子どもの「水いぼ」、できていても慌てずに対処を。放置しても自然治癒するケースがほとんど
体に突如、現れる小さな「水いぼ」。子どもによくみられる症状ですが、「放っておいてもいい」という話も散見されます。そうはいっても、どんどん増えていくこともあり、心配になってしまいます。はたして、水いぼは本当に放置していいものなのでしょうか。「自由が丘ファミリー皮ふ科」の玉城先生に、この疑問を解決していただきました。
監修医師:
玉城 有紀(自由が丘ファミリー皮膚科 総院長)
帝京大学医学部卒業。その後、日本医科大学武蔵小杉病院、東京女子医科大学皮膚科、町田市民病院皮膚科などに勤務。2019年、東京都世田谷区に「自由が丘ファミリー皮膚科」を開院。ほか、「溝の口駅前皮膚科」院長、「二子玉川ファミリー皮ふ科」総院長を兼任。「クリニックだからこそできる丁寧な診療」をコンセプトに掲げ、一人ひとりの患者さんと向き合うことを大事にする。日本皮膚科学会、日本美容皮膚科学会、日本臨床皮膚科医会、日本アレルギー学会、日本感染症学会の各会員。
そもそも、「水いぼ」とは?
編集部
まず、水いぼについて教えてください。
玉城先生
水いぼは通称で、正式には「伝染性軟属腫」という、ウイルス性の皮膚疾患です。ウイルスが傷口や毛穴から入ることで感染します。
編集部
どのような経路で感染するのでしょうか?
玉城先生
接触などのスキンシップによる「経皮感染」がメインです。感染者が水いぼを引っ掻いたり潰したりしてしまうと、ウイルスが体中に広がって、増殖してしまいます。また、感染者が使用したタオルを使い回すことで、感染が広がるケースも少なくありません。
編集部
ちなみに、水いぼというと子どもに発症するイメージが強いのですが、大人も感染するのでしょうか?
玉城先生
現在、成人の感染は稀とされています。大抵の場合、幼児から小学生低学年くらいによくみられますが、大人でも発症しないわけではありません。大人の場合は、性行為が主な感染経路とされていて、性器周辺に感染することが多いことから、「性器伝染性軟属腫」とも呼ばれます。
「水いぼ」の症状と経過
編集部
水いぼができると、どのような症状が出てきますか?
玉城先生
基本的に痛みやかゆみはありませんが、引っ掻いて炎症を起こすと、かゆくなることがあります。そのため、水いぼができたら触らないようにしましょう。
編集部
水いぼは、体のどの部位に現れることが多いのでしょうか?
玉城先生
首や脇の下、肘、おなか、太ももの内側など、体のどこにでも現れます。特に、脇の下や膝の裏側は皮膚が擦れていぼが潰れやすいため、感染が広がりやすい部位です。
編集部
感染したら、すぐに水いぼができてしまうのですか?
玉城先生
約14~50日ほどの潜伏期間があるため、感染者と接触したからといって、すぐには現れません。ただし、感染力が強いので、一度発症すると同時に数十個の水いぼが体中にできることもあります。
編集部
水いぼの治療は、どのようにおこなわれるのですか?
玉城先生
基本的に、水いぼは自然に治ります。健康な子どもの場合、だいたい6~9カ月くらいで自然治癒するでしょう。
編集部
それでは、水いぼは放置しておいて大丈夫ということですか?
玉城先生
ほかの部位へ感染を広げないように注意を払えば、放置しても大丈夫です。あくまでも目安ですが、水いぼの数が5個以下であれば、放っておいてもほとんど問題ないでしょう。ただし、全て治りきる前に、数が増えてしまったり範囲が拡大してしまったりすることもあります。心配であれば、治療すべきかどうかを医師と相談してください。
編集部
一般的に、どのような場合に治療がおこなわれるのですか?
玉城先生
アトピー性皮膚炎などの疾患がある場合や感染が全身に広がっていく場合には、ピンセットでいぼをつまみ取ります。なお、液体窒素でいぼを凍らせてから除去する場合もありますが、シミになりやすかったり複数回の施術が必要になったりしてしまいます。そのため、基本的には1回で完結できるピンセットで取り除いてしまいます。
編集部
感染力が強いとのことでしたが、再発するのですか?
玉城先生
ピンセットで全てのいぼを取っても、再発する可能性はあるでしょう。水いぼの現れ方は個人差が大きく、何もしなくても1カ月後に消えていたり、1年以上全身に出続けたりします。
水いぼの対処と注意点
編集部
水いぼができないために、日常生活での注意点を教えてください。プールで感染すると聞いたことがあります。
玉城先生
プールの水で感染することはありませんので、入っても大丈夫です。ただし、タオルや浮輪、ビート板などが感染経路になり得るので、他人と共有しないように気をつけましょう。また、お互いうつし合わないために、肌の露出を少なくするラッシュガードを着用するのもおすすめです。
編集部
さすがに、お風呂も大丈夫ですよね?
玉城先生
プール同様、お風呂のお湯でうつることもありません。しかし、水いぼのウイルスは経皮感染するため、お風呂で感染者と接触したり、同じタオルを使ったりしないよう注意しましょう。
編集部
水に触れた後、すべきことはありますか?
玉城先生
プールやお風呂に入った後は皮膚が乾燥して、表面のバリア機能が低下します。つまり、ウイルスに感染しやすい状態ということです。そのため、乳液やクリームなどで保湿をして、ケアするようにしましょう。
編集部
ほかに、気を付けることはありますか?
玉城先生
子どもの場合、予防できることは限られてしまいますが、水いぼを潰さないように爪を短く切っておきましょう。水いぼを引っ掻いた後にほかの部位を触ると、感染がどんどん広がってしまいます。また、自宅でピンセットなどを使って水いぼを取り除くのは避けてください。感染拡大を防ぐためにも、必ず皮膚科を受診するようにしましょう。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
玉城先生
水いぼは、皮膚疾患の中でもメジャーな部類です。最近の若いお母さんは、あまり水いぼを見たことがないようで、慌ててクリニックへ駆け込んでくることも多いのですが、一昔前まで水いぼは子どもの疾患として一般的でした。あまり神経質になることもないかと思いますが、引っ掻いて潰してしまったり、何度治療しても再発したりする場合は、慌てずに皮膚科を受診しましょう。専門的な皮膚ケアや治療をしながら、水いぼを繰り返さないためのアドバイスをさせていただきます。
編集部まとめ
本来、水いぼはいずれ自然治癒するので、そこまで焦る必要なないとのことでした。ただ、何度も繰り返すのは不安ですし、跡が残るかもしれないといった心配はつきまといます。もし気になる場合は、皮膚科を受診してみてはいかがでしょうか。
医院情報
所在地 | 〒158-0083 東京都世田谷区奥沢5丁目23−18メディス自由が丘 4階 |
アクセス | 東急東横線「自由が丘駅」徒歩2分 |
診療科目 | 皮膚科、小児皮膚科 |