皮膚科医に聞く! 老人性色素斑と肝斑が混在している場合のシミはどうやったら消える?
老人性色素斑と肝斑の治療を同時に進行することはできるのでしょうか。老人性色素斑用のレーザーは、むしろ肝斑に逆効果という説も見かけます。だとしたら、片方の治療がもう片方の症状を広げてしまいそうです。両者に対して、スムーズで確実な進め方はないのか、「目黒駅前アキクリニック」の秋山先生を取材しました。
監修医師:
秋山 俊洋(目黒駅前アキクリニック 院長)
旭川医科大学医学部医学科卒業。順天堂大学医学部大学院医学研究科修了。順天堂大学関連の医療機関を中心に、皮膚科診療の経験を積む。2016年、東京都品川区に「目黒駅前アキクリニック」を開院。自分自身がニキビやアトピー性皮膚炎で悩んでいた思いを診療に反映させている。医学博士。日本皮膚科学会専門医。日本美容皮膚科学会、日本抗加齢美容医療学会、日本抗加齢医学会、日本医学脱毛学会の各会員。
老人性色素斑と肝斑の治療の進め方
編集部
老人性色素斑と肝斑は、同時にレーザーなどで治療できるのでしょうか?
秋山先生
はい、できます。老人性色素斑と肝斑が混在している場合、まずは肝斑用のレーザートーニングで治療を開始します。なお、肝斑が取れてくると同時に、老人性色素斑もある程度は改善していると思います。ですが、この段階で今度は、老人性色素斑用のレーザー設定に切り替えて治療をおこないます。
編集部
「レーザートーニング」とは、どんなレーザーなのでしょうか?
秋山先生
レーザートーニングの特徴は、出力が微弱で、比較的広範囲をムラなく照射できることです。以前はこのような技術がなかったため、「肝斑にレーザーは禁忌」とされていました。以前よりある一般的なレーザーだと、照射面の中央が強くて周辺部は弱い「山」のような“エネルギーに差のある”当て方になってしまいます。他方のレーザートーニングは、「平坦な丘」のような当て方が可能です。肝斑治療では「強すぎず、弱すぎない最適な出力」で全体を照射することが必要ですので、肌状態を診察したうえで出力を決め、レーザートーニングを照射していきます。
編集部
肝斑にはIPL光治療が向いているという話も聞きます。
秋山先生
IPLの中には肝斑用モードを搭載している機種もありますので、肌状態を見極めながらIPLで治療することは可能です。しかしながら、肝斑に対する有効性は、IPLよりも肝斑用レーザートーニングの方が優れている印象ですね。
編集部
つまり、治療機器の適切な使い分けが問われるわけですか?
秋山先生
そうですね。ところが、使い分けをしているクリニックは少ないのが現状です。皮膚科専門医や肌診断のしっかりできる医師でないと、レーザーの使い分けができません。また、決められた標準手順のとおりに治療するクリニックがほとんどなので、一人ひとりの肌状態に合わせず、一律に照射するところが多いと思われます。なお当院では毎回、医師が肌状態を確認して、レーザーの出力を設定しています。
編集部
そして、肝斑の治療を終えてから、老人性色素斑の治療に進むわけですね?
秋山先生
必ずしもそうとは限りません。肝斑よりも老人性色素斑が肌に多く見られる場合、最初にIPLで老人性色素斑をターゲットに治療することもありますよ。治療効果が目に見えて早く実感できると思います。なお、「面照射」のイメージが強いIPLでも、機種によっては、3mm直径のスポットで照射できます。点状に存在する老人性色素斑ですが、IPLの設定を変えることで、スポットで治療をおこなうことができるのです。ただし、スポット照射ができるモードを搭載していなかったり、一人ひとりの肌状態に応じた照射をおこなわなかったりすると、治療効果は落ちてしまいます。
機器や薬の「使い分け」と「使い方」がカギ
編集部
内服薬や外用薬による治療でも、「使い分け」や「使い方」が問われそうです。
秋山先生
そうですね。内服薬や外用薬が必須とは限りませんが、レーザーや光治療と併用することで、機器による治療効果を高めることができます。とくに老人性色素斑と肝斑の混在ケースでは、内服治療が有効で、レーザートーニングの治療を効果的に進めることができます。また、内服薬のほかにも、美白肝斑注射や医師が監修しているドクターズコスメ、ピーリングなどがあり、やはり「使い分け」と「使い方」によって効果が変わってくるでしょう。
編集部
患者側のセルフケアも、治療の効果に関係してきますよね?
