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介護老人保健施設ってどんな施設? 特別養護老人ホームとは何が違うの?

 更新日:2023/03/27

老人介護施設には様々なタイプの施設がありますが、みなさんは詳しくご存知でしょうか? 実は、介護保険施設にはそれぞれに役割があり、状況に応じて適切なサービスを選ぶ必要があります。その中でも、介護老人保健施設は在宅復帰のための重要な役割を担っています。今回は介護老人保健施設の具体的なサービス内容とほかの施設との違いについて「介護福祉士」の大久保さんに詳しく伺いました。

大久保圭祐

監修作業療法士・介護福祉士・介護支援専門員
大久保 圭祐(作業療法士・介護福祉士・介護支援専門員)

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総合病院に6年間勤務し、脳神経外科や整形外科のリハビリテーションを中心に、急性期・回復期・慢性期の全ての時期を経験。その後、介護支援専門員の資格を取得して家族と共に介護事業を設立し、居宅支援事業所と訪問介護事業をスタート。代表取締役であると同時に、現場では機能訓練指導員・介護職・ケアマネージャーを勤めプレイングマネージャーとして活躍。現在は、経営業務をメインに監修者やライターとしても活動中。

介護老人保健施設は在宅復帰を目指す施設

介護老人保健施設は在宅復帰を目指す施設

編集部編集部

介護老人保健施設の特徴や役割について教えてください。

大久保圭祐大久保さん

介護老人保健施設は「老健」とも呼ばれ、介護保険が適用される入所施設なので、負担する費用が軽減される特徴があります。入所といっても、長期入院した方などの在宅復帰を目標にした施設で、リハビリを行い身体機能や生活能力の改善を目指し、病院と家の中継地点のような役割があります。そのため、原則としては入居する期間が3~6ヶ月程度に定められています。理学療法士や作業療法士などのリハビリを行う専門職員が在中しており、医師も常勤しているため体調管理などの面でも安心できるのがメリットです。

編集部編集部

入所は誰でもできるのでしょうか?

大久保圭祐大久保さん

残念ながら誰もが入所できる施設ではありません。条件としては、介護認定を受けて要介護1~5と判断された方が対象となります。そのため65歳以上の高齢者であるか、40歳から64歳で特定疾病により介護認定を受けた方に限定されます。また在宅復帰を目的としていることから、基本的には病院を退院する方や健康状態を整えたい方などが利用する介護保険サービスの一つになります。

編集部編集部

具体的にどのようなサービスが受けられるのでしょうか?

大久保圭祐大久保さん

入所している間は、リハビリの専門職による機能訓練が行われ、装具などの福祉用具の検討や、身体の状態や自宅環境に応じたメニューも考えていきます。もちろん身の回りの介護サービスも提供され、安全に生活をしながら日常生活の中でもリハビリにつながるようなサポートを受けられます。退所前には、身体の状態と住宅の状況を加味したリフォームなどのアドバイスもしてもらえるので、安心して家に戻ることができます。また、常勤している医師による医療ケアが受けられ、薬も施設から処方されるため安心です。

特別養護老人ホームとの違いについて

特別養護老人ホームとの違いについて

編集部編集部

では、特別養護老人ホームとはどのような施設なのでしょうか?

大久保圭祐大久保さん

介護保険施設という点では同じなので、似たような施設だと思われている方が多いようですが、実は役割や目的に大きな違いがありますので注意が必要です。介護老人保健施設は在宅復帰を目的としていますが、特別養護老人ホーム(特養)は「終の棲家(ついのすみか)」といわれることもあり、基本的には長期入居や終身利用を目的としています。そのため、日常生活の介護だけではなく、最終的には施設内での看取り対応も可能です。また、家での生活を考える必要がないため、介護老人保健施設に比べると自立にむけたリハビリへの取り組みは少なくなりますが、その分の費用が安く抑えられる可能性もあります。特別養護老人ホームの役割は、さまざまな介護が必要な状態であっても、人生最期の瞬間まで安心して充実した生活ができるよう支援することです。

