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薬の効果に個人差がある理由を薬剤師が解説 ポイントは遺伝にあった

 更新日:2023/03/27
薬の効果に個人差がある理由を薬剤師が解説 ポイントは遺伝にあった

「この薬、あまり効いていないんじゃない?」そう感じた経験のある方は少なくないのではないでしょうか。薬の効果には個人差があると言われていますが、なぜ同じ薬を服用しても、人によって効いたり効かなかったり、副作用が出たり出なかったりするのでしょうか。今回は、薬剤師の松田さんに薬の効果が出る仕組みについて、話しを伺いました。

松田 萌香

監修薬剤師
松田 萌香(薬剤師)

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福岡大学薬学部薬学科卒業。卒業後、国内大手製薬会社にて5年間勤務し、MR、管理薬剤師、学術、新人教育等多数経験を積んだ後、調剤薬局にて薬剤師として勤務。現在はIT企業に勤務しながら、フリーライターとして活動中。

薬はどのように吸収されるのか

薬はどのように吸収されるのか

編集部編集部

飲んだ薬は一体どうやって吸収されるのでしょうか?

松田 萌香さん松田さん

口から入った薬は胃を通過し、腸で吸収されます。その後、肝臓で代謝を受け、血液へ移行されます。その後、血流に乗って移動し毛細血管を通り抜け、体全身へ運ばれていきます。

編集部編集部

では、吸収された後はどのように効果を発揮するのですか?

松田 萌香さん松田さん

血液へ移行した薬はその薬の標的組織に到達すると、細胞の表面にある受容体という部分と結合します。その後、細胞反応を起こし効果が発揮されます。

編集部編集部

薬の効き方に個人差があるのはどうしてですか?

松田 萌香さん松田さん

薬の吸収速度や代謝、排泄のされ方は人それぞれです。その中でも、薬を代謝する役割を担っている代謝酵素には遺伝的、また年齢や性別で個人差があると言われており、薬の効果が人によって違う要因となっているのです。

薬の効果に影響を与える要因

薬の効果に影響を与える要因

編集部編集部

「代謝酵素は遺伝する」とはどういうことですか? 詳しく教えてください。

松田 萌香さん松田さん

代謝酵素には遺伝子多型というものがあります。遺伝子多型とは、遺伝子を構成しているDNA配列の個体差のことです。遺伝子多型により、生まれつきある代謝酵素を持っていなかったり、持っていたとしてもうまく働いていなかったりする場合があるのです。また、遺伝子多型には人種差があると言われており、同じ代謝酵素でも、白人は多く持っているですが私たちアジア人では少ないといった場合もあります。

編集部編集部

遺伝といった先天的要因以外にもあれば教えてください。

松田 萌香さん松田さん

喫煙により、薬を代謝する代謝酵素が活性化されるため、薬が効きにくくなる場合があります。また、アルコールは代謝酵素を活性化させる効果があるため、薬の効果が弱くなることがあります。ただし、長年の飲酒により肝機能が低下している場合には、薬が代謝できず、効果が強くなることもあります。いずれにせよ、薬を服用する際には喫煙や飲酒は控えることをお勧めします。

編集部編集部

薬によって服用タイミングが異なるのは効果に影響があるからなのでしょうか?

松田 萌香さん松田さん

そうですね。薬は食事により影響を受ける場合があります。薬によっては、その設計上、食事の影響で吸収が遅くなったり、吸収がよくなったりする場合があります。食事の影響で吸収が遅くなる場合には食前に、食事により吸収が良くなる場合には食後に服用することで、その薬が持つ本来の効果を発揮しやすくなります。

薬の効果を高めたり打ち消したりする「薬物相互作用」

薬の効果を高めたり打ち消したりする「薬物相互作用」

編集部編集部

その他、薬の効果に影響することがありましたら教えてください。

松田 萌香さん松田さん

薬同士の組み合わせにより、その薬の効果を強めたり、弱めたりすることがあります。これを薬物相互作用と言い、新たな副作用が生じることもあります。また、薬同士の影響だけではなく、食事との組み合わせにより薬物相互作用を引き起こす場合もあります。

編集部編集部

どういった場合に薬物相互作用が起こりやすくなりますか?

松田 萌香さん松田さん

飲む薬の種類が増えると、薬物相互作用も増えると考えられています。高齢者では色々な疾患を合併している場合が多く、どうしても薬の種類が多くなりがちです。昨今の高齢化社会では、6剤7剤と多くの薬を服用しているお年寄りも多いため、薬の飲み間違いなどがないよう、病院や薬局、ご自宅でのサポートが重要です。

編集部編集部

薬物相互作用を減らすにはどうしたら良いですか?

松田 萌香さん松田さん

市販薬や、サプリメントなどを服用する場合はあらかじめ医師や薬剤師へ相談したほうが良いでしょう。また、違う病院で薬をもらうことがある場合、知らず知らずのうちに同じ成分の薬が重複して処方されているケースもあるのです。なので、今自分が飲んでいる薬をしっかりと把握、確認してもらうためにも薬手帳は必ず病院や薬局へ持参することをお勧めします。

編集部まとめ

薬の効果が人によって違うのに、遺伝も関係しているとは驚きでした。とはいえ、病院でもらう薬は医師がしっかり診断のうえ、患者さんの状態に合った薬を処方してくれています。用法・用量をしっかり守って服用することや、何か気になることがあれば自己判断する前に、医師や薬剤師へ相談することが大切ですね。

この記事の監修薬剤師