秋山先生
はい。治療中は、紫外線対策や肌に負担をかけないスキンケアが大切です。例えば、「冬だからと日焼け止めを使わない」、「コットンでこするように化粧水をつける」、「メイク落としシートの使用で肌に摩擦を与えてしまう」などは、いずれも治療中のシミや肝斑を悪化させかねません。こうしたセルフケアの際のリスクを十分に理解していただくことが大切です。
編集部
老人性色素斑と肝斑が混在しているケースでは、どれくらい治療期間がかかりますか?
秋山先生
まずは老人性色素斑をターゲットとしたIPLを3~4週ごとに2~3回、肝斑をターゲットとしたレーザートーニングを2週に1回の頻度で計10回、肝斑が改善したところでIPLを再び、3~4週ごとに2~3回おこないます。この進め方が高い治療効果につながり、患者さんとしても早い段階から実感できると思います。
いかに個人差を拾い、反映させるか
編集部
治療の効き目には、個人差があると聞いたことがあります。
秋山先生
たしかに、治療効果は個人の感じ方の違いで評価も大きく異なります。同じ施術例をお見せして、「こんなに良くなるの?」と感じる人もいれば、「この程度なの?」と感じる人もいらっしゃいます。ですから、当院では事前に施術例をお見せして「何回目でどういった効果が期待できるのか」をご自身の目で確認していただいています。
編集部
加えて、肌質や地肌の色にも個人差がありますよね?
秋山先生
はい。肌にはそれぞれ遺伝的なスキンタイプがあります。同じように紫外線を浴びても、光老化・シミのできにくい人がいらっしゃいます。同様に、レーザーに反応しやすい人、しにくい人もいらっしゃいます。また、治療期間中のセルフケアや紫外線ケアの仕方でも結果が異なることがあるのは、前述のとおりです。したがって、なおのこと“毎回の肌診察”による確認が必要になってきます。
編集部
先生が治療を受けるとしたら、何を「クリニック選び」の基準にしますか?
秋山先生
「医師の誠実さ」と「医師が毎回の肌診察をしているかどうか」です。医師の資格のないカウンセラーやトリートメントコーディネーターが治療計画を立てるべきではないと考えています。実際の治療には、医学的な側面に加えて、患者さんのライフスタイルなども重要視します。「多少刺激があっても早く結果を出したい」、「人前に出るお仕事などでマイルドな治療を希望したい」など、一人ひとりのライフスタイルや状況によって、治療の方向性は大きく変わってくるからです。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
秋山先生
担当医が患者さんの立場になって、「もし自分だったら」とういう視点でご提案することは大切だと思っています。そのため、肌診察と個別治療の必要性を今回伝えさせていただきました。色々と話を聞いてきて、複数の治療計画を提示するクリニックがあるとしても、煩わしく感じないでほしいです。それは、医師が最善手と高い満足度を追求しようとしている証拠なのかもしれません。
編集部まとめ
老人性色素斑と肝斑の同時治療は可能とのことでした。ただし、その前提となる機器や薬などの「使い分け」と「使い方」が適切にできているクリニックは少ないそうです。クリニックの見極め方としては、「毎回の肌診察や問診を、“皮膚科専門医”が丁寧におこなっているかどうか」です。肌の治療を検討している人は、ぜひ覚えておいてくださいね。
医院情報
所在地 | 〒141-0021 東京都品川区上大崎2-27-3 目黒駅前山田ビル5・6階 |
アクセス | JR「目黒駅」 徒歩1分 |
診療科目 | 皮膚科、小児皮膚科、美容皮膚科、形成外科 |