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性器のかゆみ、もしかしたら「洗いすぎて」炎症を起こしていない?

 更新日:2023/03/27

「清潔に保つ」とは、一体どういうことなのでしょうか。「新宿駅前クリニック」の蓮池先生によると、必ずしも無菌状態を意味しないそうです。しかし我々は、汚れや菌に対してつい、過剰反応してしまいます。新型コロナウイルス感染症対策の手指衛生などとどう線引きをしていくべきか、詳しく取材してみました。

蓮池 林太郎 医師

監修医師
蓮池 林太郎(新宿駅前クリニック 院長)

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帝京大学医学部卒業。国立精神神経センター国府台病院(現・国立国際医療研究センター国府台病院)臨床研修、国際医療福祉大学三田病院勤務を経た2009年、東京都新宿区に「新宿駅前クリニック」を開院。2121年には法人化に伴い医療法人社団「SEC」理事長就任。「働く人を応援するクリニック」のコンセプトの元、皮膚科・内科・泌尿器科の各診療を提供している。

善玉菌まで取り除いてしまう弊害

善玉菌まで取り除いてしまう弊害

編集部編集部

陰部の病気って、不衛生さによっても起こりますよね?

蓮池 林太郎 医師蓮池先生

菌類の繁殖を許してしまうという意味ですよね。半分は事実なのですが、その一方で、「陰部を洗いすぎることで炎症に至るケース」が少なくありません。炎症を起こした箇所は傷付いたり、肌のバリア機能が低下したりしますから、そのことによって菌類の異常な繁殖を許してしまう可能性があるということです。

編集部編集部

「洗っても、洗わなくてもダメ」となると、どうすればいいのでしょうか?

蓮池 林太郎 医師蓮池先生

教科書的には「炎症を起こすほど強く洗うな」ということになるのでしょうが、加減が難しいですよね。そのため、泌尿器科や皮膚科でレクチャーしてもらうのがいいと思います。

編集部編集部

やはり、我流での対処はリスクですか?

蓮池 林太郎 医師蓮池先生

そうですね。そもそも、ヒトの皮膚にはいろいろな菌やウイルスがいて、一定のコロニーを築いています。このコロニーには、「悪さをするよそ者が近づけない」効果もあるのです。ところが、必要以上に皮膚を洗ってしまうと、コロニーのバランスが崩れてしまいます。また、下着の蒸れや冬季の乾燥、持病なども、コロニーのバランスを傾けてしまう一因です。

編集部編集部

こうした相談するとしたら、どういう症状のときに受診すればいいのでしょうか?

蓮池 林太郎 医師蓮池先生

痛みやかゆみなどが伴っていたら、そのときは遠慮なくご相談ください。なお、男性の「亀頭包皮炎」や女性の「膣(ちつ)炎」は炎症なのですが、肌荒れと同じような感覚で放置している人がいらっしゃいます。ただ、放置しても「ダメだ」とは言えないところが難しいところです。

洗いすぎで起きる代表格が亀頭包皮炎

洗いすぎで起きる代表格が亀頭包皮炎

編集部編集部

陰部に繁殖する菌類は決まっているのでしょうか?

蓮池 林太郎 医師蓮池先生

複数あるものの、大枠では限られます。菌類の種類ごとに用いる薬は異なるので、細かな点は医師へお任せください。患者さんの役目は、速やかに受診していただくことです。

編集部編集部

診断が付くとしたら、病気と言うより皮膚炎という扱いですか?

蓮池 林太郎 医師蓮池先生

カンジタという感染症として診断が付くこともあれば、単なる皮膚の炎症とみなすこともあります。症例として多い亀頭包皮炎は、後者の部類と言えるでしょう。後者の場合、特効薬というよりスキンケア用の薬を処方することが多いですね。また、患者さんに留意いただきたいのは「菌の繁殖を許した原因の排除」です。例えば、糖尿病の人の場合、漏れた尿の中の糖分が高いため、菌の繁殖をより許してしまいます。

編集部編集部

そして、洗いすぎも「菌の繁殖を許す原因」の1つということでしょうか?

蓮池 林太郎 医師蓮池先生

そういうことです。ほかには、性交渉の仕方や下着かぶれ、衣料の原料によるアレルギーなども考えられます。そのなかで頻度として多いのが「洗いすぎ」という印象です。

編集部編集部

どのように洗うのがいいのでしょうか?

蓮池 林太郎 医師蓮池先生

陰部を清潔に保つには、ぬるま湯で洗い流す程度で十分だと思います。個人的には、ボディソープを使うこと自体、少し刺激が強すぎるのかなと考えています。ボディソープは皮膚用であって、粘膜用ではないですからね。

「アダルトフィルター」による情報提供の阻害

「アダルトフィルター」による情報提供の阻害

編集部編集部

症例で多い亀頭包皮炎の場合、治療にかかる期間や費用について教えてください。

蓮池 林太郎 医師蓮池先生

保険の適用が認められていて、3割負担だとすると1週間分の塗り薬代として1000円台です。このほかに、初診代や診察代がかかる場合もあります。症状の程度や菌類の種類によっては、飲み薬を併用する場合もありますので、あくまでも目安として捉えておいてください。

編集部編集部

亀頭包皮炎は市販薬でも治せるのでしょうか?

蓮池 林太郎 医師蓮池先生

「除菌」は成功したとしても、「菌の繁殖を許した原因の排除」ができているかが気になるところです。加えて、市販薬は正しい知識を教えてくれません。仮に病気が治ったとしても、我流のケアを続けかねないということです。やはり、一度は受診して、薬と正しい知識をもち帰っていただきたいですね。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

蓮池 林太郎 医師蓮池先生

炎症は、そのまま治ることがある反面、大きく腫れあがることもあります。本来ならインターネットで症例画像をお見せしたいものの、性器の炎症の場合、公序良俗の観点から表示できないことがあるのです。けっして、「インターネットを探しても重篤例がなかったから安心できる」というわけではないことをご理解ください。いずれ、歩行が困難になるようなことも考えられます。

編集部まとめ

肌荒れなどの炎症は日常的に起こるもので、いわば「状態」といったところで、亀頭包皮炎は状態に含まれるということでした。ですが、治療に保険適用が認められているため、制度的には「病気扱い」されているということなのでしょう。また、コロニーの話題が興味を引きました。市販薬などでやみくもに除菌しようとすると、かえって悪化するかもしれません。医師の診断を受け、治療する方が良さそうです。

医院情報

新宿駅前クリニック

新宿駅前クリニック
所在地 〒160-0023 東京都新宿区西新宿1-12-11 山銀ビル5F
アクセス JR「新宿駅」 2分
診療科目 内科、皮膚科、アレルギー科、泌尿器科、耳鼻咽喉科、性感染症内科

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