「15時間の“飢餓状態”が脂肪を燃焼させる」肥満改善に向けた有効な食事の摂り方
適正体重の指標として「BMI」が用いられているものの、これは体重と身長から割りだされる結果論であり、その次の“工夫や努力”に直結しません。「どのくらいの食事量や運動量にしたら、体重が何kgになるのか」が見えてこないのです。そこで、新たな指標ともいえる「基礎代謝基準値」と、効率的な脂肪の燃やし方について、「福本医院」の福本先生を取材しました。
監修医師:
福本 淳(福本医院 院長)
神戸大学医学部医学科卒業。大学病院や民間医療機関で主に循環器外科の診療を積んだ後の2020年、大阪府大阪市に「福本医院」を開院。満足を重視した「質の高い医療サービス」の提供に務めている。医学博士。心臓血管外科専門医認定機構心臓血管外科修練指導者、日本外科学会外科専門医、日本循環器学会専門医。
肥満改善の指標について
編集部
肥満を改善したいのですが、どうすればいいのでしょうか?
福本先生
※e-ヘルスネット「加齢とエネルギー代謝」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/exercise/s-02-004.html
編集部
でも、摂取カロリーや消費カロリーって簡単には計算できないですよね?
福本先生
そうかもしれませんね。上記の公式が言いたいこととしては、例えば「体重70kgの人が、今日から60kgの生活習慣で過ごせば、ゆくゆくは60kgになる」ということです。それだけ体重には「食事と活動」の双方が関係しています。ちなみに、脳にもカロリーが必要なので、頭を使うことも活動の習慣改善となります。
編集部
適正体重の指標として、「BMI」もありますよね?
福本先生
はい。BMIは、「体重(kg)」÷「身長(m)の2乗」で求められます。日本肥満学会では、BMI25以上の人を肥満と定義づけています。ただし、BMIの公式は「現在の状態が適正かどうかを計るモノサシ」であって、冒頭の公式のように、「摂取カロリーや消費カロリーの目安をシミュレーションするモノサシ」にはなりません。
編集部
つまり、カロリー計算のできる人なら、冒頭の公式の方が具体的な目標を立てやすいということですか?
福本先生
そう思います。それにこの公式は、リバウンドの根拠にもなり得ます。仮に60kgまで体重を減らした人が70kgに戻ったとしたら、「70kgの生活習慣に戻った」ということなのでしょう。このとき、活動量がそんなに変わっていないとしたら、「あと、どれくらい摂取カロリーを減らせばいいのか」を計算できるわけです。
15時間以上の飢餓状態が脂肪を燃やす
編集部
もう少し簡単にできる食事法のようなコツはありませんか?
福本先生
1つの考え方なのですが、「1食分、食事と食事の間隔を少なくとも15時間以上空ける」というものがあります。「21時までに夕食を済ませて、翌日の朝食はなし、お昼の12時以降に食事を摂る」のが、現実的でしょうか。人間には飢餓に備えて余剰なエネルギー、つまり脂肪を蓄える性質があります。そして、飢餓状態の時に蓄えたエネルギーを使います。そのため、飢餓状態の時に脂肪が燃焼されるというわけです。
編集部
15時間の断食期間を設けるのですね。
福本先生
はい。ただし注意したいのは、個人差があるものの「脂肪燃焼は最終の食事からおおむね12時間後にはじまる」ということです。「15時間以上空けたら十分に達成」ではありません。なお、日々の積み重ねが可能なので、1時間なり2時間なりの延長を、できる範囲で取り組んでみましょう。また、休日など、断食の日があってもいいと思います。
編集部
その間、何も口にしてはいけないのでしょうか?
福本先生
ノンカロリーの水分なら、飲んでも構いません。水分は食べ物の中にも含まれますから、むしろ“抜いた食事の分も含めた水分”を積極的に摂取しましょう。また、マルチビタミンをサプリメントで摂取することもおすすめします。加えて、タンパク質不足が懸念されるので、その後の食事で「60g以上のタンパク質」を補うようにしてください。ちなみに、納豆の標準的な1パックに含まれるタンパク質は6gです。
編集部
納豆10パックとかは、さすがに現実的ではありません……。
福本先生
そこで活用いただきたいのが、高タンパク食品です。昨今、コンビニなどで高タンパクな商品のラインナップが増えてきました。ほかにも、サラダチキンやプロテイン飲料なども活用してみてください。その際、パッケージ裏の栄養成分表示もチェックしましょう。タンパク質などの栄養がどれくらい含まれているのかがわかります。
運動を継続するコツは「喜び」を得ること
編集部
続けて、消費カロリーの詳細についても教えてください。
福本先生
やはり、メインは「運動」となります。そして、運動には大きく分けると2つの方向性があります。1つは、単純な消費カロリー増を狙う方法で、この場合はゆったりとした「有酸素運動」が効果的とされています。もう1つは、筋肉を付けることで基礎代謝量そのものを増やす考え方です。この場合は、「有酸素運動」よりも「レジスタンス運動」、つまり筋トレが有効になります。
編集部
運動の中身は、それほど問わないということですか?
福本先生
そうかもしれませんね。運動の内容というより、継続性が重要だと思います。運動をしていれば消費カロリーや基礎代謝量が増えるので、「まずは、続けられることから毎日」ですね。その際、あまり高い目標を置くと挫折しやすくなってしまうので、手軽にはじめられることから取り組むのが続けるコツです。また、日々の体重を計ってグラフ化すると、手応えもあって“喜び”につながると思います。このとき、週単位や月単位のような「長期のトレンド」で運動の効果を評価しましょう。
編集部
基礎代謝量は、年齢とともに下がっていくと聞いたことがあります。
福本先生
そのとおりです。基礎代謝量のピークは20歳で、そこを越えると下がる一方です。つまり、20歳以降になっても、今までと同じ生活習慣を続けていると「太る」道理です。冒頭の公式が男女それぞれの「年代別」になっているのも、そのためですね。また、蓄積された脂肪に炎症が起きると、色々な病気につながり、生活習慣病の一因にもなっています。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
福本先生
若いうちは、好きなだけ食べてもなかなか太らないかもしれません。しかし、そのままシニア世代を迎えると、活動で消費するエネルギー量がさらに下がります。そして、肥満傾向により腰や膝の痛みが生じて、ますます活動量を落としてしまいがちです。よって、「肥満は万病の元」にほかなりません。健康的な毎日を老後まで過ごせるように、少しでも早くから肥満の改善に努めましょう。
編集部まとめ
もし、摂取と消費カロリーの計算ができるなら、「基礎代謝基準値」は肥満解消の強力な武器になり得ます。これが難しそうなら、「15時間以上の飢餓作戦」や運動を試してみましょう。ただし、体重をグラフに付けないと効果測定ができないので、1日だけの数字に惑わされず、長期的な変化を追うようにしてください。
医院情報
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診療科目 | 内科、循環器内科、心臓血管外科 |