眼球の中が炎症を起こす「ぶどう膜炎」 失明の危険性は?
自己免疫が自分の体を攻撃してしまう症状は、目でも起きるようだ。「ぶどう膜炎」という病名で、場合によっては失明の可能性も考えられるという。そんな「ぶどう膜炎」とはどのような疾患なのか? 「安藤眼科クリニック」の安藤先生にその実態をきいてみた。
監修医師:
安藤 靖恭(安藤眼科クリニック 院長)
慶應義塾大学医学部卒業。慶應義塾大学医学部眼科入局、同眼科専任講師、北里研究所病院眼科部長などを経た2017年、東京都練馬区に「安藤眼科クリニック」開院。慶應義塾大学病院やその関連病院で体得した診療・研究内容を、地域医療に生かしている。医学博士、日本眼科学会認定眼科専門医。日本眼科手術学会、日本眼炎症学会、日本緑内障学会の各学会所属。
自分の免疫が自分を攻撃してしまう「ぶどう膜炎」
編集部
眼球の中でも炎症を起こすことがあると聞きましたが?
安藤先生
はい。眼球の内側で炎症を起こすことを「ぶどう膜炎」といいます。「ぶどう膜」とは、眼球の内側にある虹彩(こうさい)、毛様体(もうようたい)、脈絡膜(みゃくらくまく)の三つを指します。この部分の炎症を総称した呼び方が「ぶどう膜炎」です。
編集部
どうして目なのに「ぶどう」膜なんでしょう?
安藤先生
「ぶどう膜」のことを欧米では「UVEA(ウベア)」といい、「果実」を意味するそうです。ぶどうに例えたのは日本独自の発想で、茶色かつ球状の形をしているからでしょう。外国人の場合、青だったり緑だったりしますからね。
編集部
「ぶどう膜炎」の症状は?
安藤先生
名称自体が総称ですから、症状もさまざまです。具体的には、視力の低下、充血、目の痛み、神経の過敏によるまぶしさ、飛蚊(ひぶん)症、などが挙げられます。また、緑内障や白内障を併発することもあります。
編集部
失明に至ることはあるのでしょうか?
安藤先生
ごくまれですが、失明に至ることもあります。とくに緑内障を併発すると、その可能性が高まりますね。
編集部
なぜ、眼球の中で炎症を起こすのでしょう? 外部の影響を受けにくいと思うのですが?
安藤先生
「ぶどう膜炎」には、免疫異常によって起こるものと病原体の感染によるものがあります。「ぶどう膜」には、ほかの部分に比べて血液が多く回っているため、より免疫の影響を受けやすく、炎症も起こしやすいのです。
「ぶどう膜炎」はダメージが積み重なる慢性疾患
編集部
「ぶどう膜炎」が総称だとすると、何に気をつけていればいいのかわかりません。
安藤先生
そうですね。ぶどう膜炎固有の症状というものはありません。あまり病名にこだわらず、「目がおかしいな」と思ったら、眼科を受診してください。ぶどう膜炎は進行すると重症化し治療が難しくなることもあるので、早期の治療開始が望まれます。
編集部
放置しているとどうなるのでしょう?
安藤先生
ぶどう膜炎が進行すると、ダメージの積み重ねによって、失明するかもしれません。「ぶどう膜」は、眼球を覆う形で、網膜や視神経と接しています。ですから、ぶどう膜が炎症を起こすと、その周囲にも影響を及ぼしかねないのです。
編集部
眼科医なら「ぶどう膜炎」の診断が付けられるのですよね?
安藤先生
もちろんです。ただし総称なので、問診や検査などによって、「サルコイドーシス」や「ベーチェット病」といった個々の病気を診断していきます。
免疫疾患の治療目的である「寛解(かんかい)」とは
編集部
具体的な治療方法について教えてください。
安藤先生
原因がさまざまなので、原因検索を行ないながら治療をしていきます。全身疾患と関連があることも多く、眼科的な検査に加え、血液検査なども必要となります。ただし、慢性の疾患のことが多く、再発やぶり返しを起こすことがあります。
編集部
完治が難しいわけですね?
安藤先生
基本的にはそうなります。したがって、治療の目的は、「症状が引いた状態をお薬などで維持していくこと」です。この状態を「寛解(かんかい)」といいます。症状が一時的に治まったとしても、医師による指示のない限り、服薬を続けてください。
編集部
治療できない場合はありますか?
安藤先生
ぶどう膜炎患者さんの約4割は原因不明で、この場合、「病名が付かない」ことになります。しかし、炎症などの症状を抑えることはできます。その意味で、「治療できない場合」はほとんどないでしょう。
編集部
「原因不明」と聞くと、怖さを感じます。
安藤先生
実際のところ、「症状が“軽い”ために原因を特定しきれない」ケースがほとんどです。失明率でいえば、むしろ原因不明のほうが少ないことになります。多少は安心していただけましたでしょうか。
編集部
最後に、読者へのメッセージがあれば。
安藤先生
「ぶどう膜炎」が怖いのは、緑内障や白内障などの合併症を併発しかねないところです。なおかつ、慢性疾患が多く、「寛解」を根気よくコントロールし続ける必要があります。今では、いろいろといいお薬が出てきていますので、医師との共同作業を続けてください。
編集部まとめ
免疫の不具合などにより眼球の中で炎症が起きた状態を「ぶどう膜炎」といい、その症状や病名は様々で、失明の可能性は現実的に低いものの、「まったくない」とも言い切れないようです。
何より、自分の体を攻撃する自己免疫疾患ですので、放置は好ましくないでしょう。また、「寛解」は、病気が初期の方が比較的容易に実現できます。早期発見と早期治療開始に努めてください。
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