「ヒアルロン酸注射」の効果やリスク、副作用を医師が解説!
しわやたるみ治療の代表格となりつつある「ヒアルロン酸注射」。専門家に重宝されるからには、それなりの理由があるのでしょう。ヒアルロン酸ならではの効果なのか、副作用リスクなどへの安全性なのか。人気の理由を、「シャルムクリニック」の櫻井先生に伺ってみました。
監修医師:
櫻井 直樹(シャルムクリニック 院長)
東京大学医学部医学科卒業。東京大学医学部附属病院皮膚科入局後、皮膚科や美容、形成外科の領域で勤務医や医長として経験を積む。2011年、生まれ育った千葉県松戸市に「シャルムクリニック」開院。地域に喜ばれる医療を実践している。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医、日本レーザー医学会認定レーザー専門医。日本美容外科学会(JSAS)、日本美容外科学会(JSAPS)、日本美容皮膚科学会、日本抗加齢医学会、日本小児皮膚科学会、日本性感染症学会ほかの各会員。
ヒアルロン酸注射の効果
編集部
ほうれい線対策などで、ヒアルロン酸注射を推奨する医院が多いですよね?
櫻井先生
そうですね。ヒアルロン酸の大きな特徴は、ほかの注射によって溶解できることです。不満足や万が一の事態を素早く収拾できるため、重宝されているのではないでしょうか。また、牛由来が多いコラーゲンなどと比べて、アレルギーリスクも軽減されています。
編集部
気になる“効果”の点はどうなのでしょうか?
櫻井先生
ヒアルロン酸は、周囲の水分を取りこむことで、一定のボリュームを保とうとします。なおかつ、30年以上の歴史を持ち、ある程度の安全性も担保されています。一言で言えば、患者さんと医師の双方にとって「使い勝手のいい物質」なのではないでしょうか。
編集部
つまり、しわやたるみの改善に有効であると?
櫻井先生
へこんでいる部分を盛り上げる効果はあります。ですから、しわや目の下などのへこみには有効でしょう。しかし、重力によって下がってしまった皮膚を“持ち上げる”効果は十分にはありません。頬のたるみなどには、別の治療方法を検討すべきです。総じて、1つの治療方法で完結するケースは少ないとお考えください。
編集部
同じような注射で、ヒアルロン酸以外の選択肢はあるのですか?
櫻井先生
あります。一例としては、自身の脂肪を注入する方法です。自分の組織ですから、一度、定着してしまえば長期間持ちます。ただし、定着率の低さが問われますね。そう考えると、「使い勝手のいい」ヒアルロン酸の優先順位が必然的に高まってきます。
編集部
なるほど。そうなるとヒアルロン酸の持続効果に期待してしまいます。
櫻井先生
誤解の多い部分ですが「持続する」ということは、「異物として残る」ということなのです。異物に対するアレルギーや炎症を考えると、「吸収されて、いつかはなくなる」ことも、1つのメリットといえるでしょう。「持ち」に絶対的な価値を求めないようにしてください。その意味でも、注射溶解が可能なヒアルロン酸は、比較的安全な物質です。
ヒアルロン酸注射の副作用やリスク
編集部
比較的安全とはいえ、失敗例も散見します。
櫻井先生
例えば、「だま」のように残る症例ですよね。表情筋の位置などの解剖学的な知識に乏しいと、仕上がりが不自然になるでしょう。また、パンパンに張っている状態を「ヨシ」とするのかどうか、患者さんと医師の美的センスも問われます。双方が納得すれば、失敗とはいえません。事前に、症例写真などを確認してみてください。
編集部
医学的な副作用についてはどうでしょうか?
櫻井先生
腫れや赤み、かゆみなどは頻回ではないにしても起こり得ます。一方で、注射による内出血は、「やってみないとわからない」ところがあります。事前にご説明するものの、リスクが内在することをご了承ください。
編集部
人による副作用は、事前にわかるのですか?
櫻井先生
アレルギーが懸念されるコラーゲンなどは、事前にテストできます。しかし、なにかあったときに溶かせるヒアルロン酸は、そこまで留意しないケースがほとんどでしょう。また、誤って血管内にヒアルロン酸を打つと、血管が閉塞してしまいかねません。血管閉塞を起こしやすそうなケースには、カニューレという体の中に入れる特殊な管を使って施術しています。
編集部
ほかにも注意点があったら、教えてください。
櫻井先生
繰り返しになりますが、「持ち」の観点から、非吸収性の素材を勧めてくる医院があります。「溶けないヒアルロン酸」といった、あり得ない宣伝すら散見します。あまり「1回でずっと」に期待せず、定期的な施術を安全第一で進めていきましょう。
ヒアルロン酸注射をする際の注意点
編集部
受診先を選ぶ際のコツも知りたいです。
櫻井先生
「いい話だけではなく、悪い話もしてくれるところ」でしょうか。例えば、先ほどの内出血リスクですよね。また、美的センスは個人によって違うため、症例写真を参考にしてください。
編集部
医師が強く推してきて、断りきれないという話を聞きます。
櫻井先生
やはり、説明と施術をきちんと分けている医院が好ましいですよね。そもそも、「1つの治療方法で完結するケースは少ない」はずです。特定の治療方法だけを推してくるとしたら、なにかしらのバイアスや経験不足が加わっているのではないでしょうか。
編集部
医院による違いを念頭に置いて、セカンドオピニオンを受けるべきでしょうか?
櫻井先生
「しわやたるみの改善」が先にあって、「手段」は後です。ヒアルロン酸を使わないという判断も、当然にしてあり得ます。1つ言えるとしたら、多くの治療選択肢を持っている医療機関ほど、良好な結果が得られやすいということでしょうか。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
櫻井先生
使い勝手に優れているヒアルロン酸ですが、それだけで全てが解決するとは限りません。今回の「しわやたるみを改善できるの?」という問いに対しては、当たり前かも知れませんが、「症例による」を結論とさせてください。
編集部まとめ
利便性の高いヒアルロン酸とはいえ、重力の影響を断ち切ることはできません。櫻井先生によると、重力によるたるみに関しては、「仰向けになって鏡をみたときの容姿」以上のことができないそうです。やはり、スレッドリフトなどのほかの手段が必要とされるのでしょう。それにしても、「持ち」に意外な阻害要因が隠れていましたね。「異物を体内へ入れ続けるとどうなるか」という発想へ、切り替えてみてください。
しわ・たるみに関する症状についてもっと詳しく知りたい方は、こちらの記事を参照してください。
医院情報
所在地 | 〒270-2223 千葉県松戸市秋山68-5 |
アクセス | 北総線「秋山駅」 徒歩3分 |
診療科目 | 皮膚科、美容皮膚科、形成外科、美容外科、アレルギー科 |