過多月経治療で子宮を摘出したくない人に朗報! 知っておきたい「マイクロ波子宮内膜アブレーション」という新たな選択肢
血の量が多い月経のたびに、貧血をはじめとする体調不良で悩まされる人もいるのではないでしょうか。そんな過多月経に対する新しい治療として「マイクロ波子宮内膜アブレーション(MEA)」が近年、注目を集めています。はたして、どのような治療なのでしょうか。今回は「GYNメディカルグループ」代表の村上先生に、過多月経治療の最新事情を伺いました。
監修医師:
村上 雄太(GYNメディカルグループ 代表)
東邦大学医学部卒業。東邦大学医療センター大森病院産婦人科を経た2001年4月、東京都豊島区に位置する「池袋クリニック」院長に就任。「ゆりかごから墓場まで」をモットーに患者目線の医療を提供して、女性が安心して仕事や家庭で活躍できるように心と体のケアをおこなっている。母体保護法指定医師。日本産科婦人科学会専門医、日本抗加齢医学会専門医。
過多月経とは?
編集部
そもそも、過多月経とはなんでしょうか?
村上先生
過多月経とは文字通り、月経の時の出血量が非常に多く、貧血など日常生活に支障をきたす症状のことを指します。医学的には「1回の月経での出血量が150ml以上」、「8日以上月経が続く」などの定義があります。しかし、必ずしもそれだけに限らず、出血量が多くて日常生活に影響を及ぼす場合を総じて過多月経と言います。
編集部
もう少し詳しく教えてください。
村上先生
過多月経は、「子宮の大きさや形に異常がある器質性」と「子宮に異常がない機能性」の2つに分類することができます。器質性の場合は、子宮筋腫や子宮腺筋症が原因になっていることが多いので、過多月経を治すためにはこれらの病気の治療が必要になります。
編集部
子宮筋腫や子宮腺筋症のほかにも、過多月経を起こす病気はありますか?
村上先生
子宮内膜ポリープも過多月経の原因になります。なぜ、子宮筋腫や子宮腺筋症、子宮内膜ポリープが過多月経の原因になるかというと、本来、月経は剥がれ落ちた子宮内膜が血液と一緒に排出されるからです。子宮筋腫の場合は子宮に筋腫というこぶができ、子宮腺筋症では子宮の筋肉のなかに子宮内膜に似た組織ができます。また、子宮内膜ポリープの場合は、内膜にできものが作られます。そのため、結果的に子宮内膜の表面積が大きくなり、剥がれ落ちる量も増えるのです。
編集部
もう一方の機能性の場合はいかがでしょうか?
村上先生
機能性の場合は原因不明だったり、体質的な原因に由来していたりと様々です。ただし、一般的に過多月経の原因として多いのは器質性のタイプで、子宮筋腫と子宮腺筋症、子宮内膜ポリープが原因となっているケースが大半を占めています。
過多月経の治療法について
編集部
過多月経の治療は、どのようにおこなうのですか?
村上先生
基本的には、黄体ホルモンを内服するホルモン治療や低用量ピルの使用が主流です。また、出血量が多くて貧血がつらいという場合には、造血剤を併用することもあります。その一方で、子宮筋腫や子宮内膜ポリープなどの器質的な疾患があるケースは、筋腫やポリープを切って取り除く手術をする必要があります。また、子宮腺筋症の場合は摘出が困難なため、子宮ごと摘出することになるかもしれません。
編集部
手術になると、体への負担も大きくなるのですね。
村上先生
そうです。そのため近年、手術に変わる新しい治療として「マイクロ波子宮内膜アブレーション(MEA)」という選択肢が登場しました。MEAは子宮に金属管を装着し、先端からマイクロ波を出して、子宮内膜を壊死させる治療法です。マイクロ波を子宮の内部に照射すると子宮内膜が壊死して固くなるため、子宮内膜が剥がれ落ちる量が減り、結果的に月経の出血量が減少するという仕組みです。
編集部
子宮の内部にマイクロ波をあてるのですね。
村上先生
はい。マイクロ波を照射する金属管の太さは1.5cmくらいで、子宮の空洞に6~8個の焼け跡ができます。子宮の内部全面を焼くことはできませんが、焼いたところからは出血がなくなるため、出血量を減らすという点で大きな効果を見込むことができます。
編集部
手術で切らずに済むのはいいですね。
村上先生
MEAの治療後には多くの患者さんが「月経の出血量が減少した」と述べており、それに伴う腹痛などの痛みも多くが解消されます。ぜひ、過多月経に悩む女性におすすめしたいですね。ただし、今のところ日本ではそれほどメジャーな治療法ではなく、MEAをおこなっている医療機関はわずかしかありません。今後、多くの医療機関で受けられるようになることを期待します。
マイクロ波子宮内膜アブレーション(MEA)のメリット・デメリット、注意点
編集部
MEAのメリットを教えてください。
村上先生
なにより、「子宮を摘出せず、残しておくことができる」ことが最大のメリットです。今まで、子宮を摘出する以外、治療法の選択肢がないとされていた女性でも、MEAであれば子宮を残すことができます。また、お腹を切らずに治療できるということも、MEAの特徴です。静脈麻酔を使用するため術後の痛みも少なく、当院の場合は日帰りでも手術をおこなうことができます。来院からお帰りまで4時間ほどで済むので、仕事などの支障が出にくい点でも患者さんに喜ばれています。
編集部
身体への負担も少なく、精神的にもメリットが多いのですね。
村上先生
はい。それから、出血量を減らすことで月経困難症を改善することもできます。これまでひどい月経痛や貧血などに悩まされていた女性にも、ぜひおすすめしたい治療法です。
編集部
反対に、考えられるデメリットはありますか?
村上先生
妊娠ができなくなってしまう点が最大のデメリットでしょう。子宮内膜を焼いてしまうので、もう妊娠することができなくなります。これから妊娠・出産を考えている場合は、MEAを受けることができません。そのため、基本的にMEAの適応は40歳以上で、今後、妊娠を望まない人が対象となります。
編集部
注意点はありますか?
村上先生
MEAをおこなったからといって、完全に月経をなくすことはできない点は覚えておいてください。なかには月経がなくなる人もいますが、多くの人は出血量が減っても月経は続いています。また、子宮を残すためには、定期的な検診を受ける必要がある点も知っておいてほしいです。
編集部
MEAは保険が適用されるのですか?
村上先生
はい。3割負担の場合、5万5000円ほどで治療を受けることができます。ただし、日帰りではなく入院の場合は、別途費用がかかります。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
村上先生
女性にとって子宮を摘出することは、身体面だけでなく精神的にも大きな負担となるでしょう。しかし、そこにMEAという選択肢ができたことで、子宮の摘出を回避しながら過多月経を治療することができるようになりました。もちろん、病気の状態によっては子宮を摘出しなければならない場合もありますが、MEAの登場により、多くの女性にとって明るい道筋が見えたと感じています。過多月経に悩んでいる人は、この機会にMEAという選択肢を知っておいてください。
編集部まとめ
過多月経に悩んでいる女性で、「子宮を摘出しなければならないなら治療を受けない」と考えている人も多いと思います。しかし、子宮を摘出しなくて済む治療法もあるとのことでした。子宮の摘出に抵抗がある人にとっては、朗報なのではないでしょうか。ぜひ、過多月経治療の新たな選択肢としてMEAを覚えておきましょう。
医院情報
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診療科目 | 婦人科 |