医師のプロフィールにある「専門医」ってどのような資格なの?
医師のプロフィールで「専門医」という肩書を目にすることがしばしばあります。「専門医とはどんな資格なのか」「専門医の先生であれば信頼できるのか」といった疑問を抱えている人も多いでしょう。今回はそんな疑問に、複数の学会で専門医の資格をもち、専門医を指導する指導医でもある、北里大学医学部教授の武田先生を取材しました。
監修医師:
武田 啓(北里大学医学部形成外科・美容外科学主任教授/自由が丘クリニック 特別外来)
産業医科大学卒業。Brigham and Womens病院形成外科留学を経て、横浜市立港湾病院(現・横浜市立みなと赤十字病院)形成外科医長、横須賀共済病院形成外科部長等を歴任。2014年より現職。自由が丘クリニックでは2011年より毛髪医療外来を開始。医学博士。日本形成外科学会理事・専門医、指導医、日本美容外科学会専門医、日本創傷外科学会専門医。
専門医は”スーパードクター”を指す資格ではない
編集部
医師のプロフィールなどに記載されている専門医とは何でしょう?
武田先生
専門領域の知識・技量・経験を総合的にもつ医師のことですね。専門医制度では「それぞれの診療領域における適切な教育を受けて十分な知識・経験を持ち、患者から信頼される標準的な医療を提供できる医師」と定義されています。いわゆる「神の手を持つ医師」や「スーパードクター」を意味するものではありません。
編集部
どのような学会に専門医が存在するのですか?
武田先生
日本内科学会、日本外科学会など主な学会には専門医制度があります。クリニックなどで標榜されている診療科には、大体専門医制度があると思っていただいて大丈夫です。
登録医・認定医・専門医・指導医に違いとは
編集部
専門医のほかにも、学会の資格はいろいろありますよね。
武田先生
はい。人数が多いものから順に、登録医、認定医、専門医、指導医となります。登録医とは、一般には学会に登録すればなれる「学会員」といえますね。その分野の医師であれば誰でもなれることがほとんどです。
編集部
認定医とは何でしょう?
武田先生
「学会が認定する水準に達している医師」です。現在は認定内科医があります。以前は形成外科も認定医でしたが専門医に更新されていますね。レベルとしては登録医と専門医の中間的な資格といえるかもしれません。
編集部
指導医についても教えてください。
武田先生
文字通り「専門医を育成するため指導する医師」です。専門医制度のプログラムの中では地域や施設に適正な配置が求められます。学会が認定する資格としては、一般に最も取得の難しいものです。
編集部
専門医は、どのような条件でなれるのでしょう?
武田先生
基本的には、①学術大会・講演会への出席歴、②診療年数、③治療実績、④研究実績、⑤筆記・口頭試験になります。私が所属する日本形成外科学会を例にすると、下記の6つが条件になります。
(1)医師歴6年以上
(2)臨床研修2年、形成外科研修通算4年(所定の施設にて)
(3)4年以上連続して、学会正会員である
(4)2とは別に、所定の研修を終了している
(5)所定の手術の記録を持っている(300症例の手術リスト・20症例の図を伴う手術・10症例の、所定の病歴要約)
(6)学会主催の講習会を4回以上受講している
編集部
指導医になる条件も教えてください。
武田先生
指導医も「専門医の基準がさらに厳しくなる」というイメージです。わかりやすい例は「専門医の資格が複数必要」というものです。たとえば日本形成外科学会の場合、下記から複数の分野指導医と形成外科学会で専門医になる必要があります。
【分野指導医認定】
①:日本手外科学会
②:日本美容外科学会(JSAPS)※JSAPS 「教育専門医」も可
③:日本創傷外科学会
④:日本頭蓋顎顔面外科学会
⑤:日本熱傷学会
【特定分野指導医認定】
①:皮膚腫瘍外科分野指導医
②:小児形成外科分野指導医
③:再建・マイクロサージャリー分野指導医
治療は専門医に受けるべきか
編集部
治療は専門医の先生から受ける方がいいのでしょうか?
武田先生
平均すれば、専門医の方が実力のある医師が多いものですが、最終的にはケースバイケースです。たとえば外科系では専門医がベテランで、すでに手術の現場を離れているケースもあります。高度な手術は、実際に現役でおこなっていることが技術の維持につながります。
編集部
というと、現場にいる若手の先生の方が信頼できるのでしょうか?
武田先生
いえ。専門医の資格を持っていれば、若手もベテランも一定以上の技術レベルが保たれているといえます。現場を離れていなければ、ベテランの経験は当然プラスに働きます。
編集部
呼吸器や循環器などの専門医の場合、内科全体のことはわかるのでしょうか?
武田先生
もちろんです。内科でも外科でも、専門医はそのジャンル全体に精通しています。全体に精通した上で、さらに個別の専門分野をもっています。
編集部
結論として、専門医の先生を受診するのが一番良いのでしょうか?
武田先生
今回専門医についてお話しましたが、「専門医かどうかは基準のひとつ」だと考えます。とくにかかりつけ医を探す際、患者さんは様々な観点で主治医を見つけるかと思います。「そのドクターやクリニック全体の信頼性で判断する」という方も多いでしょう。情報の多い時代だけに「専門医」の資格の意味も含め、正しい情報を得ていただくことが重要になってくると思います。
編集部
最後に読者へメッセージがあれば。
武田先生
2018年4月に新専門医制度という制度がスタートしました。新制度では、各学会ではなく、日本専門医機構という第三者機関が専門医を認定するので、信頼性を担保できるというものです。現在では医学部卒業生の9割が、この制度で研修を始めております。旧制度の専門医も明確な基準の元、認定しておりますので、新制度の専門医が優れているということではありませんが、第三者機関で基準を統一し、より信頼性を担保されると思います。
編集部まとめ
「特定の学会の専門医の資格をもっているか」は、医師の信頼性をはかる上で有力な基準の1つです。ウェブ上の口コミなどが信用できないときは、専門医の資格の有無を1つの手がかりにするのもいいでしょう。最終的には、直接医師と話した印象なども含め「総合的に信頼できるか」を大切にしてください。
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