薬の種類って飲む、塗る、注射などあるけど、何が違うの?
薬の種類は体に入る経路によって大まかに分類されます。口から飲む「内服薬」、皮膚から有効成分が浸透する「外用薬」、直接血管や組織などから入れる「注射薬」の3種類です。このように、薬にはいろいろな種類がありますが、その理由の一つは薬の効果が発揮しやすいように工夫されているためです。今回は、それぞれの特徴について「薬剤師」の小田桐さんに解説していただきました。
監修:
小田桐 功武(薬剤師)
大学卒業後、都内の病院に薬剤師として就職。病棟や腫瘍センターなどを経験し「がん専門薬剤師」を取得。また、予防医療に関する正しい知見の収集・啓発・行動を推進している。
口から飲む「内服薬」
編集部
「内服薬」は薬の一般的なイメージですが、どういった特徴の薬なのでしょうか?
小田桐さん
「内服薬」は口から服用し、消化管を経由するという特徴があります。胃に到達した薬は、そこで溶けて体内に取り込まれやすい形状に変わります。その後、小腸で吸収され血管に入り、血液の流れに乗って効果を発揮します。また、血管に入った後に肝臓を経由して、そこで形状を変えることで効果を発揮する薬もあります。そして役目を終えた後は、肝臓や腎臓を経由して、尿などで体外に排泄されます。
編集部
「内服薬」の中には錠剤やカプセル剤などがありますが、それぞれの違いはなんですか?
小田桐さん
「内服薬」の種類としては、錠剤、カプセル剤、散剤(粉薬・細粒剤)、液剤などがあります。錠剤やカプセル剤の中には、味や匂いのせいで飲みにくい薬を飲みやすくする工夫がされていたり、体内での吸収過程をコントロールしていたりと、さまざまな工夫がされています。
編集部
飲むときの注意点などはありますか?
小田桐さん
かみ砕いたり、カプセルの中から出したりすることは避けてください。せっかくの工夫が台無しになってしまいます。そのままの形状で、たっぷりの水で飲むようにして下さい。一方で、薬の中にはかみ砕く必要がある薬や、舌の下で溶かしながら飲む薬などもあります。必ず、医師、薬剤師の指示に従うようにしてください。
皮膚から有効成分が浸透する「外用薬」
編集部
では、「外用薬」とはどういった薬ですか?
小田桐さん
「内服薬」や「注射薬」以外の薬は「外用薬」と呼ばれます。塗り薬や貼り薬が一般的にイメージしやすいと思いますが、それらは皮膚から薬の成分を吸収しています。
編集部
皮膚から薬を吸収するというのが不思議です。「外用薬」ってどのように効くのですか?
小田桐さん
皮膚から吸収された「外用薬」は、体循環に移行することで全身に作用します。一部、点眼薬やうがい薬などのように、体循環に移行せず局所的に作用する薬もあります。このように、用途や使い方はさまざまなので使用部位をきちんと確認して定められた使い方を守るようにしてください。
編集部
「外用薬」の種類について教えてください。
小田桐さん
塗り薬、貼り薬、点眼薬(目薬)、うがい薬、点鼻薬、吸入薬、坐薬などがあげられます。いずれも、内服薬とは異なり消化管を通ることなく身体に作用します。
直接血管や組織などから入れる「注射薬」
編集部
「注射薬」はどういった薬ですか?
小田桐さん
注射針を皮膚に刺し、体内に直接送り込む薬を「注射薬」と言います。原則的に「注射薬」は、医師または医師の管理下で看護師のみが投与可能ですが、糖尿病に対するインスリン製剤の自己注射のように例外もあります。
編集部
「注射薬」にも種類があるのですか?
小田桐さん
皮内注射、皮下注射、筋肉注射、静脈注射などに分けられます。
編集部
「注射薬」の特徴はなんですか?
小田桐さん
特に、静脈注射の場合は血管に直接薬を送り込むので、即効性があり効果も非常に高くでます。緊急時などには、非常に有効な投与手段になります。また、ほかのタイプの注射でも「内服薬」や「外用薬」よりは、速く確実に血液中に薬の成分を送ることができます。
編集部
最後に、読者へメッセージがあれば。
小田桐さん
薬にはいろいろな投与経路があり、それぞれに特徴があります。同じ成分でも、形状が違うものもあります。医師や薬剤師は、それぞれの特徴を考慮して投与指示を行っています。気になった時には、ぜひ質問をしてみてください。
編集部まとめ
薬の種類をタイプ別に理解することができました。投与の仕方によって、効き目が変わってくることには驚きです。また、飲み薬一つとっても、飲みにくい薬に対して工夫がされていることが分かりました。薬の使用前に不安があるようでしたら、医師、薬剤師に相談してみましょう。