒食症など摂食障害をもつ患者の死亡率は一般に比べ十数倍、自殺率は約二百倍に跳ね上がります。
  • このような悲劇を招かないようまずは家族や友人など周りの人が拒食症に対する理解を深め、患者本人をきちんとサポートすることが肝心です。

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

  • メディアやSNSなどでは有名人ばかりか一般の方までモデルのような女性が登場し、やせていることがもてはやされています。若い女性はそれらの影響に感化されやすく、拒食症に陥った原因はちょっとしたダイエットというケースがほとんどです。
  • またそのような方は人間関係のトラブルや自尊心の低さを抱えている背景があります。やせることで得た成功体験が忘れられず、異常な食行動を続けると今度は過食に走る傾向があります。このような食への罪悪感からまた拒食のループにはまって心身ともに衰弱しきってからでは手遅れです。
  • 食事がうまくとれないことに加えメンタル面での不調があるならまずは心療内科を受診してみることをおすすめします。

編集部まとめ

健康的な女性
拒食症とは「太りたくない」という恐れからくる深刻な摂食障害のことです。

しかし背景には単にやせてスタイルを保ちたいという願望だけでなく、自身のボディーイメージに対する認知の歪みに加えて学校・職場・家庭でのトラブルなどさまざまな要因がからみあって起こります。

また食べることへの罪悪感からかえって盗み食いや過食を引きおこし、深刻な心の病も併発するケースも多いため治療には食行動の改善だけでなく、身体面・精神面でのケアが必要です。

それには同居者や身近な人間の拒食症に対する正しい理解や協力が何より重要なため、まずはご家族と内科や心療内科などの専門医に相談してみましょう。

この記事の監修医師