ほくろやイボの除去には「炭酸ガスレーザー」が効果的!? どんな治療法なのか詳しく教えて!
メスによる切開と比べ、レーザー手術には“敷居の低い”イメージがあります。はたして、「炭酸ガスレーザー」ならではの効果的な使い方はあるのでしょうか。手術の適応範囲や、保険の可否も知りたいところです。皮膚科診療の最新事情を、「医療法人社団久信会理事長」の増岡先生に伺いました。
監修医師:
増岡 宏昭(医療法人社団久信会 理事長)
東京大学医学部医学科卒業。東京大学医学部附属病院皮膚科勤務を経た2007年、東京都中央区に「やえす日本橋ヒフ科」開院。系列医院を都内に3院構え、皮膚病から審美まで幅広い診療にあたっている。2004年には法人化とともに現職へつき、グループ全体の総院長へ。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医。
正常な組織を傷つけずにターゲットのみを除去できる
編集部
増岡先生は、ほくろやイボの治療に対して、炭酸ガスレーザーを用いられていると聞きました。
増岡先生
はい。炭酸ガスレーザーの特徴は、正常な組織を傷つけずにターゲットのみを除去できることです。そのため、ほくろやイボの治療に適しています。とくに、ウイルス性イボの治療において炭酸ガスレーザーは「最終手段」と考えています。
編集部
最終手段ですか? 必ずしも初手には用いないと?
増岡先生
そうですね。イボは大きく3種類あり「ウイルス性のイボ」、「ウイルス性ではないイボ」、生殖器の周辺に生じる「コンジローマ」があります。そのうちのウイルス性のイボとコンジローマに対しては、液体窒素による凍結療法が第一選択になります。数回の液体窒素治療で効果がなければ、炭酸ガスレーザーの適応になります。その一方、体質による首イボなどの細かいイボには、最初から炭酸ガスレーザーをおすすめしています。
編集部
ほくろについての適応についてはいかがでしょうか?
増岡先生
ほくろの治療は、大きさや深さによって「炭酸ガスレーザーに適したもの」と「外科的切除が適したもの」に分けられます。直径1.2mm程度の平坦で小さなほくろは、炭酸ガスレーザーのみで治療していきます。なお、体質による細かいイボも同様です。
編集部
費用や手術時間についても教えてください。
増岡先生
平坦なほくろは1mmあたり3300円で、隆起したほくろの場合は保険適用の3割負担で9000円程度でしょうか。ほか、2mm以下の細かい首イボは10個以内で5500円、ウイルス性イボは保険適用で1ヵ所約6000円です。手術時間は、5分~10分程度となります。
液体窒素のリスクを避けることができる
編集部
先ほど話にあった、液体窒素による治療方法について解説をお願いします。
増岡先生
液体窒素は、マイナス196℃の超低温でイボの細胞を凍結させる治療法です。その効果は2つあります。1つは「ウイルスが感染している細胞を凍結、破壊すること」で、もう1つは「皮膚に炎症を起こすことによって局所の免疫を活性化させ、免疫力でウイルスを退治すること」です。
編集部
それでも効かない場合、炭酸ガスレーザーを用いると?
増岡先生
そうですね。加えて、体質による細かいイボは液体窒素による色素沈着のリスクが高いため、炭酸ガスレーザーの方が安全です。また、液体窒素が効かないウイルス性のイボやコンジローマにも炭酸ガスレーザーなら効果的で、およそ70%の症例が1回の治療で完治しています。
編集部
液体窒素による治療法が炭酸ガスレーザーに劣っている点について詳しく教えてください。
増岡先生
液体窒素が炭酸ガスレーザーに劣る点は大きく2つあり、先述した「液体窒素は色素沈着を起こしやすいこと」と「治療回数がかかること」です。1.2mmの小さな病変は数回で治癒しますが、大きい病変だと10回以上かかることもあります。なお、炭酸ガスレーザーは、ウイルス性イボやコンジローマであれば、1回の治療で治癒率は70%、首や体の細かいイボの治癒率は90%です。
イボの治療はウイルスとの戦い
編集部
イボは注射でも治せると聞いたことがあります。
増岡先生
たしかに、手足のウイルス性イボは、抗がん剤の「ブレオマイシン注射」で治療できます。ただし、炭酸ガスレーザーと比較して、「術後の痛みが強い点」と「治癒後に瘢痕や色素沈着を残しやすい点」が見劣りしています。また、1回の施術における治癒率が40%程度であるのに対して、炭酸ガスレーザーが70%なので気になる点ではあります。
編集部
色々な治療法を教えていただきましたが、どのようにイボを見分ければいいでしょうか?
増岡先生
手足のウイルス性イボはウオノメやタコとよく似ており、しばしば混同されます。最大の違いは、ウオノメやタコには血管がないのに対して、ウイルス性イボは血管が豊富であるという点です。そのため、ウイルス性イボは表面を薄く削ると点状の血管が確認できます。ただし、その判別は医師がおこなうものなので、イボができたらまずはご相談ください。
編集部
最後に、読者へのメッセージがあれば。
増岡先生
ウイルス性イボはありふれた疾患ですが、その治療は痛みを伴い、かつ長い期間が必要です。また、放置すると大きくなり、あちこちうつります。そのため、ウイルス性イボ治療の鉄則は早期発見・早期治療です。イボを発見したら速やかに受診するようにしてください。
編集部まとめ
ほくろやイボの除去において、炭酸ガスレーザーは有用であることがわかりました。とくに、小さなほくろや体質による細かいイボに対しては、初手の選択肢となります。また、液体窒素や注射による治療と比較してリスクも低く、治癒率が高いのも炭酸ガスレーザーの特徴です。保険適用なので、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。
医院情報
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アクセス | JR「東京駅」 徒歩3分 |
診療科目 | 皮膚科、美容皮膚科 |