痛みがない小さなイボって、放置しても大丈夫なの?
皮膚の“できもの”には、ウオノメ、タコ、イボなど、さまざまな種類があります。名前が違うからには、中身も異なるのでしょう。はたしてイボの正体とは。また、治さないでいるとどうなるのでしょう。「にっしん皮フ科・形成外科」の平岩先生に伺ってみました。
監修医師:
平岩 亮一(にっしん皮フ科・形成外科 院長)
埼玉医科大学医学部卒業。埼玉医科大学病院医局、東京医科歯科大学勤務、都内美容外科の院長就任を経た2005年、埼玉県さいたま市に「にっしん皮フ科・形成外科」開院。同年、法人化に伴い、医療法人社団日進会理事長就任。日本形成外科学会、日本美容外科学会、日本コエンザイムQ協会、日本抗加齢医学会の各正会員。医療特許複数保有。
ウイルス性のイボを放置してはダメ!
編集部
イボって、程度によっては無視していてもいいのでしょうか?
平岩先生
結論から言うと、「いい場合」と「悪い場合」があるので、「まずは受診してください」ということになろうかと思います。一般的なイボは、「尋常性疣贅(じんじょうせいゆうぜい)」という、“ウイルス感染症”の一種です。放置することで、大きくなったり他所へうつったりします。
編集部
他方で、「いい場合」もあると?
平岩先生
感染症ではないイボもあるからです。「軟性線維腫(なんせいせんいしゅ)」といいますが、首や脇の下にできやすいことから「首イボ」、「脇イボ」とも呼ばれています。皮膚の老化現象といえる「脂漏性角化症(しろうせいかくかしょう)」も、うつらないタイプのイボです。
編集部
我々には、区別がつきません。
平岩先生
そこが問題です。感染症なのに、患部をいじったら、感染が広がりかねません。加えて、「タコ」や「ウオノメ」などと勘違いしている可能性もありますよね。角質が変化しただけだろうと考えて放置していると、いずれ群発してきます。
編集部
ウイルス性イボとそれ以外の症状を、どうしたら見分けられますか?
平岩先生
ウイルス性イボの表面はザラザラしており、鍾乳石のように飛び出してくることがあります。また、うつらない「軟性線維腫」の場合、皮膚全体が飛び出していて表面はお肌と同じ質感です。ウイルス性イボの中には「扁平疣贅(へんぺいゆうぜい)」というイボもあり、皮膚科専門医の先生でも湿疹と間違われてステロイド軟膏が処方されている場合も少なくありません。
ウイルス性イボは、液体窒素による冷凍凝固治療が一般的
編集部
感染症であるイボって、治るのですか?
平岩先生
液体窒素による冷凍凝固法が一般的ですが、治療時の痛みが強く、中学生以下の子どもには不向きな治療です。この場合は、サリチル酸テープを貼り付ける方法を少し工夫することで、液体窒素よりも確実に治すことができます。また、高校生以上で足底や爪床の難治性のウイルス性イボの場合、局所麻酔下に電気メスで除去する根治術や、摘出術もおこなっています。なお、当院の場合、内服薬によるイボ治療は扱っていません。理由としては、治療成績が好ましくないからです。
編集部
イボを取り去ったところで、体内にウイルスが残っていないのでしょうか?
平岩先生
大きなイボを取り去ることで、小さなイボの治りが早まることがあります。そのため、ウイルスをまきちらしているのは“イボの親分”ではないかと感じさせられます。体内のウイルスから再発するような可能性は少ないでしょう。
編集部
治療期間は、どれくらいかかりますか?
平岩先生
おおむね2週間前後です。進め方としては、高校生以上の場合、液体窒素でイボとその周辺の組織を凍らせ、2週間後に再診察にお越しいただき、かさぶたを外してダーモスコープというルーペで観察し、治癒を判定しています。異常所見がなければ、治療終了です。
編集部
当然、イボの小さいうちに治療開始したほうが早いですよね?
平岩先生
もちろんです。特に足底部では重篤化して、イボが6cmx5cmまで拡大した症例もありました。ここまで大きく育ってしまうとなかなか治りません。ただ、液体窒素で治らないからといって、諦めることはありません。
ウイルスが付着していそうなモノの共有に注意しよう
編集部
イボって、家庭の床などを通じて二次感染したりしないですか?
平岩先生
する可能性もありますし、スポーツジムや公衆浴場、プールなどからも“もらい”ます。もし、ご家族がイボと診断されたら、それなりの対策をしましょう。ウイルスが付着していそうなモノの共有は避けてください。とくにお風呂場には要注意ですね。
編集部
洗濯機による感染も心配になってきました。
平岩先生
ウイルスが水で流されますから、洗濯機の共有でうつることは、まず“ない”です。ウイルスがそのまま残っているモノに注意しましょう。例えば、かかとをこする軽石や、自分で切除しようとして使ったカミソリなどですね。
編集部
受診して、単に角質の変化であれば、自分で切ってもいいんですよね?
平岩先生
構いませんが、せっかく受診したのですから、医院で適切にカットしてもらいましょう。保険の3割負担を前提としても、せいぜい数百円程度の費用です。
編集部
最後に、読者へのメッセージがあれば。
平岩先生
ウイルスが撲滅できていない以上、イボはだれにでも起こりえる病変です。また、他人へうつすリスクも抱えています。恥ずかしいなどとは思わず、小さなうちに、できるだけ早く処置してしまいましょう。
編集部まとめ
イボは感染症の一種なので、「いじらない」のが原則です。かといって、そのままにしていても感染を広げてしまいます。大親分に居座られないよう、早めの治療を心がけましょう。また、ウオノメやタコといった角質の変化なら“放置していてもいい”わけではありません。痛みなど、生活のしにくさに応じて、医院で適切に処置してもらってはいかがでしょうか。
いぼ、水いぼの症状についてもっと詳しく知りたい方は、こちらの記事を参照してください。
医院情報
所在地 | 〒331-0823 埼玉県さいたま市北区日進町2−925 1KTDビル2F |
アクセス | JR「日進駅」 徒歩12分 |
診療科目 | 皮膚科、美容皮膚科、形成外科 |