子どもが薬を飲むのを嫌がる…どう対処すればいいの?
子どもが薬を嫌がって、飲ませるのに一苦労した経験はありませんか? 子育てをする上でこうした問題に直面しますが、一体どのように対処すべきなのでしょう。今回は、小児科の門前薬局で勤務経験のある「薬剤師」の森本さんが、上手な薬の飲ませ方について解説してくれました。
監修薬剤師:
森本 夏子(薬剤師)
武庫川女子大学薬学部卒業。武庫川女子大学大学院薬科学専攻修士課程修了。薬剤師として沖縄から北海道まで様々な薬局に勤務。シンガポールでは現地の日本人の健康を守るために日系クリニックの一員として従事。インド、タイ、アフリカなどで医療ボランティアのチームの一員として活動した後、現在は薬剤師の知識を活かし医療ライター、編集者、講師として活動中。
薬を上手に飲ませるために注意すべきポイント
編集部
子どもが薬を嫌がって、飲んでくれません……。
森本さん
重要なポイントは、「薬を飲むことで鼻水や咳などの症状がよくなる」と伝えることです。「薬を飲む=元気になる」ということを伝えた上で、飲ませるようにしましょう。また、薬が飲めたら褒めてあげることも大切です。
編集部
子どもが好きなジュースと一緒に飲ませてもいいですか?
森本さん
基本的には水、またはぬるま湯で薬を飲ませるように心がけましょう。ジュースに含まれる糖分が原因で、肥満やむし歯につながる可能性が考えられるので、できるだけジュースで服用するのは控えてください。例えば、1日3回服用の薬を、3回すべてジュースで飲ませるのはやめましょう。
編集部
薬を上手に飲ませるタイミングや方法はありますか?
森本さん
新生児や乳児の場合は、母乳やミルクをあげるまえに薬を飲ませてください。数滴の水を粉薬に垂らして、練って団子状にしたものを頬の内側に塗り付けたり、少量の水に溶かして哺乳瓶の乳首やスポイトに塗ったりする方法などがおすすめです。
編集部
ある程度、育ってきた幼児の場合は?
森本さん
幼児の場合は、食後でも構いません。ほとんどの薬は、食事に関係なく服用できます。もし、食後に飲めなかった場合は、1日3回なら4~6時間、1日2回なら8~12時間空けての服用も可能です。また、あまり食後にこだわらず、子どもの飲みやすい時間に合わせるのがいいと思います。ただし、食事に関係する薬や時間が決められた薬は、処方された通りに服用してください。
編集部
色々と試しても飲んでくれない場合、どうすればいいのでしょうか?
森本さん
薬の形状を変える工夫をしてみてはいかがでしょうか。子どもの飲み薬の剤形は大きく分けて、「シロップ」、「粉薬」、「錠剤」の3種類です。例えば、粉薬がどうしても飲ませづらい場合、薬によってはシロップに変更することも可能です。また、錠剤の場合も粉薬に変更することもできます。しかし、粉薬にすることで服用する量が多くなる場合もあるので要注意です。大人用の薬はほとんど錠剤やカプセル剤なので、将来のためにもある程度の年齢になったら、医師と相談しながら錠剤に変更していくことをおすすめします。
子どもが嫌がらない飲ませ方を知る
編集部
おすすめの飲ませ方はありますか?
森本さん
どうしても粉薬を嫌がる時のおすすめの飲ませ方は、子どもが好きなジュースや甘い食べ物などに混ぜる方法です。ただし、酸味のあるものと混ぜると苦味が出てしまう薬もあるので、注意が必要です。また、シロップの場合、基本的に甘いので問題ないことが多いですが、甘味が苦手であれば、飲んだ後すぐに水を一口飲んでください。錠剤は1錠ずつ、半分に割ってもいい薬であれば、割って小さくしてから飲む方法がおすすめです。
編集部
混ぜると飲みやすくなる飲食物を教えてください。
森本さん
リンゴジュースやオレンジジュース、混ぜても色が変わりにくいブドウジュースもいいと思います。ほかには子どもが好きなバニラアイスクリーム、ゼリー、プリン、粉末のミルクココアなどです。また、薬を飲みやすくするために開発された、薬用ゼリーもおすすめです。ただし、先述したように糖分を摂取しすぎると体に悪影響なので、可能であれば水かぬるま湯で飲んでください。
編集部
ほかにも、飲ませやすい工夫方法があれば教えてください。
森本さん
プリンやゼリーなどは混ぜるだけだと苦味が表面に出てしまうことがあるので、サンドイッチ方式がおすすめです。サンドイッチ方式とは、プリン、薬、プリンの順でスプーンの上に乗せて、そのまま食べてもらう方法です。また、甘いものが苦手な子どもへの対処方法は、海苔の佃煮やコーンスープ、トマトジュースと牛乳を混ぜたものと一緒がおすすめです。
編集部
逆に混ぜてはいけない飲食物はありますか?
森本さん
薬によっては、酸味のある食べ物と混ぜることで苦味が出るものもあります。例えば、子どもの風邪でよく処方される「クラリスロマイシン」は、オレンジジュースやスポーツドリンク、ヨーグルト、乳酸菌飲料などと一緒に飲むと苦味が強く出てしまいます。酸味が粉薬のコーティングをはがしてしまい、苦味が表に出てきてしまうからです。水、またはアイスクリームやプリンなどで服用してみましょう。
吐き出してしまった時の対応
編集部
薬を飲んでくれたものの、吐き出してしまいます。
森本さん
子どもの胃は大人よりも小さく筒のような形に近いので、吐きやすい構造になっています。また、大泣きしている時や咳がひどい時、お腹がいっぱいの時に薬を飲ませると、吐いてしまうことも多くあります。
編集部
吐いてしまったら、またすぐに飲ませた方がいいのでしょうか?
森本さん
飲んですぐに大量に吐いてしまった場合は、落ち着かせてからもう一度1回分を飲ませてください。吐いたのが少量であったり、30分以上経過してから吐いたりした場合は、すでに体の中に薬が入っていると考えられるので、飲ませない方がいいでしょう。
編集部
ほかに、注意して観察するべき点を教えてください。
森本さん
薬にアレルギーがあると、飲んでから数分後に症状が出る場合もあります。その場合は焦らず、かかりつけの小児科に電話をして、対処を仰いでください。
編集部
最後に、読者へのメッセージがあれば。
森本さん
子どもへ薬を飲ませる時、基本的には水、またはぬるま湯で飲ませてあげてください。どうしても飲まない場合は、ジュースで服用するといいでしょう。ただし、糖分量には要注意です。また、物心がつく年齢になれば、薬を飲むと元気になることを、子どもに伝えてあげましょう。嫌がるからといって隠して飲ませた場合、薬が入っていたことに気がつくと、子ども心ながらに嘘をつかれたと感じてしまいます。薬を飲んでもらう場合でも、親子の信頼関係が大切です。
編集部まとめ
基本的には水、またはぬるま湯で、薬を飲ませた方がよく、子どもに隠して薬を飲ませるのではなく、飲む意味を伝えて親子の信頼関係を壊さないことが重要なのですね。ただし、どうしても飲めない場合は、子どもの味覚に合わせてアイスクリームやジュースなどと服用するのもなしではないとのこと。こうした工夫を取り入れ、子どもに薬を飲んでもらう負担を減らしていきましょう。