冬の紫外線対策 「白残り」するくらい日焼け止め塗るのが理想
紫外線の波長そのものは、夏でも冬でも変わりません。季節による変動要因があるとしたら「量」なのでしょう。ズバリ、冬のスキンケアは夏と比べて「手抜き」できるのか。淡い期待を胸に、その是非を、「よしき皮膚科・形成外科」の吉木竜太郎先生に聞きました。
監修医師:
吉木 竜太郎(よしき皮膚科・形成外科 院長)
産業医科大学医学部医学科卒業。大学病院や大学講師、民間企業の産業医などを経た2013年、福岡県福津市に「よしき皮膚科・形成外科」開院。法人化に伴い、「医療法人隼会」理事長就任。皮膚のことならなんも相談できる地域のかかりつけ医として診療に尽くしている。医学博士。日本皮膚科学会認定専門医。
冬の低い日差しによる直射に注意
編集部
紫外線についてですが、冬より夏のほうが昼の時間は長いですよね?
吉木先生
はい。そして紫外線を浴びている量や時間も、冬より夏の方が多いですね。とはいえ、冬の日差しは入射角度が低く、帽子などで遮りにくくなってきます。
編集部
むしろ冬の日差しのほうが「直射してくる」印象です。
吉木先生
帽子と同じことですよね。太平洋側の地域は「冬に晴れる」傾向があるので、お住まいの環境によっては「冬の直射感」があるのでしょう。逆に、夏の時期で太陽の位置が高いと、軒や屋根などが直射日光を遮ってくれます。そもそも梅雨の時期などは曇っていれば、太陽は姿を見せません。
編集部
むしろ冬のほうが、紫外線対策を求められると?
吉木先生
そこまでの話ではないでしょう。「冬より夏のほうが、紫外線は強いし量も多い」これは紛れもない事実です。だからといって、冬の紫外線対策をおこたっていると、シミやシワの原因になりかねないということですね。
編集部
家の中だから「冬はすっぴんでいい」が通じない?
吉木先生
直射のある窓際でなければ、そこまでデリケートになる必要はないと思います。ただ、寒いと日差しが気持ちよくなるので、つい、直射日光を浴びながらポカポカしがちですよね。じつは弱火でじっくり火を通されているような状態なので、注意してください。
編集部
ビタミンDは日光浴でつくられるから、「最低限は浴びておけ」という論を散見します。
吉木先生
一昔前の考え方ですね。無理に浴びる必要はなく、生活しているうえで無意識に取り込んでいるくらいの量で十分です。季節問わず、直射日光の下で寝転んでいるのは、自ら紫外線による皮膚ダメージを与えている姿であり、絶対にやめるべきです。
季節により、紫外線の中身は変化するのか
編集部
梅雨時は、曇り空が紫外線を遮ってくれるイメージがあるのですが。
吉木先生
残念ながら、紫外線は曇り空を通り抜けて、地上に降り注いでいます。紫外線は目に見えない光なので自覚しにくいですよね。また、同じ紫外線にも2種類あり、皮膚の表面に作用するものと皮膚の深くまで到達するものがあります。皮膚の深くまで到達する紫外線を、波長の違いから「UVA」と呼んでいます。
編集部
もう一方の紫外線は「UVB」ですよね、聞いたことがあります。
吉木先生
「UVB」はお肌の表面近くまでしか到達しない代わりに、メラノサイトという“色素工場”を活性化させます。他方の「UVA」はお肌の奥まで浸透し、どちらかというとシワやたるみの原因になります。ただし「UVA」にも、すでにできた色素をさらに黒くする働きがあるので、シミやソバカスと無縁ではありません。
編集部
「UVA」と「UVB」の季節による量の変化は?
吉木先生
双方共に「夏に多く、冬は少ない」が大前提です。とくに「UVB」の量は夏に著しく増加します。そこで、「夏にUVBをカットして、メラノサイトにおとなしくしていてもらおう」という考え方が生じてきているのでしょう。発がんとの関連も、「圧倒的にUVBの影響のほうが強い」とされています。
編集部
しかし、雲や窓をスルーしてくる「UVA」もお肌に悪さをするわけですか?
吉木先生
はい。ですが、あまり難しく考えず、「夏でも冬でも、しっかり紫外線対策をしましょう」ということでいいと思います。具体的な紫外線対策について、気になることがあれば皮膚科で相談してみてください。
夏の流れ落ち、冬のこすれ落ち対策が肝要
編集部
紫外線対策グッズそのものは、夏と冬で違うのでしょうか?
吉木先生
基本的には違いません。なお、「SPF」や「PA」などの数値で使い分けるというより、「落ちてきたら塗り直す」ことに注意を向けましょう。夏だと汗などで日焼け止めが流れてしまいますが、冬で心配なのはタートルネックや襟巻きなどとの“こすれ”でしょうか。ベースにするクリームなどとは別に、「携帯用のスプレータイプ」を用意しておくと便利です。スプレータイプは、あくまで簡単な塗り直し用として使用してください。
編集部
冬だと安心して「薄塗り」にしそうですが?
吉木先生
薄塗りは、ほとんど意味がありません。理想をいえば、「白残り」するくらい塗ってやっと効果が現れます。しかし、白残りはみっともないですから、「その少し手前くらいの量」が現実的なのでしょう。それでも、結構な量を塗ることにはなりますよ。
編集部
冬は、肌が乾燥する季節でもありますよね?
吉木先生
「夏と冬、それぞれに異なった工夫」も求められそうです。私は、塗る順番として、「保湿が先で、日焼け止めは後」と指導させてもらっています。保湿剤は皮膚からの水分の喪失を防ぎ、バリア機能の維持・改善を目的として使用します。さらに日焼け止めは、紫外線という外からの敵を防ぐ追加のバリアですからね。なお、オール・イン・ワンの商品より、それぞれ別個の保湿剤なり日焼け止めなりを推奨します。
編集部
最後に、読者へのメッセージがあれば。
吉木先生
お肌の老化の原因は紫外線です。究極のスキンケアグッズと言えば化粧水でも乳液でも美容液でもなく「日焼け止め」と思って、しっかりとした紫外線対策を心がけましょう。夏と冬の違いが出るとしたら「日焼け止めが落ちやすいか否か」であって、スキンケアの本質は変わりません。
編集部まとめ
夏の日差しと冬の日差しに違いはあるものの、紫外線対策の違いは基本的に「ない」ということでした。夏でも冬でも、知らない間に落ちてしまっている日焼け止めの“塗り直し”に気を遣いましょう。また、「日光浴がビタミンDの生成にいい説」は通用しないようです。ビタミンDの生成は、カットしきれない程度の日光でも十分にできるということでした。
医院情報
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診療科目 | 皮膚科、形成外科、美容皮膚科 |