「家族が半身麻痺で装具が必要に」 購入する時の注意点を理学療法士が解説
半身麻痺の主な原因である脳卒中は、日本人の死因の第4位に入るほど罹患率の高い疾患です。家族が半身麻痺になり、介護が必要になる状況は誰にでも十分に考えられますので、万が一に備えて知識を持っておくことが大切です。そこで、半身麻痺で必要となる装具について「理学療法士」の小島さんに詳しく伺いました。
監修:
小島 雄也(理学療法士)
ユマニテク医療専門学校(現・専門学校ユマニテク医療福祉大学校)理学療法学科卒業。卒業後、三重県のリハビリ病院に就職して主に重度脳卒中患者のリハビリに携わる。愛知県のリハビリテーション病院に転職後はロボットなど先進医療機器を活用した歩行訓練を多数行い、学会発表も経験する。現在も病院で働く傍らトレーナーとしてダイエットサービスを提供している。
目次 -INDEX-
半身麻痺に必要な装具とは?
編集部
まず、装具とはどんなものなのでしょうか?
小島さん
装具は半身麻痺などで、不自由になった身体の機能を補ってくれる道具です。流通しているものの多くは膝から下に装着、または手や肘、肩に装着するタイプになります。身近なところだと腰に巻くコルセットや膝サポーターに金属が入ったものなども装具になります。
編集部
どのような時に必要になるものなのでしょうか?
小島さん
脳卒中などの後遺症で手足に麻痺の症状がみられ、歩行や手の動きが不自由になったときなどに使用する道具になります。
編集部
半身麻痺の場合は、必ず必要となるものなのでしょうか?
小島さん
麻痺の状態を考慮して、医師や理学療法士と相談のうえ装着するかが決まりますので、軽度の麻痺では装着の必要がない場合もあります。また、最近のものは形状・機能ともに進歩していて、衣服で隠れていると外からは装着していることが分からないものも多いようです。
装具の効果
編集部
装具には、どのような効果があるのでしょうか?
小島さん
歩行用の装具を装着することで、麻痺した足を動かしやすくなったり、体重を支えやすくなったりします。代表的なものは膝から下に装着するタイプになり、麻痺で脱力した足首を固定することで足を振り出す力を改善し、安定して歩けるようになります。また、麻痺すると自分の意図とは関係なく勝手に手足が曲がってしまうことがありますが、そんなときに抑止してくれるのも装具の役割です。
編集部
装具は長期的に使用するものなのでしょうか?
小島さん
使用期間は、回復具合によって変わってきます。比較的軽度の麻痺で入院中のリハビリの時だけ使用する方や、歩行障害が中等度~重度で一生涯に渡り使用する方まで様々です。ある程度の障害があっても、日常生活で大きな影響がないようであれば、装具なしで生活することも可能です。
編集部
装具を使用することでのデメリットもあれば教えて下さい。
小島さん
夏場の使用時に蒸れることがあります。ただ、その際は装具に空気穴を開けるなどのカスタマイズが可能なのでご安心下さい。また、常に装着していると血行が悪くなることもあるので、外す時間を作ることも必要です。
装具の選び方について
編集部
装具は既製品のものだけでしょうか?
小島さん
足首に装着する小型タイプのものは既製品もありますが、膝下から装着するものは個人により形状が全く違うのでオーダーメイドになることが多いようです。
編集部
装具の費用はどのくらいかかりますか?
小島さん
プラスチックタイプの装具であれば4~5万円ほどです。金属製の高価なもので12万円前後です。医療保険適用なので負担額に応じて1~3割の負担となります。装具は種類・機能のバリエーションがかなり多いので、詳細は理学療法士や義肢装具士に相談することをお勧めします。
編集部
装具を作ってもらう場合に気をつけることを教えて下さい 。
小島さん
装着感、歩きやすさなどの詳細を義肢装具士や理学療法士に伝えることが大切です。その意見により装具を微調整していきます。例えば、軽いほうが良い、頑丈さを重視したい、服を着たときに目立たないなどの希望を伝えることで総合的に判断してもらえると思います。
編集部
最後に、読者へメッセージがあればお願いします。
小島さん
装具は身近な存在ではないかもしれませんが、半身麻痺などの後遺症がある方にとっては歩行を補助してくれる自分の足のような大切なものです。装具がないと全く歩けない方も多数いらっしゃいます。少しでもそういった装具についての知識を深めてもらうことで、ご家族・ご自身が必要になった際に役立てていただければ幸いです。
編集部まとめ
装具が必要になるケースや購入する時の注意点を理解することができました。高価なものでも自分に合っていなければ着けなくなってしまいますので、使用感や装着感を率直に伝えてご自身に合ったものを選び、製作しましょう。