グレープフルーツと薬の飲み合わせが悪いって本当? 飲んでしまった時の対処法は?
グレープフルーツを食べた直後の服薬は薬の効果を弱くしたり、逆に効果が強く出すぎたりして、身体に悪影響をおよぼす可能性があることをご存じでしょうか? そんなグレープフルーツと薬の飲み合わせに関する疑問について、今回は「薬剤師」の渡辺さんに詳しく伺いました。
監修薬剤師:
渡辺 るい(薬剤師)
慶應義塾大学薬学部卒業。埼玉県の調剤薬局で勤務の後に、薬剤師としての経験をベースにしたブログ記事の執筆やWebコンテンツ作成に従事。薬や医療について、一般の方にもわかりやすく解説することをモットーに、現在は医療分野をカバーするWebライターとして活動中。
グレープフルーツと薬の相互作用とは
編集部
グレープフルーツと薬の飲み合わせが悪いって本当ですか?
渡辺さん
全ての薬があてはまるわけではありませんが、グレープフルーツとの飲み合わせで副作用が出やすい薬がいくつかあります。免疫抑制薬のシクロスポリン、高血圧の方に使用するニフェジピン、脂質異常症の方に使用するシンバスタチンなどが有名です。そのほかにも抗ウイルス薬、糖尿病治療薬、抗うつ薬、睡眠薬などが影響を受けます。服用している薬が該当するのか気になる方は、医師や薬剤師に相談することをおすすめします。
編集部
一緒に飲んでしまうと、どのような影響があるのでしょうか?
渡辺さん
グレープフルーツに含まれる成分が、肝臓で薬を分解する代謝酵素の働きや薬を体内に取り込む役割のトランスポーターの働きを弱くしてしまいます。その結果、肝臓で代謝酵素が十分に働かずに薬を分解できず、体内への吸収率が増大してしまうことで血中濃度が高くなってしまいます。その一方で、小腸でトランスポーターによって取り込まれるタイプの薬は、グレープフルーツの影響で体内に取り込まれにくくなり、血中濃度が低くなってしまうのです。
編集部
薬の血中濃度が上がったり下がったりすることでどんな影響があるのですか?
渡辺さん
薬は適切に吸収、分解されることを想定して服用量や服用間隔が設定されています。そのため、薬の血中濃度が高くなると効果が強まり、副作用があらわれやすくなってしまいます。このタイプの薬として代表的なものは降圧薬のアムロジピン、ニフェジピンなどです。逆に薬の血中濃度が低くなると、薬の効果が発揮されにくくなります。このタイプの薬としては抗アレルギー薬のフェキソフェナジンがよく知られています。
グレープフルーツと薬の飲み合わせで注意すべきポイント
編集部
グレープフルーツの影響を避けるには、どれくらい時間をあければいいのでしょうか?
渡辺さん
グレープフルーツに含まれる相互作用を引き起こす成分は、銘柄や産地によって含有量が大きく異なるため、一概に「何時間あければ大丈夫」とは言えません。相互作用を起こす薬を服用している間は、なるべくグレープフルーツを避けた方がいいでしょう。
編集部
ジュースだけでなく、果肉を食べることでも相互作用の影響はあるのでしょうか?
渡辺さん
相互作用を引き起こす成分はグレープフルーツの皮だけでなく実の部分にも含まれているため、果肉を食べることによる影響も予想されます。また、グレープフルーツは成分の含有量に個体差があり、さらに人によってその感受性も異なります。前回食べた時は大丈夫だったから、今回も問題ないというわけではありません。
編集部
グレープフルーツとピンクグレープフルーツで影響に違いはありますか?
渡辺さん
ホワイトタイプのグレープフルーツの方が相互作用を引き起こす成分の含有量が多く、ルビータイプのグレープフルーツの約2倍といわれています。しかし、含有量が少ないルビータイプだから相互作用の影響がないというわけではありません。
グレープフルーツと薬を一緒に飲んでしまった時の対処法とほかに注意するべき食材
編集部
グレープフルーツ以外にも気をつけた方がいいフルーツはありますか?
渡辺さん
グレープフルーツと近縁のスウィーティーにも同様の成分が含まれているので、注意が必要です。ほかにもブンタン、ハッサク、夏みかんなどは相互作用を起こす可能性があるため摂取を控えてください。オレンジ、日向夏、レモン、ポンカン、カボス、イヨカン、ユズ、スダチ、キンカンなどは少量であれば摂取しても大丈夫とされています。温州みかん、デコポンは相互作用を引き起こす成分の含有量がないとされているため、摂取しても構いません。
編集部
ほかに飲み合わせの悪いものはありますか?
渡辺さん
牛乳やミネラルを多く含むサプリメント、ミノマイシン、セフジニルなど一部の抗生物質を一緒に飲むと、薬の成分がミネラルと結合してしまい効果を発揮できなくなってしまうことがあります。この場合、2時間ほど間をあければ大丈夫です。また、ワルファリンを服用している方は納豆、クロレラ、青汁などのビタミンKが多く含まれる食材を食べると、血液を固まりにくくするワルファリンの効果を弱めてしまいますので注意が必要です。
編集部
それらの食材と一緒に飲んでしまった場合はどうすればいいでしょうか?
渡辺さん
グレープフルーツや牛乳を薬と一緒に飲んでしまっても、すぐに影響が出るわけではありません。様子を見て、違和感がなければ特に対処しなくても大丈夫です。薬を飲んでから違和感があったり、体調の異変を感じたりした場合は、必ず医師や薬剤師に相談してください。
編集部まとめ
グレープフルーツには薬の効果に影響をおよぼす成分が含まれていることがわかりました。用法用量を守って正しく服薬することも大切ですが、飲み合わせで薬の効果に影響がおよぶ可能性にも注意が必要です。薬を購入する際には、飲み合わせについて薬剤師に相談してみるのがいいでしょう。