【薬剤師監修】錠剤・粉薬・液状の薬…種類によって薬の形が異なるのはなぜ?
薬局やドラッグストアに行くと、錠剤や粉薬、液状の薬などさまざまな形状のものがあり、どれを選んだらよいか分からないという方もいらっしゃるのではないでしょうか? そこで今回は、自分に合った薬の形状の選び方について薬剤師の髙橋さんに解説していただきました。
監修薬剤師:
髙橋 彩夏(薬剤師)
薬にはさまざまな形状があるのはなぜ?
編集部
薬には錠剤や粉タイプのものなど、さまざまな形状があるのはなぜですか?
髙橋さん
有効成分ごとに、薬の効果が最も効率よく発揮できるように形成されているからです。薬の形を変えることで、体内で溶けるスピードや溶ける部位を変えられます。また、飲みやすさを重視した形状のものもありますよ。
編集部
飲みやすさを重視とはどういうことでしょうか?
髙橋さん
錠剤を例にすると、OD錠(口腔内崩壊錠)は口の中に入れたら唾液で溶けるようになっているので、水なしで飲めます。手元に水がない時や、薬を飲み込むのが苦手な人やお年寄りなどにおすすめです。糖衣錠は、そのままだと苦みや匂いが気になり飲みにくい有効成分に用いられることが多いですね。ほかにも、口の中や胃では溶けず、腸に運ばれてから溶け出す腸溶錠などもありますよ。
編集部
形状を変えることでのメリットは何ですか?
髙橋さん
- 苦みや匂いがある薬が飲みやすくなる
- 薬の効果が効率よく発揮できる
- 効果が長時間持続する
- 病気や怪我に直接作用させることで、効果を得つつも副作用を緩和できる
錠剤やカプセル剤を苦手とする子どもは、粉薬やシロップ剤だと飲みやすいです。甘い味がついたものなら、嫌がらず飲んでくれることが多いです。また、痛み止めには飲み薬もありますが、貼り薬や塗り薬なら痛みのある部位に直接作用させられるため、効果は維持しつつ、全身の副作用を緩和できます。
編集部
同じ成分でも剤形が違うと効果は違いますか?
髙橋さん
剤形が違う飲み薬でも、有効成分量が同じであれば効果に差はありません。自分に合う飲みやすい剤形を選んでくださいね。
自分に合った薬の形状の選び方
編集部
自分に合う薬の形状を選ぶコツは何ですか?
髙橋さん
飲み薬であれば大きさや匂い、味を基準にして選んでください。塗り薬や貼り薬は、使用感や大きさを意識するとよいですよ。例えば目薬だと、期待できる効果は同じでも清涼感があるものか刺激が弱いものか選べるものが多いですよね。また、症状によっても剤形を使い分けるのがおすすめです。例えば乗り物酔いで水を摂るのもつらいときは、OD錠や口の中で砕いて飲むチュアブル錠を選びましょう。
編集部
錠剤・カプセル剤と粉薬それぞれおすすめなのはどんな人ですか?
髙橋さん
口の中に粉があるのが苦手な人や苦みを感じやすい人は、錠剤やカプセル剤がおすすめです。高齢者で飲み込む力が弱っている人や、喉に薬がつまる感じがする人は、粉薬が飲みやすいでしょう。
編集部
自分に合う形状のものを選べないとき、相談に乗ってもらえますか?
髙橋さん
もちろんです。ドラッグストアや薬局の薬剤師が症状や飲みやすい形状について聞き取り、おすすめの薬を選びます。違う有効成分でも、求めている効果が一緒であれば、飲みやすい形状のものをすすめることもあります。
どうしても苦手な薬の形状がある場合、どうすればよい?
編集部
苦手な形状の薬をうまく飲むコツはありますか?
髙橋さん
- コップ一杯の水を用意する
- 口の中に1~2口程度の水を含む
- そこに薬を流し込む
- 薬を水とともに飲み込み、さらにコップの水を飲む
水の量が少ないと、薬が胃に到達せず食道につまるおそれがあります。また、水を多めに服用するのは胃の中で薬を溶けやすくするためでもあるので、効果を十分に得るためにもコップ一杯の水で飲むようにしましょう。
編集部
粉薬が苦手な人が飲みやすくする工夫はありますか?
髙橋さん
粉薬が苦手な人はオブラートや、薬を飲むためのゼリーを活用すると飲みやすくなります。ゼリーは飲む薬の錠数が多い人にもおすすめです。また、同じ有効成分で錠剤や液剤があれば、そちらに変更することも可能ですので、医師や薬剤師に相談してください。たとえば、漢方は顆粒のものだけでなく、錠剤も販売されているので、漢方の独特の匂いや味が苦手な人は錠剤だと続けやすいですよ。
編集部
大きな錠剤が飲めない場合は砕いてもよいですか?
髙橋さん
いいえ。大きな錠剤を砕いたり、カプセルから中身を取り出したりすると、苦みや匂いが強く飲みにくくなるおそれがあるのでやめましょう。また、腸で溶けるように設計された腸溶錠を砕いてしまうと、効き目が弱くなったり、副作用が出たりすることがあります。こちらも、薬の種類によってはOD錠や粉薬などの飲みやすい形状のものに変更できる可能性があるため、医師や薬剤師に相談してください。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
髙橋さん
世の中には、効果を高めたり、飲みやすくしたりするために形状が工夫された薬がたくさんあります。この記事を参考に、自分に合う形状のものを選んでください。
編集部まとめ
薬によって形状が異なるのは、薬の効果を最大限発揮したり、飲みやすくしたりするためです。独断で錠剤を砕いたり、カプセルを外したりすると、苦みや匂いが出たり、期待した効果が得られなかったりするおそれがあります。飲みにくい形状の薬があれば、遠慮なく医師や薬剤師に相談しましょう。