内視鏡は検査だけでなく、治療もできるの?
監修医師:
里村 仁志(里村クリニック 副院長)
内視鏡の機能はカメラに限らない
編集部
内視鏡そのもので治療はおこなえるのでしょうか?
里村先生
胃の内視鏡には、口から入れる経口内視鏡と鼻から入れる経鼻内視鏡があります。このうち切除手術がおこなえるのは、原則として経口内視鏡のみです。なお、経鼻内視鏡でも、検査用に組織の一部を採取することはできます。一方、大腸内視鏡は経口内視鏡と同じで、切除手術等がおこなえます。
編集部
それぞれの内視鏡は、どの臓器を見るのですか?
里村先生
胃の内視鏡は、正式には上部消化管内視鏡検査といわれ、食道と胃、それに十二指腸の一部まで届きます。この範囲なら内視鏡で治療がおこなえるものの、決してすべてのケースに対応しているわけではありません。場合によっては、病院での切開手術へ移ることもあります。胃の内視鏡で対応できるのは、「1A」ステージまでの初期胃がん、イボのような胃腺腫(いせんしゅ)やポリープといったところでしょうか。大腸全般を検査する大腸内視鏡も、見る場所が異なるだけで、できることは同じです。
編集部
がんの場合は、初期のステージに限られているんですね?
里村先生
はい。例えば胃壁は5層に分かれているのですが、内視鏡で対応できるのは、一番表面の粘膜層までです。粘膜にできた腫瘍やポリープの裏側へ特殊な注射をし、患部を浮かせた状態にして削り取ることになります。この方法だと、胃壁を貫通するような穴が開きません。大腸の場合も、基本的には同様です。
内視鏡での治療が難しいケース
編集部
あえて切除しない場合もあるのですか?
里村先生
がんの場合は、仮に発見できても切除せず、ひとまず組織検査へ回すことがあります。がんの性質や種類、他臓器への転移の可能性などを調べるためです。この場合は、後日、治療方針の決定をおこなうことになります。
編集部
治療の内容としては、手術になるのでしょうか?
里村先生
がんの種類や場所、転移の有無など状態によって、内視鏡での切除や手術が選択されます。その判断は、必ずしも検査したクリニックがおこなうわけではありません。がんの専門病院へ転院することもあるでしょう。
編集部
ポリープの場合についても教えてください。
里村先生
胃腺腫やポリープでも、影になって届きにくい箇所などは、無理をしてまで切除しません。別の方法を考えます。がん化の可能性が低ければ経過観察もありえますし、リスクが高ければ切開手術で摘出します。
編集部
経過観察は、どの程度続くのでしょう?
里村先生
だいたい半年くらいでしょうか。その間、定期的に受診していただきます。症状が落ち着いてきたら、1年に1回程度の頻度へ落としていきます。
「おかしいな」と思ったら内視鏡検査を
編集部
内視鏡検査で病変が見つかるのは、どのくらいの確率なのですか?
里村先生
あくまで当院の症例で、胃で良性を含むポリープが見つかる割合は、3~4人に1人くらいです。胃がんは何とも言えませんね。大腸ポリープも3~5人に1人くらいです。ただし、内視鏡検査を受けられるのは健康診断で指摘を受けた方や、便潜血検査で陽性が出た方が多いですから、全く自覚症状のない方を含めた確率となると難しいですね。
編集部
そのうち、その場で治療ができるケースは?
里村先生
胃のポリープは良性であれば、多くが経過観察になります。大腸ポリープの場合は、5mm以上であればできるだけその場で切除してしまいます。がんは、前述の通り、検査に回す場合があります。見えている箇所を切除しただけでは、解決しないケースがあるからです。
編集部
どのような人に内視鏡を受けてほしいですか?
里村先生
胃に痛みや不調といった自覚のある方です。大腸に関しては、便が異常なほど細い方や血便が出る方でしょうか。日本人は、胃がんの発症率がことさら高いと言われています。症状がなくとも、40歳以上で内視鏡検査を受けたことのない方は、一度、受診してみてください。特定健診などの制度もありますし、「がんを見つけるため」ではなく「健康という自信を得るため」に活用していただきたいですね。
編集部まとめ
内視鏡の「口からか鼻からか」問題には、医療機関の設備や担当医師の考え方、それに検査か手術かという視点が関係してくるのでした。ただ、両方を選べる「里村クリニック」では、約95%の方が経鼻内視鏡にしているとのこと。「まず経鼻を受けてみて、満足できなかったら、次の検査は経口」という選択が順当なのではないでしょうか。
医院情報
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診療科目 | 内科・消化器内科・外科・放射線科 |