早期の治療開始が鍵! 不治の病といわれた関節リウマチの有効な治療法とは?
監修医師:
金子 俊之(医療法人社団同心会 KYBクリニック)
なぜ内科治療が必要なのか
編集部
まず、関節リウマチという病気について教えてください。
金子先生
免疫システムの異常により、自分自身で関節の炎症を起こし、軟骨や骨が破壊されてしまう病気です。免疫が関係してきますから、「リウマチ」は全身疾患の病気です。臓器や皮膚の異常を伴う場合もあります。ただし、その影響が関節に現れやすいため、その関節部分に生じたものを「関節リウマチ」と呼んでいます。
編集部
効果的なお薬はあるのでしょうか?
金子先生
はい。免疫抑制作用のある「メトトレキサート」というお薬が有効です。リウマチというと「外科」のイメージを持たれる方もいるかもしれませんが、その原因は免疫の異常ですから、「内科」による投薬療法が欠かせません。
編集部
「メトトレキサート」が使えない場合はあるのでしょうか?
金子先生
あります。ご高齢の方や腎機能の悪い方、肺に障害を持たれている方は、場合によりほかの治療法を検討します。具体的には「生物学的製剤」や「JAK阻害薬」と呼ばれているお薬です。これらのお薬は、「メトトレキサート」の効き目が不十分な方に対しても、併用して投薬することがあります。
編集部
効き目が不十分でも、「メトトレキサート」を併用するのですか?
金子先生
「メトトレキサート」には、「生物学的製剤」や「JAK阻害薬」の効き目を良くしたり長持ちさせたりする働きがあるのです。運動会でおこなう綱引きの一番後の人を「アンカー」と呼びますよね。「メトトレキサート」はアンカードラッグとも呼ばれ、リウマチ治療の中心的存在となっているのです。
編集部
これらの薬で関節リウマチは完治できるのでしょうか?
金子先生
治療を受けた多くの方が、お薬をのみながら症状を抑え続けられる「寛解」、あるいはお薬をのみながら日常の生活の支障にならないくらいの症状にとどめる「低疾患活動性の維持」という状態へ至っています。加えて、早期に治療開始した方の中には、お薬が要らなくなるケースも見られます。劇的な改善といっていいのではないでしょうか。
受診する際は、担当医のプロフィールを確認
編集部
関節リウマチを放置しているとどうなるのでしょう?
金子先生
関節の破壊により、指などが曲がりにくくなる「強直」を起こすこともあります。手の場合はお箸が持てなくなってきますし、足の場合は歩きにくくなってしまうでしょう。
編集部
初期症状はどのように現れるのでしょうか?
金子先生
「指のこわばり」「関節痛」「微熱」などが、関節リウマチの初期症状です。筋肉のつりや更年期の症状などと勘違いされることも多いと思いますが、関節リウマチの場合、その自覚症状は朝方に強く現れます。自己判断の目安としてみてはいかがでしょうか。
編集部
どの程度の自覚があったら、受診するべきでしょう?
金子先生
間違っていてもいいので、できるだけ早く受診してください。もし関節リウマチであれば、早ければ早いほど、治療の予後が飛躍的に良くなります。
編集部
受診するとしたら何科なのですか?
金子先生
標ぼう科目で判断するより、ホームページなどで医師の履歴を調べ、「日本リウマチ学会」認定の専門医か指導医のいる医院を選ぶといいでしょう。仮に「リウマチ科」を標ぼうしていたとしても、一昔前の治療をしている医院が散見されます。
編集部
「リウマチ科」であっても、適切な治療を受けられない場合があるのですか?
金子先生
そうなんです。治療選択肢の中に「メトトレキサート」や「生物学的製剤」、「JAK阻害薬」などが含まれていなければ、「リウマチ科」としての体をなしていないでしょう。リウマチ治療の流れが投薬に変わってきたのは、ここ十数年の話です。それ以前の知識のまま診察を続けていると、誤診が起きかねません。
有効な治療薬だけに、細心の注意が求められる
編集部
「メトトレキサート」で副作用は起こるのでしょうか?
金子先生
起こりえます。肝機能障害、口内炎、吐き気、けん怠感のほか、最近では「リンパ増殖性疾患」や「B型肝炎の再活性化」のリスクなどが判明してきました。したがって我々専門医は、必要により生体検査などをしながら、お薬の適応を判断していきます。
編集部
「メトトレキサート」を出してもらったから大丈夫! とは言い切れないのですね?
金子先生
日本リウマチ学会認定の専門医や指導医が、診断の元に処方しているのなら、まず大丈夫です。怖いのは、リウマチに関する専門知識のない医師が、安易に「メトトレキサート」を処方しているケースでしょう。
編集部
副作用が起きる割合は?
金子先生
軽度なものだと、一時的なだるさやけん怠感なども含めて、5%といったところではないでしょうか。ただし、次第に副作用を感じなくなっていく方も少なくありません。一方、「リンパ増殖性疾患」といった重篤な副作用は、0.1%以下だと思います。
編集部
副作用を抑える方法はあるのですか?
金子先生
軽度な副作用であれば、手洗いやうがいが効果的です。リウマチのお薬は免疫反応を抑えてしまうため、感染しやすいのです。ですから、衛生管理を徹底してください。一方、重篤な副作用となると、専門医が確認していくしかないでしょう。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
金子先生
関節リウマチの治療方法は、この十数年で、劇的な進化を遂げました。そのため、非常に専門性が高くなっています。もはや、リウマチ専門医以外が片手間でおこなうような治療ではありません。ぜひ、発症から2年以内に“適切な治療”を受けていただきたいですね。治療開始が早ければ早いほど、お薬などの負担を減らすことができるでしょう。
編集部まとめ
「リウマチ科」を掲げている医院でも、適切な治療が受けられるとは限りません。また、ごくわずかながら副作用リスクが潜んでいるものの、医学の進歩により有効な治療薬があります。こちらの2点は大きな発見でした。ぜひ、日本リウマチ学会認定の専門医か指導医の資格を持っている担当医師に診てもらって適切な治療を受けてください。
医院情報
所在地 | 〒107-0052 東京都港区赤坂2-5-7 渡辺商事赤坂ビル6F |
アクセス | 銀座線・南北線 溜池山王駅「7番出口」徒歩3分 千代田線 赤坂駅徒歩5分 |
診療科目 | 内科・皮膚科・形成外科 |