生理痛が重くなるのはどうして? 病院に行ったほうがいい?
女性なら誰もが経験する月経の悩み。生理痛も、ほとんどの女性が経験するものです。また、徐々に重くなっていると気づきながらも、レディースクリニックの受診に対して、敷居の高さを感じている人も多いのでは。生理が重くなる理由や、原因となる病気、そのまま放置した場合のリスク、痛みを軽減する方法について、麻布十番まなみウィメンズクリニックの今井愛院長に聞いてきました。
監修医師:
今井 愛(麻布十番まなみウィメンズクリニック 院長)
北里大学医学部卒業後、同大学の産婦人科に入局。横須賀共済病院、東京逓信病院への出向、ナポリ大学(イタリア)留学などを経て、平成22年に開業。「女性にとって婦人科をより身近に感じてもらえるように」と想いこめて、日々の診療にあたっている。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医、日本産科婦人科学会専門医、日本臨床細胞学会細胞診指導医、点滴療法委員会認定医、医学博士。
日常生活に支障をきたすほどつらいなら、迷わず病院へ
編集部
生理に伴う痛みや症状にはどのようなものがありますか?
今井先生
「なんとなく腰が少しだるいなぁ」という人から「痛みが強くて寝込んでしまう」という人まで痛みの感じ方は人それぞれです。痛みが重い方の中には、「ベッドからトイレまで這っていく」「痛くて、体をまっすぐにしていられない」という方もいます。
症状も様々で、主な症状だけでも、下腹部痛、腰痛、頭痛、吐き気、下痢、お腹が張る、憂うつ、疲労・脱力感、食欲不振、イライラなどがあります。
編集部
そもそも痛みが起こるのはなぜなのでしょう?
今井先生
生理時には、プロスタグランジンというホルモンに似た物質が分泌されます。プロスタグランジンは不要になった子宮の内膜をスムーズに排出するために、子宮を収縮させるのですが、これが過剰に分泌された場合、必要以上に収縮し、キリキリとした痛みを引き起こします。
また、子宮内への血流を抑制し、子宮内の神経を痛みに敏感にさせる作用もあります。
編集部
吐き気や頭痛などもプロスタグランジンが関係しているのでしょうか?
今井先生
プロスタグランジンには血管を収縮させる作用もあるため、胃腸の働きをはじめ、頭痛や腰痛など様々な影響を及ぼします。
編集部
どのような場合、医療機関を受診すべきでしょうか?
今井先生
痛み止めが効かないほど痛みが強い場合や、毎月のたびに痛みが強くなっていく場合は、医療機関の受診をお勧めします。特に後者は、なんらかの病状が進んでいる可能性もあるため注意が必要です。
生理が病気を悪化させることも
編集部
重い生理痛に病名はあるのでしょうか?
今井先生
月経困難症には2種類あり、自然な身体の仕組みで起きる生理痛が極度に重い場合には、「機能性月経困難症」。直接的な原因となる病気が関係している場合は、「器質性月経困難症」という病名になります。
編集部
機能性か器質性かを見分ける方法はありますか?
今井先生
医療機関で病気がないかを確認する必要があります。ただ、器質性月経困難症の特徴としては、痛みが発生する期間が通常よりも長いことがあげられます。期間に関係なく、婦人科系の部位(鼠径部から下腹部周辺)に痛みが起きる、不正出血があるなどの場合も、かなり疑わしいと思われます。
編集部
器質性月経困難症では具体的にどのような病気が考えられますか?
今井先生
子宮内膜症、子宮筋腫、子宮腺筋症などが考えられます。
なかでも多い子宮内膜症は、子宮の内側にしか存在してはいけない子宮内膜組織が、腹膜など子宮以外の場所にも発生する病気です。子宮以外の場所で剥離を起こしても、体外にうまく排出できないため、強い痛みを伴います。
編集部
子宮内膜症についてもう少し詳しく教えてください
今井先生
子宮内膜症は、痛みにより女性のQOL(生活の質)を低下させるだけでなく、不妊症の一因でもあります。また、毎月起こる生理自体が、病気を悪化させる原因となりますので、徐々に悪化するのが一般的です。
しかし、病気の重大性や認知度が低いゆえに、婦人科を受診しない女性が少なくありません。
月経困難症にもピルは有効
編集部
原因となる病気のない機能性月経困難症の場合はどのような治療になりますか?
今井先生
対症療法になりますが、まずは痛み止めの処方になります。
長期的には、ピルの処方やミレーナなどの子宮内リングの装着も提案します。月経困難症と診断をされた場合、これらも保険適用となります。
ピルを飲む効果は、辛い症状の緩和だけではありません。子宮内膜症などの進行を止めることが出来ますし、排出される血液量も減るため、貧血が改善するケースも多くみられます。ピルについては、避妊目的のために特殊な人が飲むものなどの誤解を持たれていた時期もありますが、女性のQOLをあげ、がんの予防にも効果がある薬だとやっと認知されてきました。
嬉しいことですが、それでも海外に比べると、普及率はまだまだ低いですね。
編集部
ピルは副作用も強いイメージがあります
今井先生
以前は、太ったり、肌荒れが起きたりすることもありましたが、最近は、効果はそのままにピルの成分量を抑えた超低用量のものが発売されており、副作用も少なくなっています。
もちろん、喫煙や高血圧などのリスクがある方は、飲めないこともありますが、怖い薬ではありません。
編集部
副作用といえば、痛み止めの副作用も気になります。毎月、何日も飲み続けても、問題ありませんか?
今井先生
市販の痛み止めを飲みたくないという方もいますが、我慢をすることもストレスになりますので、心配せずに飲むべきだと考えています。
痛みが重い期間は、1か月のうち2-3日のことが多いでしょう。長くても1週間程度であれば、毎月飲んでも問題にはなりません。
また、痛くなって飲んでも効果は弱いため、痛くなる前から予防内服がお勧めです。
編集部
生理痛の重さと妊娠しづらさは関係がありますか?
今井先生
妊娠しづらいとまでは言いませんが、関連性はあります。
まず、ホルモンバランスが整っていないと重たくなる傾向があります。子宮系の病気、自律神経のバランスの乱れや、ストレスなども要因の一つです。妊娠しづらい方にも同じような不調が見られます。
妊娠を希望されている場合は、ホルモンバランスを整えるよう、体調や生活習慣の管理を行ってみてはいかがでしょうか。
編集部
重くなりやすい年代はありますか?
今井先生
20~30代は、周期は安定してくるものの、ストレスやホルモンバランスの乱れにより痛みが重く感じる方もいらっしゃいます。ストレスがたまると身体が冷えて血液の循環が悪くなり、経血が排出される際に子宮の収縮が強まってしまうことで、より痛みを重たく感じる場合もあります。
編集部まとめ
痛みの感じ方は人それぞれですが、日常生活に支障をきたす生理痛は、平均的とは言えません。日常生活に支障があるほど重い痛みの場合は、月経困難症という病名がつきます。
特に、子宮内膜症などの病気が原因の可能性もあります。
月経困難症の原因は、大きく分けて2種類あります。
・器質性月経困難症(病気が原因)
・機能性月経困難症(病気はなく、体質的な問題)
どちらが原因の場合でも、治療を行うことができます。痛みが強い場合や、痛みが強くなってきたと感じる場合は、医療機関への受診と治療をお勧めします。
医院情報
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