大腸ポリープの切除は日帰りで受けられる。手術の流れはどうなっているの?
大腸ポリープには腫瘍性のものとそうでないものとがあり、腫瘍性の「腺腫」と呼ばれるものは、がんになってしまう恐れがあります。このようなポリープは、大腸内視鏡検査を受けた際に日帰りで切除することができます。そこで、大腸ポリープについてや内視鏡での日帰り手術の流れ、注意点などについておうえケアとわクリニックの麻植一孝先生に話を聞きました。
監修医師:
麻植 一孝(おうえケアとわクリニック 院長)
福岡大学医学部卒業。卒業後は東京慈恵会医科大学附属病院救急部に所属。風邪や捻挫などの一般的な治療から重症感染症、重症外傷の集中治療まで幅広い救急医療に約10年に渡り携わる。おうえケアとわクリニック開院後も一般的な内科疾患から外科疾患、整形外科疾患、小児医療、高齢者医療と多岐にわたる分野で治療にあたる。
大腸ポリープとは
編集部
そもそも大腸ポリープとはなんですか?
麻植先生
大腸ポリープとは、大腸の表面(粘膜層)の一部がイボのように隆起したものを指します。腫瘍性のものとそうでないもの(非腫瘍性)とに分けられ、さらに腫瘍性のものは悪性(がん)と良性(腺腫)、非腫瘍性のものは炎症性、過形成性、過誤腫性、その他に分類されます。
編集部
大腸ポリープは、放置したらがんになってしまうのでしょうか?
麻植先生
大腸ポリープのうち、がんになってしまう可能性があるものは良性の腺腫です。腺腫が悪性化してがんになる場合と、腺腫の状態を経ずに一気にがんになる場合もあります。
編集部
ポリープができるとどんな症状がみられるのでしょうか?
麻植先生
自覚症状を伴う場合としては、肛門周囲にポリープができると血便や黒っぽい便が出ることがあります。また、かなりまれな例として肛門周囲に大きなポリープができると、腸管を塞いで腸閉塞を起こしたり、肛門からポリープが出てしまったりすることもあります。
編集部
どうしたら大腸ポリープがあることに気付けますか?
麻植先生
大腸ポリープは無症状であることも多いため、定期的に検診を受けることが重要です。大腸がんは遺伝による影響も強いことから、家族内に大腸ポリープや大腸がんを発症した方がいる場合には早めに検診を受けた方が良いでしょう。そうでない場合でも、30歳くらいから5年に一回は検診を受けるようにしてください。
大腸ポリープの治療法「基本は内視鏡による切除」
編集部
では、健診で大腸ポリープが見つかった場合、その後の検査などはどういう流れを踏むのでしょうか?
麻植先生
大腸ポリープが見つかった場合、「色素内視鏡検査」という検査を行い、非腫瘍性であるのか腺腫なのかを診断します。それによって治療の必要があると診断された場合には、さらに病理組織検査を行い、良性か悪性かを調べます。
編集部
治療が必要と診断された場合には、どんな治療が行われるのですか?
麻植先生
基本的には内視鏡による切除を行います。これは、腺腫のうちに切除することで大腸がんを予防することができるためです。ポリープが大きい場合など、手術が必要な場合には外科手術で切除することもあります。
編集部
内視鏡による治療にはどんな術式があるのですか?
麻植先生
内視鏡による大腸ポリープの治療法はいくつかありますが、代表的なものに「ポリペクトミー」「EMR」「ESD」と呼ばれる術式があり、ポリープの形状や大きさなどによって選択します。ポリペクトミーは、茎のあるポリープの場合に適応となる治療法です。ポリープの根本に金属の輪をかけ、高周波の電流を流して切除します。EMRは、平らな形状のポリープの場合に選択されることがあります。ポリープの粘膜下に薬液を注入し、ポリープを持ち上げて切除する方法です。大きなポリープや、EMRでポリープ部分を持ち上げられない場合などは、ESDを選択することがあります。粘膜下に薬液を注入し、周辺の組織を電気メスで切開し、ポリープ部分を少しずつ剥がしていく治療法です。
日帰り手術の流れや術後について
編集部
ポリープを切除する場合には、入院は必要ですか?
麻植先生
大腸カメラでの検査中にポリープが発見された場合、その場で切除する日帰り手術が可能です。大腸内視鏡検査では、検査中にポリープが発見された場合を想定して、検査前にポリープ切除の意向を確認させていただいています。その際にポリープ切除への同意が得られている場合には、検査時にポリープがあった場合、同時に切除を行います。また、患者さんの要望に応じて、検査と別の日にポリープの切除を行ったり、ポリープの個数が多い場合には、数回に分けて切除したりすることもあります。
編集部
日帰り手術の流れについて教えてください。
麻植先生
検査前に一度受診していただき、採血や心電図などの検査を行います。加えて、検査前日の食事についてや、検査当日に使用する鎮静剤や下剤の説明などを行います。検査当日は、下剤を内服して便を出していただきます。その後、点滴で麻酔薬を投与して検査を始めます。ポリープの数などにもよりますが、検査自体は30分〜1時間程度で終了です。検査終了後は鎮静剤が切れるまで院内で休んでいただき、検査時の画像を見ながら切除したポリープの数や検査結果などの説明をし、お帰りいただきます。検査後は1週間程度で検査結果の詳細が出ますので、再度来院していただき、ポリープの性状などについて説明を行います。
編集部
切除後は通常通りの生活が可能なのですか?
麻植先生
ポリープの切除後は術後出血などのリスクがあるため、数日間は安静にしていただく必要があります。
編集部
術後の注意点について教えてください。
麻植先生
検査後は鎮静薬や麻酔が残っていることも考えられるため、車やバイクの運転は控え、公共交通機関や家族の送迎などで帰宅してください。また、先述したように出血のリスクがあるため、運動や長時間の入浴など血流を促進するようなことは控えてください。また、デスクワークなどのお仕事であれば問題ありませんが、体をよく動かすようなお仕事の場合は休暇を取るなどして対応してください。
編集部
ほかにもありましたら、聞いておきたいです。
麻植先生
ポリープを切除した際に出血予防としてクリップを装着する処置(クリッピング)をすることがあります。クリップはごく小さく、傷口が治る頃に自然と外れて便と一緒に排泄されます。クリッピングを受けた場合には、暴飲暴食をすることでクリップが早期に外れてしまう恐れがあるため、飲食の際は注意してください。
編集部
ありがとうございました。最後に読者の皆様へメッセージをお願いします。
麻植先生
たかがポリープと思っていても、中には大腸がんになってしまうものもあります。大腸がんは若年層で発症することがあり、放置してしまうと進行して重篤な状態になってしまう恐れもあります。そのため、早期発見と予防が大切です。特に家族内に大腸がんを発症した方がいる場合には、遺伝によってご自身も発症する可能性があるため、何らかの兆候がなくても定期的に大腸内視鏡検査、がん検診を受けるようにしてください。また、そうでない場合でも30歳を過ぎたら定期的に大腸がん検診を受けるようにしましょう。
編集部まとめ
ポリープには良性のものもありますが、良性でも大腸がんになってしまうものがあります。進行すると大腸の一部を切除しなければならなくなったり、人工肛門が必要になったりするほか、命に関わることもあります。定期的な検診を受け、早期発見に努めましょう。
医院情報
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