もし、薬を飲み忘れてしまったら、2回分をまとめて一度に飲むべきですか?
薬を飲み忘れてしまうことは、誰にでもあることです。特に昼食後や忙しい時、飲み忘れてしまう人も多いのではないでしょうか。その場合、飲み忘れた分をまとめて一度に飲んだ方がいいのか。 薬を飲み忘れた時の正しい対処方法について、「薬剤師」の森本さんに解説していただきました。
監修薬剤師:
森本 夏子(薬剤師)
武庫川女子大学薬学部卒業。武庫川女子大学大学院薬科学専攻修士課程修了。薬剤師として沖縄から北海道まで様々な薬局に勤務。シンガポールでは現地の日本人の健康を守るために日系クリニックの一員として従事。インド、タイ、アフリカなどで医療ボランティアのチームの一員として活動した後、現在は薬剤師の知識を活かし医療ライター、編集者、講師として活動中。
2回分を一度に服用するのは危険
編集部
薬を飲み忘れてしまいました。あとで2回分まとめて飲んだ方がいいですか?
森本さん
基本的に薬を飲み忘れた時は、一度に2回分を飲まないようにしましょう。薬が効きすぎて、副作用の出る危険性が高くなってしまいます。薬を飲み忘れたからといって、まとめて飲むことはかえって体に悪影響です。
編集部
では、いつ飲み忘れた分を服用すべきでしょうか?
森本さん
朝1回服用の薬を飲み忘れた場合、その日のうちに思い出したら、その時に1回分を飲むようにしましょう。夜1回服用の薬を飲み忘れた場合は、次の日の夜から飲むのが適切です。週1回服用の薬を飲み忘れた場合、次回服用日が近い時は飲み忘れた分は飲まずに、次の服用日に1回分を飲むようにしましょう。絶対に、2回分を一度に飲まないでください。
編集部
1日に複数回服用する薬の場合は、どうでしょうか?
森本さん
薬の作用が食事に関係するかどうかで変わってきます。薬の作用が食事に関係のない場合のみ、1日3回であれば4~6時間、1日2回であれば6~8時間、間隔を空けて飲んでも問題ありません。また、痛み止めなどの症状がある時に飲む頓服(とんぷく)薬は、4時間程度空ければ2回目を飲むことができます。しかし、薬によっては空ける時間が決められていることもあるので、医師や薬剤師に確認が必要です。
編集部
飲み忘れたり、飲む回数を減らしたりすると、体にどんな影響がありますか?
森本さん
例えば抗生剤は、薬を飲むことで体内の血中濃度を高めて殺菌効果を示す濃度依存型のものと、菌に触れる時間が長くなることで殺菌作用のある時間依存型があります。飲み忘れや飲む回数を減らすことで殺菌効果が得られず症状が長引いたり、耐性菌が出て抗生剤が効かなくなったりすることがあるので注意が必要です。
服用するタイミングに注意すべき薬の種類
編集部
特に気を付けるべき薬の種類はありますか?
森本さん
例えば「糖尿病」の治療薬のように、次回服用予定日の1日前でも、気がついた時に1回分を服用した方がいい薬もあります。必ず薬を受け取る際に、飲み忘れた場合の対処方法を薬剤師に確認しましょう。
編集部
ほかにも、気を付けるべき薬の種類があったら教えてください。
森本さん
代表的な月1回服用の薬に、起床時、かつ朝食前に飲む「骨粗しょう症」の薬があります。もし、飲み忘れに気がついたら、その日には飲まずに、翌日の起床時、朝食前に服用するようにしてください。飲み忘れに気がついたのが、すぐであれば次回分は予定通りに飲んでも問題はありません。しかし、次回予定日が向こう1週間以内であれば、飲み忘れた分は服用せず、次回予定分から飲むようにしてください。
編集部
ちなみに、漢方薬はどうでしょうか?
森本さん
食前の服用指示がある漢方薬を飲み忘れる、という話をよく聞きます。漢方薬は毎日きちんと飲むことが重要とされていて、食前、または食間(食事の2時間後)の空腹時に飲むと効果があると言われています。時間をずらしてもかまわないので、指示通り決められた回数を飲むようにしましょう。
飲み忘れを防ぐための工夫
編集部
飲み忘れを防ぐためのアドバイスがあればお願いします。
森本さん
毎日飲む薬であれば、1日ごとにまとめて保管するのが有効です。週1、月1回と決まった日に飲む薬であれば、カレンダーに印をつけるのもおすすめです。就寝前に服用する薬であれば、ベッドサイドに置いておくのもいいと思います。
編集部
それでも忘れてしまう場合の対処方法はありますか?
森本さん
それでも飲み忘れが多かったり、種類が多すぎてどれを飲めばいいのか分からなくなったりする場合は、薬の一包化がおすすめです。一包化とは、朝・昼・夕と用法ごとに1つの袋にまとめることです。加えて、名前や服用する日時の印字も可能です。ただし、処方せんには医師の指示が必要なので、お薬の一包化を希望する場合は、医師に相談しましょう。
編集部
ほかにもおすすめの管理方法があれば教えてください。
森本さん
薬の服用時間になるとアラームで知らせてくれる「お薬アラーム」などのスマートフォンアプリを活用してはいかがでしょうか。ほかには、カレンダー形式で日付や曜日、タイミングごとに薬を分ける「お薬カレンダー」を使うのもいいと思います。服用するタイミングごとにポケットがついているので、そこに薬を入れて管理することができておすすめです。
編集部
最後に、読者へのメッセージがあれば。
森本さん
薬を飲み忘れた時は、2回分を一度に服用しないということを覚えておいてください。対処方法がわからない場合は、処方された医院や薬をもらった薬局に問合わせをするようにしましょう。
編集部まとめ
薬を飲み忘れた場合、2回分を一度に飲まないのが重要であるということが分かりました。服用回数やタイミング、薬の種類などで注意すべきポイントが変わります。また、飲み忘れ防止のための様々なアプリやツールが充実しているので、自分なりに工夫して活用してみてはいかがでしょうか。それでも不安な場合は、医師や薬剤師に確認するのが確実です。