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アレルギー性鼻炎の症状・治療・対策を解説、上手に付き合うためには

 更新日:2023/03/27

日本でも患者数の多い「アレルギー性鼻炎」。症状がひどくなると、市販の薬に頼るという人も多いのではないでしょうか。「完治するのは難しい」と言われることも多いアレルギー性鼻炎ですが、上手に付き合うにはどうすればいいのでしょうか。今回は「山本耳鼻咽喉科」の山本先生に教えていただきました。

山本 一博医師

監修医師
山本 一博(山本耳鼻咽喉科 院長)

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北里大学医学部卒業。その後、北里大学病院、横須賀市立市民病院、国立病院機構相模原病院などで勤務医として経験を積む。2008年、東京都町田市に「山本耳鼻咽喉科」を開院。北里大学病院、町田市民病院など近隣の医療機関と連携をはかりながら、小さい子どもからお年寄りまで、安心して受診できる環境づくりを心がけている。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会専門医。日本鼻科学会、日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会、耳鼻咽喉科臨床学会の各会員。

アレルギー性鼻炎とは?

アレルギー性鼻炎とは?

編集部編集部

まず、アレルギー性鼻炎について教えてください。

山本 一博医師山本先生

文字通り、体のアレルギー反応が原因で起こる鼻炎のことです。人間には、体内に異物が侵入したとき、それを排除しようとする免疫システムが備わっているのですが、鼻の粘膜に異物が付着したときに免疫システムが作動して排除しようとします。

編集部編集部

アレルギー性鼻炎の場合は、その免疫システムが過剰に反応してしまうということですか?

山本 一博医師山本先生

そのとおりです。鼻の中に侵入した物質を体が「異物」と認識すると、その異物から体を守ろうとして、鼻の粘膜に抗体が作られます。抗体とは特定の異物が体内に侵入してきたとき、結合することで体内から除去しようとする、いわば免疫システムの核となるものです。なお、抗体が結合する異物のことを「抗原」と言います。

編集部編集部

抗体が作られることは、体を異物から守るということなので、いいことなのでは?

山本 一博医師山本先生

たしかに、免疫システムが健全に働いている限りは、体を病気から守るのに役立ちます。しかし、アレルギー性鼻炎の場合は、これらの反応が過剰に起こったり、本来体にとって有害でないものまで異物と認識してしまったりします。その結果、抗原が体内に侵入すると抗体と結合して「抗原抗体反応」を引き起こしてしまいます。抗原抗体反応とは、いわゆるアレルギー反応のことで、くしゃみや鼻水などの症状が出ます。

アレルギー性鼻炎の原因は?

アレルギー性鼻炎の原因は?

編集部編集部

どういった物質を異物として認識してしまうのですか?

山本 一博医師山本先生

よくあるのは、ハウスダストやダニ、花粉、カビなどです。とくに患者さんが多いのは花粉症で、花粉の中でもスギやヒノキ、イネ科の植物の花粉は、アレルギー性鼻炎を引き起こしやすいとされています。

編集部編集部

そもそも、なぜ免疫システムの過剰反応が起きるのですか?

山本 一博医師山本先生

遺伝的な問題もありますが、疲労やストレス、偏った食生活、不規則な生活なども原因となり得ます。とくに現代人は大気汚染の影響を受けたり、日常的に化学物質に多く触れていたりするため、近年はアレルギー性鼻炎の患者数が増加傾向にあります。

編集部編集部

アレルギー性鼻炎になると、どのような症状がみられますか?

山本 一博医師山本先生

鼻や喉、目、耳、頭、皮膚など全身に現れます。鼻に現れる症状として多いのは、「透明でサラサラした鼻水が止まらない」「くしゃみが立て続けに出る」「鼻が詰まって苦しい」などです。喉に現れる症状としては「喉がかゆい」「イガイガする」などが目立ちます。そのほかにも、皮膚がかゆくなったり、頭痛がしたり、集中力がなくなったりと、様々な症状が現れます。

編集部編集部

全身に症状が現れるのですね。

山本 一博医師山本先生

そうです。そして、それが風邪と見分けるポイントになります。とくにスギ花粉が飛散する時期は、風邪やインフルエンザが流行する時期と重なっています。そのため、「花粉症と思ったらインフルエンザだった」ということも散見されます。

編集部編集部

アレルギー性鼻炎と風邪やインフルエンザを見分ける方法はありますか?

