【漫画付き】自覚がない尿路結石もある!? これってホント?
日本人の10人に1人が発症するという尿路結石。その痛みは腰や背中に現れることが多く、石の摩擦というよりも、尿の詰まりによる内圧の増加で生じます。しかし、痛みなどの自覚を伴わない尿路結石もあるそうです。どういうことなのか、体の中でなにが起こっているのか、「大宮エヴァグリーンクリニック」の伊勢呂先生に解説いただきました。
監修医師:
伊勢呂 哲也(大宮エヴァグリーンクリニック 院長)
結石が「できる場所」と「詰まる場所」は違う
編集部
尿路結石ができると“痛い”らしいですね?
伊勢呂先生
尿管に結石が詰まると、腎臓や尿路の内部圧を上昇させます。このパンパンに膨らんだ状態が“痛い”のです。諸説ありますが、胆石、すい炎、尿管結石の痛みは、「三大激痛」といわれています。ただし、痛みなどの自覚を伴わない場合もありますよ。
編集部
自覚がないのは、初期段階の「ごく小さな石」だからですか?
伊勢呂先生
そうではなく、できた結石が腎臓にとどまっていると、痛みを感じないからです。結石は通常、腎臓でできます。これが尿管に落ちてきて詰まると、激痛を伴うわけです。また、尿管で詰まらないでぼうこうまで落ちると、ぼうこう結石という別の病気を招くことがあります。ぼうこう結石では、また、別の痛みが生じます。
編集部
そもそもですが、結石の自覚症状は「痛み」ですよね?
伊勢呂先生
ほとんどは痛みですが、出口のなくなった尿にばい菌が繁殖すると、発熱を伴うこともあります。また、結石が腎臓や尿管を傷つけることで、血尿になることもあります。
編集部
いずれにしても「石」が関係しているということですね?
伊勢呂先生
その認識でいいと思います。健康診断などで「腎臓に結石ができている」と指摘され、その段階で自覚がなかったとしても、いずれ尿管に落ちてくるかもしれません。早めの対策を取ってください。
水分の積極的な摂取で結石化を防ぐ
編集部
腎臓で結石ができるということですが、最初の段階で、なぜ流れていかないのでしょう?
伊勢呂先生
結石は腎臓の内側でつくられるからです。それが、なにかのきっかけで、腎臓の壁を通って外に出るんですね。そして、その先の尿管内を転がっていきます。一方、腎臓の外へ出ずに育ち続けていくと、自覚のない腎臓結石になります。
編集部
そもそも「石」の正体とはなんですか?
伊勢呂先生
結石の約8割はカルシウム結石で、尿の中でシュウ酸とカルシウムが結合するとできます。残りの2割は、尿酸やリン酸マグネシウムアンモニウムが原因で、尿酸は腎臓結石、リン酸マグネシウムアンモニウムはぼうこう由来の結石に、それぞれ関係しています。
編集部
シュウ酸ですか? あまり聞き慣れない名前です。
伊勢呂先生
簡単に説明すると「アク」の成分で、ホウレンソウ、タケノコ、紅茶、チョコレートなどに多く含まれています。
編集部
つまり、尿路結石を防ぎたかったら、食べ方より食べ物そのものに注意しろと?
伊勢呂先生
私は、あまり食事の指導をしていません。なぜなら、多彩な食材のコントロールは難しいからです。それよりも、「水分を1日1.5リットル以上取るように」とアドバイスしています。結石の原因となる成分の濃度が薄ければ、石になりにくいですから。
編集部
水分さえ多く取っていれば、結石は防げますか?
伊勢呂先生
リン酸マグネシウムアンモニウムによる結石は、尿が出にくい方によくできます。ですから、水分をたくさん取っても解決しません。前立腺の肥大やぼうこうの硬化といった別の原因を探っていきます。
痛みが引いたからといって、治ったとは思わないこと
編集部
水分摂取以外の予防法はありますか?
伊勢呂先生
結石は生活習慣病の一種とみなされてきていますので、しょっぱい、または脂っこい食べ物は控えた方がいいでしょう。事実、「生活習慣病の人は結石になりやすい」というデータが発表されています。
編集部
適度な運動を取り入れると、結石が砕けやすいと聞きますが?
伊勢呂先生
私は、そう思いません。ただし、生活習慣病予防としての運動が、結石を生みだしにくくする側面はあるでしょう。
編集部
自覚のない段階で結石を見つける方法は?
伊勢呂先生
健康診断や特定健診で、腎臓のエコー検査のオプションがあったら、利用してみてください。なお、血液検査から判明することもあります。
編集部
もし、結石が見つかったら、どうすればいいでしょう?
伊勢呂先生
医師と相談の上ですが、生活に不都合が起きていなければ、経過観察という方法もあります。痛みや発熱が伴うようなら、薬物療法か手術を用います。手術の主流としては、尿道から挿入した内視鏡で結石に超音波を当て、粉砕する方法です。
編集部
最後に、読者へのメッセージがあれば。
伊勢呂先生
尿管結石で怖いのは、痛みが1週間ほどで引いていくことです。なぜなら、腎臓や尿路が次第に伸びてきて、張りによる痛みを感じにくくなるからです。これは風船と一緒で、一度膨らませた風船って、買ったときの大きさまで戻りませんよね。同じことが、腎臓や尿路で起きています。加えて、詰まった側の腎臓は、尿をつくろうとせずに死んでしまいます。そうならないよう、定期的にチェックしてください。
編集部まとめ
結石が腎臓にとどまっていると、自覚を感じないということでした。ただし、いずれ尿管へ落ちていく可能性や、腎臓結石の肥大化などが考えられます。また、典型的な尿管結石であっても、その痛みは、やがて無自覚になっていくとのこと。いずれにしても、なにかしらの不具合を抱え続けていることに変わりはありません。痛みの有無にかかわらず、オプション検査を有効活用してみましょう。
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