ウイルス性イボは「尿素クリーム」で完治するって本当? 効果や対策について皮膚科医を直撃
ウイルス性のイボに対する興味深い報告が、日本臨床皮膚科医会から発表されたようです。同学会によると、「尿素クリーム」の効能が、ほかの民間療法よりも抜きん出ていたとのこと。果たして、この報告をどう受け止めるべきでしょうか。「医療法人社団久信会」理事長の増岡先生に確認してみました。
監修医師:
増岡 宏昭(医療法人社団久信会 理事長)
東京大学医学部医学科卒業。東京大学医学部附属病院皮膚科勤務を経た2007年、東京都中央区に「やえす日本橋ヒフ科」開院。系列医院を都内に3院構え、皮膚病から審美まで幅広い診療にあたっている。2004年には法人化とともに現職へつき、グループ全体の総院長へ。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医。
治るときは治るイボ
編集部
イボ対策としての民間療法には、いろいろなものがありますよね?
増岡先生
そのようですね。例えば、「木酢液(もくさくえき)」が民間療法として挙げられるでしょうか。木酢液を塗ると、肌が酸によって刺激されます。それにより、免疫が活性化されてイボが勝手に治るなんてことは、充分に考えられるでしょう。ですから、木酢液の成分そのものというより、元々ある自然治癒力が上がって、イボが治っているのではないでしょうか。おそらく、ほかの民間療法も同様でしょう。
編集部
報告にもあった「尿素クリーム」については、いかがでしょうか?
増岡先生
日本臨床皮膚科医会の報告によると、ウイルス性のイボに対する尿素クリームの治癒率が9割を超えたそうです。「使ったグループ」と「使わなかったグループ」に分けた比較実験をおこなったそうですが、被験者の数が双方合わせても20人以下なので、なんともいえないところですね。
編集部
しかし、比較をして差が生じたわけですよね?
増岡先生
たしかにそうですが、イボには「小さくて治りやすいもの」と、「大きくて治りにくいもの」があります。直系3mm以下の小さなイボであれば、免疫力の高まった結果として9割前後の完治率が出てもおかしくありません。
編集部
尿素クリームによる民間療法を、どう受け止めればいいでしょうか?
増岡先生
尿素クリームの副作用は極めて少ないので、「まず、尿素クリームをトライしてみて、それでも治らなかったら受診」という流れでもいいのかなと思います。ただし、3mm以上の大きなイボであれば、すぐに受診してください。
編集部
どれくらいのトライアル期間を見ておけばいいですか?
増岡先生
同報告によると、最大で8カ月とのことでした。また、尿素を10%含んだ軟膏を使っての結果だったそうです。市販されている尿素クリームの濃度や成分はさまざまなので、試されるのであれば、注意してください。
尿素の保湿効果との直接的な関係はない
編集部
ちなみに、尿素の効果ってなんなのですか?
増岡先生
主に保湿です。水分と尿素は相性が良く、お互いにくっつき合おうとします。加えて、尿素には角質を溶かす働きがあります。そのため尿素クリームは、かかとや肘の肌荒れ対策として重宝されています。
編集部
一部に、アトピー性皮膚炎の治療薬としても使われていますよね?
増岡先生
それは保湿効果を望んでのことでしょう。詳しくは、市販品の「効能」の部分を読んでみてください。商品によっては、湿疹やアトピー性皮膚炎への効果を謳っているものもあります。同様に、副作用についても触れているはずなので、リスクを理解した上で使用してください。
編集部
その尿素が、どうしてイボに効くのでしょうか?
増岡先生
同報告は統計的な調査で、原因や機序については触れていません。結果として「治った」ということのようです。ですが、考えられる機序としては、やはり免疫の活性化でしょう。尿素そのものに刺激効果があります。
本来目的と異なる用法の是非
編集部
薬が本来の目的以外にも効くって、新型コロナウイルスで注目されましたよね?
増岡先生
新型コロナウイルスの治療薬として、インフルエンザやエボラ出血熱の薬が使われているということですよね。このような処方薬を他目的に使用する場合は、国による正式な承認が必要です。
編集部
問題は市販薬です。勝手にほかの目的で服用もいいのでしょうか?
増岡先生
市販薬の場合、「間違った使い方をしても大ごとにならない」対策はしていると思います。用量・用法を過度にオーバーしていない限りそこまで問題ないと思いますが、あまり推奨はしません。
編集部
万が一、悪化するようなことがあったら?
増岡先生
皮膚が赤くただれたり腫れたりしたら、使っていた尿素クリームを持参して、最寄りの皮膚科にご相談ください。また、もし尿素クリームが目に入った場合は、眼科を受診しましょう。
編集部
最後に、読者へのメッセージがあれば。
増岡先生
イボは、小さなうちに治してしまうのがコツです。大きくなるとウイルス量も多くなり、なかなか治りにくくなります。尿素クリームを試していただくのは構いませんが、効果がみられなかったり肥大していったりするようであれば、クリニックによる治療へ切り替えましょう。
編集部まとめ
学会による報告の評価はさて置き、モチベーションアップが自らの治癒効果を高めることもあるのですね。結果として、尿素クリームが、「最もその気にさせた」ということなのでしょうか。また、木酢液に効く人と効かない人がいるのも、同じ理由で説明できます。イボに対する民間療法の見方が一変した取材でした。
医院情報
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診療科目 | 皮膚科、美容皮膚科 |