編集部編集部

サービス内容に違いがあれば教えてください。

大久保圭祐大久保さん

普段のリハビリに関しては、在宅復帰のための機能訓練を行う介護老人保健施設とは異なり、特別養護老人ホームは施設内での生活能力の維持、向上が目的となります。専門職が提供する機能訓練は、身体機能の向上よりも生活に関連するリハビリが中心となるため、トイレ移動や着替えの練習などがメインになるでしょう。日常生活の充実に関しては特別養護老人ホームの方が重視されており、季節行事やレクリエーション、お誕生日会などの催し物も豊富に用意されています。趣味になるような手芸や工作、習字などのプログラムのある施設も多く、さまざまな活動をとおしてリハビリにつなげていくことができます。

編集部編集部

終身利用がしたい場合は誰でも利用できますか?

大久保圭祐大久保さん

残念ながら誰もが利用できるサービスではありません。終身利用が必要な状態の方に向けたサービスであるため、条件としては老健よりも厳しく、原則要介護3~5の方が入居対象となっています。特例で要介護1、2でも利用できる可能性はあるものの、地域によっては高齢者率が非常に高く、数年先まで入居待ちで埋まっているところも少なくありません。人気の要因としては、民間の有料老人ホームなどと比べて費用が安いことや、公的な施設で安心できること、看取りができることなどがあげられます。

介護老人保健施設に入所した方が良いケースとは

介護老人保健施設に入所した方が良いケースとは

編集部編集部

高齢の場合、退院後は誰でも介護老人保健施設への入所を検討した方がいいでしょうか?

大久保圭祐大久保さん

退院時に十分回復することができていれば入所する必要はないでしょう。特に骨折などの外傷や内科的な治療目的の入院などは、退院までに身体機能や体力が回復する場合が多く、入所の必要性は低いかもしれません。しかし、入院期間だけでは在宅復帰に不安を抱える方も多くいますので、心配であれば検討することをおすすめします。

編集部編集部

どのような場合、入所の必要性が高くなるでしょうか?

大久保圭祐大久保さん

病院での処置が終わっても、体力が不十分であったり後遺症が残る病気であったりする場合には、介護老人保健施設への入所の必要性が高いでしょう。特に脳卒中は、麻痺などの後遺症が残る可能性があり、もともとの生活スタイルに対応できない場合があります。住宅改修や家族に介護方法を習得してもらう必要などがあれば、身体面だけではなく環境面が整うまでの居場所として活用することも可能です。また、退院後に特別養護老人ホームや有料老人ホームなどに入所予定の場合でも、安定してできる生活動作を増やすため、リハビリ目的で利用することも生活の質を上げるために重要となります。

編集部編集部

入所したい場合の申し込み手順を教えてください。

大久保圭祐大久保さん

まずは、条件を満たすために要介護認定を受けなければなりませんが、退院に向けてどのような準備が必要かなどを踏まえて、病院のソーシャルワーカーや市町村の窓口に相談しておくことをおすすめします。要介護認定が1以上であれば入所申込みとなり、入院中であれば病院に関連した介護老人保健施設を選ぶことも可能です。その後、本人と家族をまじえた面談が行われ、状態などもあわせて確認を行います。提出書類には、申込書だけではなく病院側から発行される診療情報提供書や健康診断書などが必要になります。そして入所判定が施設で行われ、入居の許可がおりれば契約し入所となります。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージがあれば。

大久保圭祐大久保さん

介護老人保健施設は在宅復帰を支える重要な役割があり、安心した生活を送りながら最適な機能訓練が受けられる介護保険サービスの一つです。状態を回復させることは大切ですが、年齢や病気によっては身体機能の改善に限界があることも考えておかなければなりません。現実的に、どこまで回復可能なのか、どの程度になれば在宅生活が送れるかなども、医師やリハビリ専門職員と確認しながら在宅復帰を目指していきましょう。

編集部まとめ

介護老人保健施設は、要介護1以上で現状では自宅での生活が難しい方に対して、在宅復帰を支援する施設であることがわかりました。入所することで、医師による健康管理が行われ、リハビリ専門職員による充実した機能訓練が受けられるので、安心して在宅復帰を目指すことができるでしょう。利用の必要性が自己判断できないときには、ソーシャルワーカーや市町村窓口に早めに相談しておくことも大切です。

この記事の監修介護福祉士