化膿したニキビ、どうやって治したらいい?
思春期の若者から大人まで、多くの人が悩まされているニキビ。放っておいて治ることもあれば、悪化して化膿してしまうこともあります。「化膿したニキビはどう治せばいいのか」「薬局の薬で治せるのか」などの疑問に、大西皮フ科形成外科医院・院長の大西先生が答えてくれました。
監修医師:
大西 勝(医療法人 大美会 大西皮フ科形成外科医院 滋賀大津石山院 院長)
香川医科大学(現・香川大学医学部)卒業。京都大学医学部附属病院形成外科、大阪赤十字病院形成外科などを経て、1997年に大西皮フ科形成外科医院・滋賀大津石山院を開院。その後、2012年に京都四条烏丸院を開院。日本形成外科学会認定専門医、日本臨床皮膚外科学会認定医、日本臨床抗老化医学会認定医など、多数の資格を有する。
化膿したニキビの治し方は?
編集部
まず、ニキビの化膿とはどのような状態を言うのですか?
大西先生
ニキビが炎症を起こして赤くなった状態で「赤ニキビ」とも呼ばれています。症状がさらに進行して、膿が溜まって黄色く見えるようになると「黄ニキビ」とも呼ばれますね。
編集部
化膿したニキビの治療法について教えてください。
大西先生
化膿したニキビは、市販の塗り薬はなかなか治りません。ニキビ自体はもともと「尋常性ざ瘡(じんじょうせいざそう)」という立派な皮膚疾患です。化膿が進むとニキビ跡が傷跡として残ってしまうため、皮膚科の受診をおすすめします。
編集部
皮膚科ではどのように治すのでしょうか?
大西先生
まず、保険治療としては飲み薬と塗り薬があります。塗り薬のアダパレンや過酸化ベンゾイルを中心に、補助的に抗生物質を内服します。また、漢方の内服薬もあります。塗り薬には出来てしまったニキビに塗るもの、ニキビが出来るのを予防するものがあります。保険外治療としてはケミカルピーリングやレーザー治療、トレチノイン治療などがあります。
編集部
市販の塗り薬でも治すことはできるのでしょうか?
大西先生
塗り薬に関しては、薬局や通販での入手も可能です。ただ、塗り薬にもさまざまな種類があります。皮膚科を受診する方が選択肢も豊富で、症状や肌質に適したものを処方してもらえます。このため、基本的に皮膚科を受診していただく方がいいでしょう。飲み薬は、もちろん皮膚科を受診しなければ入手できません。ニキビの飲み薬を通販などで買うのは危険なので、くれぐれも控えてください。
編集部
抗生物質以外の、通常のニキビ向けの市販薬はどうですか?
大西先生
化膿する前の初期のニキビには有効です。しかし、化膿し始めたら抗生物質の入っていない市販薬は効きません。
編集部
化膿したニキビは、潰してはいけないのでしょうか?
大西先生
膿が溜まっている場合、潰した方がいいこともあります。しかし、自己流で潰したり触ったりするのはお勧めできません。傷跡が広がり、くぼみ(クレーター)になってしまうこともあります。このため、自分では触らず、やはり皮膚科を受診していただくのがいいでしょう。
編集部
自然に潰れてしまったらどうすればいいでしょう?
大西先生
この場合はできるだけ清潔に保ち、抗生剤を塗るようにしてください。洗顔と塗り薬が重要です。
保険適用での治療法
編集部
皮膚科の治療では、どのような内服抗生剤を処方するのでしょう?
大西先生
「ミノマイシン」「ルリッド」が代表的です。どちらも、細菌の繁殖をストップさせます。細菌が繁殖するには、タンパク質の合成が必要です。その合成を邪魔することで、繁殖をストップさせる仕組みですね。
編集部
外用薬では、どのような抗生剤を処方するのでしょう?
大西先生
「ダラシンT」「アクアチム」「ゼビアックス」などが代表的です。それぞれにゲル・クリーム・ローションなどのタイプがあります。タイプまで含めていうと、ダラシンTゲル、アクアチムクリーム、ゼビアックスローションなどが特にメジャーなものです。
編集部
抗生剤には、リスクやデメリットはないのでしょうか?
大西先生
「長期間使い続けていると効かなくなる」のがデメリットです。このため、内服期間は1~3カ月にとどめるのが理想です。しかし、症状を抑えることも大事ですので、最終的には医師と相談しながら決める必要があります。
編集部
ニキビ治療で漢方薬を処方することはありますか?
大西先生
「十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)」という漢方薬は、非常に有効です。この漢方薬は保険適用で処方が可能です。同じ十味敗毒湯でも、メーカーによって成分がやや異なるため、当院ではより効果が期待できるメーカーのものをおすすめしています。
保険適用外での治療法
編集部
保険外治療では、どのような選択肢があるでしょう?
大西先生
主にケミカルピーリング、レーザー、トレチノイン外用、イソトレチノイン内服治療、低用量ピルなどがあります。ケミカルピーリングとは、グリコール酸や乳酸などの酸を用いて、皮膚表面の古い角質を除去する治療です。ニキビの場合、毛穴の出口に詰まった角質を剥がすことで、中に詰まっていた皮脂や膿を排出しやすくします。
編集部
イソトレチノイン内服治療とは、どのようなものでしょう?
大西先生
「ビタミンA誘導体」でできた内服薬を飲む治療です。重症なニキビの治療に効果がありますが、副作用が大きいため、適用は慎重にします。
編集部
低用量ピルについても教えてください。
大西先生
ホルモンの分泌を調整する、女性専用のニキビ治療薬です。女性の場合、ホルモンの乱れでニキビが悪化していることがあります。その場合に、ピルが有効です。
編集部
最後に、読者へのメッセージがあれば。
大西先生
病院でおこなえるニキビ治療は、数年前までは非常に選択肢が少ないものでした。たとえばイオウの外用薬やアクアチムクリームなど、限られた選択肢しかなかったのです。しかし、ここ数年で急激に、保険適用の非常にいい薬が増えました。このため、化膿したニキビは自己流で治療せずに、クリニックを受診していただけたらと思います。あるいは、これまで一生懸命通院していて、保険治療に限界を感じている方や、「ニキビは治ったものの、色素沈着やクレーターなどのニキビ跡が気になる」という方もおられるかと思います。このような方々の場合、保険外治療で良い選択肢が多くあるため、それらの治療を受けることも、検討していただくとよいかと思います。
編集部まとめ
初期ニキビは薬局などの薬で治せても、化膿したニキビを自力で治すことは難しいものです。悪化してニキビ跡が残るリスクを避けるためにも、できるだけ皮膚科を受診するようにしましょう。今は保険診療でも優れた治療の選択肢が多くあり、保険外治療まで含めれば非常に多くの治療法があります。ニキビの原因や自身の肌の状態を正しく知るためにも、まず一度皮膚科に相談してみるといいでしょう。
医院情報
所在地 | 〒520-0832 滋賀県大津市粟津町4-7 JR石山駅前近江鉄道ビル3F |
アクセス | 東海道本線(琵琶湖線)「石山駅」南口 徒歩1分 |
診療科目 | 皮膚科、形成外科、美容皮膚科、美容外科 |