新型コロナワクチンを接種したら、マスクなしで飲み会に行っても大丈夫?
新型コロナワクチンを打てば3密は気にしなくてよくなるのでしょうか? マスクなしでお酒を飲みに行けて、旅行にも行けるようになるのはいつになるのでしょうか? この1年ほど自粛していたさまざまな活動を再開できることを心待ちにしている人は多いことでしょう。そこで、ワクチン接種後の感染のリスクや、他人を感染させてしまう危険性、マスクの必要性、行動様式などについて、感染症の専門医・堀野哲也先生に話を聞きました。
監修医師:
堀野 哲也(東京慈恵会医科大学附属病院感染症科 診療医長、感染症専門医)
編集部
ワクチンを接種するということはどういうことなのでしょうか?
堀野先生
人間の免疫力には自然免疫と獲得免疫の2つがあります。自然免疫は、初めて曝露されるさまざまな病原体に対しても迅速に反応しますが、病原体はこの自然免疫をすり抜けてしまうことがあるのです。獲得免疫はそれぞれの病原体に対して個別に反応できますが、感染してから獲得免疫が構築されるまでに1~2週間かかります。ワクチンを接種して獲得免疫をあらかじめ構築しておけば、実際にその病原体に曝露されたときに獲得免疫が速やかに反応して、病原体の侵入を防いだり、侵入した病原体を排除したりすることができます。
編集部
なぜ2回打つ必要があるのですか?
堀野先生
接種回数はワクチンによって異なり、例えばB型肝炎のワクチンは3回の接種が必要です。現在接種されている新型コロナウイルスに対する「mRNAワクチン」は、1回接種よりも2回接種する方がワクチンの効果が高くなることから、同じものを2回接種することが推奨されています。
編集部
ワクチン接種後は、再感染することはないのでしょうか。
堀野先生
ワクチンの効果は残念ながら100%ではありません。現在接種されているワクチンを2回接種すると、発症を90%以上減らすことができたと報告されていますが、100%ではない。つまり、ワクチンを接種した後に感染した方がいることには、注意が必要です。
編集部
ワクチン接種後、自分は発症していないけどウイルスを他人に感染させてしまうようなことはありますか。
堀野先生
ワクチンの接種によって発症者数だけでなく、無症状の感染者数も減少することが報告されていますが、いずれも0人というわけではありません。可能性は低いものの、ワクチン接種者から未接種者に感染する可能性は残されています。
編集部
非接種の人と共存する社会ではどのようなことが大切になってきますか。
堀野先生
ワクチン接種を受けた方は発症や重症化する可能性が低くなりますが、接種を受けていない方は、依然としてこれらのリスクにさらされています。多くの方が接種を受けたくても順番を待っている状況ですから、ワクチンの接種率が上がり、多くの方が免疫を獲得するまでは、ワクチン接種を終えた方も今まで通り感染対策を続けることが必要です。
編集部
飲み会は開いていいのでしょうか?
堀野先生
ワクチン接種を受けた方だけで開く飲み会は、無症状の感染者が参加していたとしても感染する確率は低いかも知れません。しかし、確率は0ではありませんから、その飲み会で感染して帰宅、出社すれば、ワクチンを受けていない家族や同僚に感染させ、発症、重症化することもありますので、感染対策のない飲み会は現時点では推奨できません。
編集部
旅行の場合はどうでしょうか?
堀野先生
ワクチン接種を受けていても、海外旅行ではそれぞれの国の規則に従わなければなりません。国内旅行もワクチン接種を受けていない人のことを考えて、国や自治体の規則に従って感染対策を実施する必要がありますし、緊急事態宣言下での旅行は、中止や延期も検討する必要があります。
編集部
将来的に大半の人々がワクチン接種を終えた場合、新型コロナウイルスに感染する可能性はどうなりますか?
堀野先生
新型コロナウイルスに感染する可能性は大幅に低くなると思います。ただし、CDC(疾病対策予防センター)が挙げているように、ワクチンの変異株への有効性、免疫抑制剤の服用などにより免疫機能が低下している人への有効性、効果の持続期間はまだ明らかになっていませんので、まだ完全に安心することはできません。
編集部
ちなみに堀野先生は2回の接種は終えましたか? 副作用や打った後の感想は?
堀野先生
接種していただきました。接種した後に腕のだるさは少しあったと思いますが、ほとんど副反応はありませんでした。発熱や倦怠感が強かった同僚もいますが、みなさん自然に改善しています。