山本 一博医師山本先生

風邪やインフルエンザであれば発熱もありますし、1週間程度で症状がおさまります。一方で花粉症の場合は、熱が出ることはほとんどなく、症状が長く続きます。また、風邪の場合は途中から鼻水の色が濁ってきますが、アレルギー性鼻炎の場合は透明の鼻水が続きます。

アレルギー性鼻炎の治療は多彩

アレルギー性鼻炎の治療は多彩

編集部編集部

アレルギー性鼻炎は、どのように治療するのですか?

山本 一博医師山本先生

重症度によって効果に差はありますが、内服薬や点鼻薬で鼻水や鼻詰まりなどの症状を改善したり、鼻の炎症を鎮めたりするのが一般的です。それ以外に当院では、「下甲介化学剤手術」や「舌下免疫療法」という治療もおこなっています。下甲介化学剤手術は、トリクロール酢酸という薬品を鼻の粘膜に塗布する治療です。スプレーとガーゼで鼻の粘膜を麻酔して、綿棒で処置します。

編集部編集部

舌下免疫療法についてもお願いします。

山本 一博医師山本先生

舌下免疫療法は、アレルギー反応の原因となる物質を舌下錠によって投与し、体のアレルギー反応を弱めるという治療法です。ダニとスギ花粉を対象におこなわれます。

編集部編集部

下甲介化学剤手術と舌下免疫療法の違いについても知りたいです。

山本 一博医師山本先生

舌下免疫療法の場合は根治療法で、アレルギー体質を変えることを目指す治療ですが、長期間にわたって自宅で薬剤を投与する必要があります。もう一方の下甲介化学剤手術は、「花粉が飛散し始める前」などにおこなわなければならない治療ですが、一度処置すれば一定期間効果が持続するので手軽です。また、舌下免疫療法はダニとスギ花粉に対してのみ有効ですが、下甲介化学剤手術は様々な抗原に効き目があります。ご自身のライフスタイルや症状に応じて選ぶことをおすすめします。

編集部編集部

治療以外に、自分でできる症状を和らげる方法はありますか?

山本 一博医師山本先生

人の体液に近い成分である生理食塩水を利用して、鼻の中に入り込んだ花粉やホコリなどを洗い流すのがおすすめです。そのほか、花粉に対してアレルギーがある人は、マスクやメガネで粘膜を防御するのが効果的です。

編集部編集部

生活習慣で気をつけることはありますか?

山本 一博医師山本先生

アレルギーの症状を緩和させるためには、うがいや手洗いをしたり、部屋をこまめに掃除したりすることが大切です。とくに、抗原を徹底的に回避することが予防になるので、カーペットをフローリングに変えたり、布団やソファカバーを防ダニ加工が施されたものにしたりするといった工夫だけでも、症状が改善される可能性があります。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

山本 一博医師山本先生

アレルギー性鼻炎の治療には、舌下免疫療法や下甲介化学剤手術、内服薬など様々な選択肢があります。現在はドラッグストアでも鼻炎薬が販売されていますが、効果をしっかり発揮させたいなら、医療機関で診断してもらうことが大切です。内服薬には相性がありますし、眠気などの副作用を伴うものもあります。そのため、気になる症状やライフスタイルを医師に伝えて、自分に合った薬を選択してもらうことを推奨します。薬によっては、症状に応じて使用量を適宜増減できるものもありますし、服用するタイミングによって効果に違いが出るものもあります。医療機関では、そういったアドバイスもしているので、アレルギー性鼻炎にお悩みの人は、ぜひ耳鼻科を受診してみてくださいね。

編集部まとめ

アレルギー性鼻炎を完治させることは難しいかもしれませんが、様々な治療法や工夫によって症状を抑えることは可能とのことでした。花粉やダニ、カビなど様々なものが抗原となるため、自分がどんな物質に対してアレルギー反応を示すのか、まずは医療機関で調べてもらい、それに合わせた対策を考えるといいかもしれませんね。

医院情報

山本耳鼻咽喉科

山本耳鼻咽喉科
所在地 〒194-0013 東京都町田市原町田5-5-5 1階
アクセス JR・小田急線「町田駅」 徒歩7分
診療科目 耳鼻咽喉科

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