性などに悩む若者の駆け込み寺「ユースクリニック」に聞く 親バレの心配や相談できる範囲は?
10代や20代の若い人たちの駆け込み寺として、日本でも少しずつ数が増えてきているユースクリニック。性に関する悩みなど幅広く聞いてくれる頼もしい存在です。しかし「ユースクリニックに行ってみたいけれど、友達や親にバレたら困る」という人もいるのでは? 実際のところ、ユースクリニックでの相談事はバレることはないのでしょうか? ショコラウィメンズクリニックの木崎尚子先生に教えてもらいました。
監修医師:
木崎 尚子(ショコラウィメンズクリニック 院長)
東京女子医科大学卒業。川崎市立井田病院・川崎病院で初期研修。東京女子医科大病院産婦人科、国際親善総合病院産婦人科、湘南藤沢徳洲会病院産婦人科、茅ヶ崎徳洲会病院産婦人科などを経て、2021年10月、横浜市都筑区にショコラウィメンズクリニックを開院。古くから薬能があるとされ、また、人を癒やしたりリラックスしたりする効果があるとされるチョコレートのように、ほっとできる空間を提供したいとの思いから、「ショコラウィメンズクリニック」と命名。
「ユースクリニック」は何をするところ?
編集部
そもそもユースクリニックとはなんですか?
木崎先生
文字通り、若者のためのクリニックのことをユースクリニックといいます。10〜20代の若い人たちが、セックスに関する悩みや性感染症について、さらに、学校や家庭の悩みなどを幅広く相談できる場所です。
編集部
どんな悩みでも聞いてもらえるのですか?
木崎先生
そうです。特に10代や20代は心と体に急激な変化が起こる時期であり、それに伴い、不安やトラブルを抱える人もたくさんいます。しかし、「誰に相談したらいいかわからない」「病院にかかるほどではないけれど専門家に相談したい」「自由なお金がないから病院へ行くことができない」など、人知れず悩んでいる人も少なくありません。そんなとき、役立ててほしいのがユースクリニックです。
編集部
ユースクリニックはどこにあるのですか?
木崎先生
日本では当院のように、婦人科のなかに設けられているケースが一般的です。そのほか、薬局のなかにユースクリニックが開設されている場合もあります。
編集部
どういう人が相談に乗ってくれるのですか?
木崎先生
施設によって異なりますが、一般に、産婦人科医や看護師、助産師、メンタルケア心理士などが相談にあたります。もともとユースクリニックが誕生したのはスウェーデン。現在、同国には約250カ所以上のユースクリニックがあり、若者に対して避妊具を提供したり、性感染症、妊娠に関するケアをしたりしています。それだけでなく、家庭や学校での悩みや進路の問題、お酒との付き合い方、摂食障害など、若者が抱える心と身体の問題に幅広く対応しています。
編集部
それが日本にも広がっているのですね。
木崎先生
そうです。スウエーデンでは国営の施設が開設されていて、基本的に無料で使用できます。一方、日本ではまだ国営のものがありませんが、基本的にユースクリニックは無料、あるいはワンコイン程度の価格で利用できることが多く、誰でも気軽に相談できるようになっています。
ユースクリニックの使い方
編集部
ユースクリニックは、どうやって見つけたら良いでしょうか? 自宅の近くなどで探すことができますか?
木崎先生
日本ではまだそれほど数が多くないので、地域差があるかもしれません。しかし徐々にではありますが、独自にユースクリニックを開設する病院などが増えはじめています。当院のユースクリニックの場合、「SNSで見た」「友達に聞いた」という理由で訪れる人が多いですね。
編集部
ユースクリニックを利用しているのは、どんな人たちですか?
木崎先生
基本的に、ユースクリニックは10代や20代の若い人たちが対象。「対象は学生」「相談できるのは25歳まで」など、それぞれの施設が独自に対象年齢や条件を定めています。
編集部
具体的にはどのような悩みの相談が多いのですか?
木崎先生
たとえば「生理痛がひどい」「生理の量が多い」「生理が不順」など、生理に関する悩みや、「避妊について知りたい」「妊娠したかもしれない」など、性行為や妊娠に関する相談が目立ちます。「女の子だけど、性欲がとても強い。どうしたら良いかわからない」「性感染症が気になる」など、親や友達には相談しづらい話を聞くことも多いですね。
編集部
性の悩みが多いのですか?
木崎先生
それだけではありません。ほかの悩みもたくさんあります。「親と仲が悪い」「学校へ行きたくない」など、生活全般の悩みを聞くこともありますし、「食欲がない」「気力がない」「体調が悪いけれど、何科を受診したら良いかわからない」など、体調全般の話を聞くこともあります。
編集部
どんな悩みにも対応してくれるのですね。
木崎先生
そうです。幅広い悩みに対応するため、さまざまな資格を持った人たちが相談に応じ、アドバイスをしています。「こんな悩みを相談しても大丈夫かな」など不安を感じることなく、どんなことでも気軽に相談してほしいですね。
ユースクリニックと通常のクリニックはどう違う?
編集部
ユースクリニックでは薬を処方してもらえたり、治療してもらえたりするのですか?
木崎先生
いいえ、ユースクリニックの役割は、診察や治療ではなく、相談を受けることです。そのため、治療が必要な場合は診察室へ移り、検査や処置を行うこともあります。また、そのクリニックで対応できない場合は、適切なクリニックに通い、診察をしてもらうこともあります。ただし当院の場合、高校生以上に限り、自費のピルや緊急避妊ピルをユースクリニックで処方しています。
編集部
保険証を持参する必要がありますか?
木崎先生
ユースクリニックは診断ではなく相談が目的なので、保険証は不要です。ただし、施設によっては本人確認のため、身分証として保険証の提示を求めることもあります。また、当院ではピルについて学生料金を定めており、その場合は学生証の提示が必要となります。
編集部
ユースクリニックに行っても、親や友達にバレることはありませんか?
木崎先生
大丈夫です。ユースクリニックでの相談はきちんとプライバシーが保護され、秘密は守られています。本人に無断で家庭や学校に連絡することもありません。
編集部
秘密が守られるというのは安心です。
木崎先生
当院の場合、診察室とは別にカウンセリングルームを設け、完全なプライベート空間で話してもらえるよう配慮しています。また、待合室で順番を待っている時にも名前ではなく診察券の番号でアナウンスするので、クリニックにいる人に名前を知られることもありません。だから、「親や友達には相談できない」「誰にも知られたくない」というようなことでも、安心して相談してほしいと思います。
編集部
最後に、読者へのメッセージがあれば。
木崎先生
スウェーデンで生まれたユースクリニックも少しずつ日本で広がり、徐々に認知度が高まってきました。SNSやインターネットなどで紹介されることも多く、そうした情報を見て訪れる若い人もたくさんいます。しかし、地域によってはまったくユースクリニックがないこともあります。当院では中絶に関する内容については、オンラインでの相談もおこなっています。コロナ禍ということもあり、オンラインで相談にのってくれるユースクリニックも少しずつ増えてくると思うので、悩みごとがある人は一人で抱えず、相談できる場所を探してほしいと思います。
編集部まとめ
これから少しずつ増えていくユースクリニック。「どんな悩みでも受け入れてもらえる」という安心感は、心身にトラブルを抱えがちな若い人にとって、とても頼もしい存在になるでしょう。普段から、いざというときの駆け込み寺を見つけておくと安心ですね。
医院情報
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アクセス | 横浜市営地下鉄グリーンライン「都筑ふれあいの丘駅」の改札を出て目の前 |
診療科目 | 婦人科、産科、予防医療、美容診療、外来手術、ユースクリニック |