「膠原病」と「リウマチ」って同じ病気なの?
「膠原病(こうげんびょう)」「リウマチ」「関節リウマチ」。なんとなくはわかるけれど、混同してしまったり、はっきりと説明できない人も多いのではないでしょうか。そこで、リウマチの専門医でもある「KYBクリニック」の金子先生に詳しく解説いただきました。
監修医師:
金子 俊之(医療法人社団同心会 KYBクリニック)
膠原病とリウマチの区別はしない
編集部
膠原病とリウマチは同じ病気なのでしょうか?
金子先生
同じ病気と言っていいでしょう。ただし、一般的にリウマチというと、「関節に生じる病気」だと思われているようです。しかし、リウマチは基本的に全身疾患の病気です。関節部分だけに生じたリウマチは、「関節リウマチ」と呼び分けています。
編集部
改めてリウマチあるいは膠原病について教えてください。
金子先生
以後、わかりやすいように「膠原病」で統一しましょうか。膠原病は、自分の免疫が自分を攻撃してしまう免疫疾患の一部です。攻撃の対象は臓器や筋肉、皮膚などさまざまで、そのそれぞれに病名がついています。
編集部
膠原病に含まれる病気としては、どのようなものがあるのですか?
金子先生
もっとも症例として多いのは「全身性エリテマトーデス」で、肺や心臓といった臓器、髪の毛、関節など、全身のあらゆるところに炎症を起こす可能性のある病気です。また、「強皮症」は、皮膚の硬化が指から腕や胸部などへ広がっていく病気のこと。「筋炎」は、筋肉に炎症が起きて力が入りにくくなる病気です。まだまだほかにもあります。
編集部
膠原とはコラーゲンのことであるという話も聞いたことがあるのですが。
金子先生
たしかにコラーゲンは「膠原繊維」と訳されます。骨や軟骨などに含まれるコラーゲンの炎症を膠原病としていた時期もありましたが、解釈が変わってきましたね。実際、炎症が起きる場所は、コラーゲンに限りません。
膠原病の治療について
編集部
膠原病は治るのでしょうか?
金子先生
投薬による「寛解(かんかい)」や「低疾患活動性の維持」が治療の目標になります。「寛解」とは、お薬で症状を抑えきれていること。「低疾患活動性の維持」とは、同じくお薬によって、日常生活の支障とならないレベルの症状にとどめておくことです。
編集部
治療の方向性は、出てきた症状を抑えることでしょうか? それとも、免疫の活動を抑えることでしょうか?
金子先生
日本リウマチ学会の方針として、臓器に影響がない場合は、免疫の活動を抑える免疫抑制剤などをなるべく使わないようにしています。例えば皮膚炎なら、塗り薬のような外用薬で、炎症を抑えるわけです。他方で、命に関わる臓器の合併症が疑われる場合は、免疫抑制剤などの内服薬をお出しします。
編集部
膠原病になりやすい人や傾向は?
金子先生
遺伝要因もありますが、環境要因のほうが関連性は高いとされています。代表的な環境要因としては、喫煙習慣、ダイオキシン、むし歯などの疾患が挙げられます。また、膠原病の発症は女性に多く、30代から50代が顕著です。高齢になると免疫の力が落ちてきますから、自分を攻撃する力も弱まるのです。そのため、年を重ねて症状が安定する高齢者の方もいらっしゃいます。
編集部
膠原病であることを自覚できるのでしょうか?
金子先生
膠原病に明確なサインはありません。「何かがおかしい」と思ったら、病名にこだわらず、最寄りの医療機関を受診してください。必要により、適切な治療先を紹介してくれるでしょう。ただし、膠原病の診断を的確につけられる専門医は限られています。紹介された医院で改善がみられなかったら、「膠原病科」や「リウマチ科」を受診してみてください。
関節リウマチについて
編集部
今度は「関節リウマチ」について教えてください。
金子先生
「関節リウマチ」は、膠原病の症状が関節部に起きた場合の通称です。その原因は、やはり免疫システムの異常で、関節まわりの骨や軟骨が破壊されていきます。自覚症状として、指の動かしづらさや歩きにくさなどが挙げられるでしょう。
編集部
関節リウマチの治療方法は?
金子先生
「メトトレキサート」という免疫抑制剤が第一選択肢です。また、患者さんの状態をみながら、「生物学的製剤」や「JAK阻害薬」といったほかのお薬を併用することもあります。
編集部
膠原病を、健診などで見つけられるのでしょうか?
金子先生
そうした検査をオプションでつけているところもありますが、あまり意味がないでしょう。健診で予防するというような病気ではないと思います。ただ、がんと違って死亡に至るケースはまれですし、発症数そのものも多くありませんので、予防についてはそこまで気にしなくても大丈夫かと思われます。ただし、発症が見られたら、遅くても2年以内に治療を開始しましょう。
編集部まとめ
どうやら、コラーゲン(膠原繊維)の炎症と思われていた時代に「膠原病」という名称が付き、これとは別に、関節部に起きた特殊な炎症を「関節リウマチ」と呼んできたのでしょう。しかし、研究が進んだことで、「膠原病とリウマチは同じ病気である」と判明しました。誤解を避けるためにも、単独の「リウマチ」という言葉は使わず、「膠原病」、あるいは、「関節に起きたリウマチ性疾患」としたほうが好ましいかもしれません。
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