健康診断や人間ドックなどの検査で、気をつけるべきポイントや受ける目的を教えて!
健康診断や人間ドックなどの検査を受ける際に、医療機関から前日の過ごし方についての説明があります。もし、注意を守らなかった場合、検査結果にどのような影響を及ぼすのでしょうか。私たちの体を調べる検査の目的や注意点、受ける頻度について、「看護師・保健師」の高橋さんに解説していただきました。
監修看護師・保険師:
高橋 真奈美(株式会社ファースト・ナース所属 訪問看護師・保健師)
前橋東看護学校卒業。群馬県立県民健康科学大学(旧・群馬県立医療短期大学)地域看護学専攻を経て、看護師・保健師免許を取得。その後、健康診断センター、国民健康保険団体連合会勤務中に保健活動を考える自主的研究会所属。地域包括支援センターのセンター長を経験。現在は訪問看護師として、利用者様の多様な疾病の重症化予防のため毎日奔走している。
普段の生活で健康かどうか知ることが大事
編集部
そもそも、健康診断の目的ってなんですか?
高橋さん
健康診断は、現在の健康状態を調べるためにあります。普段通りの生活をして、自分が健康かどうかを知ることが大切だと思います。健康診断の前日、必死にダイエットをする人もいますが、食生活は2か月前から節制しないと数値に効果は現れません。そのため、前日だからといってヘルシーな食事にしても、あまり意味はないと思います。
編集部
検査前日だからといって、無理に変えることはないと?
高橋さん
もちろん、控えていただきたい行動はあります。例えば、前日の脂っこい食事や飲酒は、中性脂肪の数値が上がり、正しい測定ができなくなってしまいます。また、前日の喫煙も、血管が収縮して高血圧の原因になり得ます。レントゲン検査に影響を及ぼすこともあるので、前日の喫煙は控えてください。
編集部
ほかにも、前日の注意点があれば教えてください。
高橋さん
前日に激しい運動をすると、血清クレアチニンの上昇や尿蛋白陽性など、検査に影響を及ぼす可能性が考えられるので、体を動かすならほどほどにしておきましょう。ほか、受診先から指示された前日の食事時間については、きちんと守るようにしましょう。
編集部
受診の当日に気をつけることはありますか?
高橋さん
受診先から指示をされた「朝から絶食する」、「水分摂取の仕方」などの内容は守りましょう。これらを守らないと、検査ができなくなったり誤った検査結果が出たりしてしまうことがあります。また、受診中に寝不足や飲酒による脱水症状、ストレスなどで気分が悪くなる人もいらっしゃいます。もし、そのような心配や経験がある人は、事前に相談してください。ベッドで横になりながら採血してくれるといった工夫をしてくれるクリニックも多いと思いますよ。
編集部
受診後についてはどうでしょうか?
高橋さん
慣れない採血などの検査に、心身の負担を生じている場合もあるので、受診後15分くらいは休憩していくことをおすすめします。大丈夫そうであれば、水を1杯飲んで、ゆっくりと帰るといいと思いますよ。また、おなかが空いている人も多いと思いますが、まずは健診会場で水分摂取をするよう心がけましょう。1日を通していつもより500mlくらい多めに飲みましょう。食事については、受診後に食べても大丈夫ですが、バリウムを飲んだ場合、消化の悪い食べ物は控えてください。バリウムが排出しにくくなるため、検査日はアルコールも避けましょう。
自分にあった健康診断を受けよう
編集部
健康診断以外にも様々な検査がありますよね?
高橋さん
人間ドックや特定健診、成人病健診などのことですよね。人間ドックは、自分の体の状態をより細かく調べるためにおこないます。一般的な健診にプラスして、オプションで自分の気になるところを診てもらうことができます。特に人間ドックのがんの血液マーカーなどは保険適用外の自費診療扱いなので、それなりに費用がかかります。
編集部
特定健診はどうですか?
高橋さん
特定健診は、40歳から74歳までの被保険者が対象の健康診査です。40歳を越えると生活習慣病になる人が増加するため、早期に予防または治療することを目的に、国が保険者に義務づけたものです。国が定めたものなのでリーズナブルに受けることができ、いくつかの検査の結果を見て、総合的に体の状態を判断します。
編集部
成人病健診は、また別物なのでしょうか?
高橋さん
成人病健診に関しては、成人になるとかかりやすい病気を、早期発見・治療するための健診です。「成人病=生活習慣病」と捉えていいと思います。胃がん、大腸がん、乳がん、子宮がん、前立腺がんなど、年齢を重ねると増えてくる病気がないかも調べることもそうです。これらは特定健診にプラスして受けることができ、自分で受診したい項目を選ぶことができます。
若い頃から年に一度受ける習慣を
編集部
こうした検査は、体に異常を感じなくても受けた方がいいですか?
高橋さん
むしろ、異常がないからこそ受けるのが、検診・健診です。自分が健康だと思っていても、実際に体の中がどうなっているかはわかりません。自己管理のために、1年に一度を目安に受けるのがいいと思います。
編集部
年齢によって、検査を受けるタイミングが変わりそうですね。
高橋さん
そうですね。人間ドックは、健診ではおこなえない脳や口腔がんの検査などをすることができますが費用が高いため、若いとなかなか受けられない人も多いのではないでしょうか。とくに体に違和感がない場合は、人間ドックは定年退職後でもいいと思います。特定健診は40歳から、成人病健診は35歳以上から無料で受けられるケースがあるので活用してみてください。1年に一回を目安に、若い頃から検査を受ける習慣を身につけておくとよいでしょう。また、女性に限りますが、乳がん検診にあるマンモグラフィと超音波検査は、検出するのを得意とする病気が違います。1年ごとに交互で受けるのがおすすめです。
編集部
最後に、読者へのメッセージがあれば。
高橋さん
思い切り遊んだり、楽しく過ごしたりするためには、健康な体でいることがなにより大切です。若い頃から自分の体をメインテナンスしておくと、年齢を重ねても病院に行く機会が少なくて済み、医療費の負担も抑えられます。「年に一度、自分の体を調べることで、なにか病気が見つかっても早期発見して治療に努める」、これが後々の人生に響いてくると思います。
編集部まとめ
各種がん検診や人間ドック、特定健診などは、それぞれ受診する目的が異なります。また、検査を受ける際は、前日・当日・受診後に注意点があるので厳守しましょう。前日に普段と異なる生活をすると、誤った結果が出ることもあります。「見つかるはずの病気が見つからない」なんてことがないように、普段通りの生活をして検査に臨みましょう。そして、年に一度は検診や検査を受け、自分の健康状態を把握することをおすすめします。