【闘病記】生後4日目で手術の事態。愛娘のファロー四徴症(しちょうしょう)を見守り続けて
まみさん(仮称)は、出産したばかりの愛娘のほたるさんが「極型ファロー四徴症(しちょうしょう)」と診断され、生後4日で1回目の手術を受けさせることになりました。現在娘さんは5歳になり、根治手術となる4回目の手術を控えているといいます(手術の回数は体格や病状によって異なります)。「まさかここまで重症で、長い闘病生活になるとは」。まだ幼い娘に変わって、母親のまみさんに、闘病生活についての話を聞きました。
※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2021年9月取材。
話者プロフィール:
まみさん(仮称・闘病者の母)
神奈川県在住、2016年に闘病者・ほたるさん(長女)を出産。父、ほたるさん、次女との4人暮らし。ほたるさんが産まれてすぐに「極型ファロー四徴症」の診断を受ける。すでに5歳半ばにして複数回の手術を経験。現在は服薬のみで、大きな制限などのない生活を送っている。
記事監修医師:
菅谷 雅人(ふかしばこどもクリニック 院長)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。
生後すぐに「極型ファロー四徴症」の診断
編集部
娘さんがファロー四徴症だとわかった経緯をお教えください。
まみさん
最初は妊娠8カ月の時、妊婦健診にて指摘を受けました。詳しい検査が可能な病院に転院し、胎児エコー専門医に診てもらいまして、「おそらくファロー四徴症だろう」と、説明を受けました。重症度は産まれてみないとわからないと言われました。逆子だったため、帝王切開にて出産したのですが、産まれてすぐ、酸素化(血液に酸素が取り込まれること)が悪いために酸素を投与し、心エコーをとったところ、「極型ファロー四徴症」との診断を受けました。
編集部
生後から現在まで、どのような治療を進めていますか。
まみさん
日を追うごとに酸素化が悪くなり、酸素投与量を増やしましたが、内科的措置ではこれ以上できることがなく、手術が必要だとの説明を受け、生後4日目で1回目の手術を受けることになりました。
編集部
その後も手術を何度か受けたとのことですが。
まみさん
生後1カ月で退院できましたが、生後4カ月のカテーテル検査で心臓にかなり負荷があったため、そのまま入院し1週間後に2度目の手術を受けました。ファロー四徴症に追加して、「右肺動脈低形成」「大動脈弁狭窄」「単一冠動脈」であることもわかりました。術後16日目で退院することができました。
編集部
すでに3回の手術を受けたそうですが、3度目の手術はどのようなものでしたか?
まみさん
1歳1カ月時のカテーテル治療の結果、在宅酸素療法をスタートすることになり、2歳3カ月のときに、人工血管の交換のための3回目の手術をしました。術後約1カ月で退院し、退院後は定期的な通院と、利尿剤とアスピリンを服用しています。来月、5歳1カ月で根治手術を予定しています。
服薬のみで生活に制限なし
編集部
これまでを振り返っての心境について教えてください。
まみさん
心エコーのときより病状がだいぶ悪かったので、まさかここまで重症になって、長い闘病生活になるとは思いませんでした。
編集部
具体的な治療の様子をお教えください。
まみさん
基本的には外科的治療が一番有効的で、その他カテーテルで対症療法や服薬治療、在宅酸素など、そのときの先生の判断で行ってきました。病状は、2回目の手術まではチアノーゼなども強く出ていたので、かなり気を使いましたが、2回目の手術以降は特に水分や生活に制限もなく通院と服薬で過ごせるようになっていました。
編集部
娘さんのファロー四徴症によって生活にどのような変化がありましたか?
まみさん
先天性の疾患なので、これが我が家にとっては当たり前ですが、やはり通院の頻度が高かったり手術やカテーテルの入院も多かったりしたので、そこは大変でした。在宅酸素療法の時はかなり生活が制限されました。
編集部
現在の様子や生活について教えてください。
まみさん
現在は服薬のみで、生活に制限は一切ありません。
自分事ではないからこそ医療従事者に感謝
編集部
治療中の、心の支えになったものはありましたか?
まみさん
本人がつらい治療を小さい体で一番頑張っているのに、親はただそばで見守ることに徹するだけでしたね。
編集部
医療従事者の方へのメッセージがありましたらお聞かせください。
まみさん
医療従事者の方へは尊敬と感謝しかありません。病児や病気の方の家族は、専門的なことは医療従事者の方にお任せしていました。決して誰にでもできることではない高度なことを、どんな状況でも、実行してくださる皆様には、本当に感謝に尽きます。患者本人の治療だけでなく、時には本人や家族の心にも寄り添い、サポートしていただいて、ありがたかったですね。
編集部
最後に、読者の方々に向けてのメッセージをお願いします。
まみさん
病気は明日は我が身ですし、大切な誰かが病気になる日があるかもしれません。私は自分自身の体験ではなく、大切な娘の体験を近くでずっと見守ってきて、健康であることがいかに幸せなことか、普通の日常が送れることがどれほど尊いことか感じてきました。つい日常で忘れがちですが、どうか今一度当たり前の幸せに目を向けてください。我が家の体験談が誰かのお役に立てると嬉しいです。
編集部まとめ
産んだばかりの赤ちゃんに先天性の病気があるとわかったとき、自分事ではないからこそ無力さを感じることも少なくなかったのではないかと想像します。治療以外のところでの医療従事者の親密なサポートがあったからこそ、まみさんも治療に信頼を置けたのかもしれません。あらためて関係性の大切さを教えてもらいました。