性感染症の実態:性病の種類や割合などについて解説
性感染症は、現代社会において健康問題の一つであるため、性感染症の実態についてしっかりと理解しておく必要があります。そこで、本記事では性感染症の実態について、以下の点を中心にご紹介します。
・性感染症の感染者について
・性感染症の種類
・定点報告されている性感染症の割合・動向
性感染症の実態について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
監修医師:
村上 知彦(薬院ひ尿器科医院)
目次 -INDEX-
性感染症の感染者は増えている!
性感染症のなかでも「梅毒」、「クラミジア」、「尖圭コンジローマ」の感染者が急増しています。
なかでも梅毒の増加率が顕著です。
厚生労働省の発表によると、2019年から2020年に梅毒は一旦減少したものの、2021年以降大きく増加しました。2022年には10月下旬の時点で1万例を超える報告があるため、今後も注意が必要です。
クラミジアも以前は減少していたものの、2021年に増加に転じたといいます。
これら性感染症が増加した理由として、2019年からの「COVID-19」の蔓延が考えられます。
コロナ禍で人々の生活スタイルが変わり、性感染症の増加傾向が明らかになったため、社会全体での意識改革が求められています。
性感染症の種類
性感染症にはさまざまな種類がありますが、ここからは、性感染症の詳しい種類について詳しく解説します。
性器クラミジア感染症
性器クラミジア感染症は、「Chlamydia trachomatis」という細菌によって引き起こされ、性行為を通じて感染します。
男性の場合、排尿する際の軽い痛みや尿道からの分泌物、かゆみが現れることがありますが、症状が現れるのは感染者の約半数です。
また、精巣の腫れや熱を伴うこともあり、不妊の原因になる場合があります。
女性は症状が少なく、軽い下腹部の痛みや不正出血、性交痛が兆候として現れます。
また、妊娠中の感染は早期流産のリスクを高めるため注意が必要です。
淋菌感染症
淋菌感染症は、「Neisseria gonorrhoeae」という細菌によって引き起こされる性感染症で、主に性行為により感染します。
男性では、排尿する際の激しい痛みや黄白色の分泌物が尿道から出ることが多く、ときに精巣が腫れて発熱を伴うこともあります。
女性の場合、おりものの増加、下腹部の痛み、発熱などの症状が見られることがありますが、症状が出ないことも多く、不正出血や性交痛が進行のサインとなることがあります。
また、咽頭や直腸の感染も起こり得ますが、自覚症状が少なく気付きにくいとされています。
淋菌感染症の治療を受けない場合、不妊の原因となったり、妊婦から新生児へ感染したりする恐れがあるため、早期の診断と適切な治療が重要です。
性器ヘルペスウイルス感染症
性器ヘルペスウイルス感染症は、「ヘルペスウイルス」によって引き起こされる性感染症で、主に性行為により感染します。
男女ともに性器や肛門周辺に1〜2ミリの水疱や潰瘍が形成され、痛みやかゆみを伴います。
また、足の付け根のリンパ節が腫れたり、痛みが生じたりすることがあります。
初めて感染した際には発熱することもあります。
未治療の場合、痛みや不快感は自然に無くなることもありますが、感染の再発リスクが続くため、早期の診断と適切な治療が重要となります。
尖形コンジローマ
尖形コンジローマは「ヒトパピローマウイルス(HPV)6型や11型」の感染により発症する性感染症です。
男性では亀頭や陰嚢、肛門周辺に、女性では外陰部や膣、肛門周辺に白、薄ピンク、褐色のカリフラワー状のイボが形成されます。
これらのイボは数が増えると鶏冠のように見えることがありますが、自覚症状は少なく、軽いかゆみや痛みがある程度です。
放置すると約20〜30%のケースで3ヶ月以内に自然治癒しますが、悪性転化のリスクも指摘されているため、早期発見と適切な治療が重要です。
トリコモナス症
トリコモナス症は、「トリコモナス・ヴァギナリス」という原虫によって引き起こされる性感染症です。感染経路は主に性行為ですが、まれに下着やタオルを介しての感染も報告されています。
症状は男女で異なり、男性ではほとんど自覚症状がないことが多いのに対し、女性は黄緑色の泡立つおりものや外陰部と腟の刺激感やかゆみが現れることがあります。
放置すると症状が悪化する可能性があり、なかでも女性は不妊のリスクも高まるため、早期の発見と適切な治療が重要です。
ケジラミ症
ケジラミ症は、「ケジラミ(Pthirus pubis)」という寄生虫が原因となって発症します。主に性行為を介して感染する性感染症ですが、衣類や寝具を介して感染することもあります。
感染した場合は主に陰股部に激しいかゆみを感じますが、1〜2ヵ月程の潜伏期を経て症状が現れることが多いとされています。
ケジラミ症は、適切な処置を施さなければ症状は悪化し、自然に治ることはないため、適切に治療することが大切です。
性器カンジダ
性器カンジダは「カンジダ属の真菌」による感染症で、性行為を介して感染することもありますが、性交渉がなくても発症することがあります。
男性では症状が出にくいのに対し、女性は外陰部の激しいかゆみや白っぽいおりものが増加します。
この感染症は、カンジダを持つことと発症することは一致しないため、感染が疑われる場合は速やかに医療機関を受診することが推奨されます。
梅毒
梅毒は「梅毒トレポネーマ」によって引き起こされる性感染症です。
感染初期には性器や口内に痛みを感じない赤いしこりやただれが現れ、リンパ節の腫れが伴います。
感染後数週間で全身に痛みやかゆみのない発疹が広がることも特徴です。
なかでも妊娠中の梅毒感染は、死産や早産の原因にもなるため注意が必要なため、セックスパートナーも同時に治療を受けることが重要です。
HIV/エイズ
HIV(ヒト免疫不全ウイルス)に感染すると、約2~6週間の急性期に約50~90%の人が発熱、リンパ節の腫れ、喉の痛み、皮疹、筋肉痛、頭痛、下痢などの風邪様症状を経験しますが、無症状の場合もあります。
放置すると日和見感染症や悪性リンパ腫などを発症し、最終的にはエイズ(後天性免疫不全症候群)に至ることがあるため、治療を受けることが推奨されています。
B型肝炎・C型肝炎
B型肝炎(HBV)とC型肝炎(HCV)は肝臓に影響を与えるウイルス感染症です。
B型肝炎ウイルスは、「DNAウイルス」によって発症し、感染後は急性期に微熱や全身倦怠感、食欲不振などが現れることがあります。
一方、C型肝炎ウイルスは「RNAウイルス」によって発症し、初期には症状がほとんど表れませんが、感染から数十年後に肝硬変や肝臓癌を引き起こすリスクがあります。
これらの感染症は放置すると、最終的には肝硬変や肝癌へと進行するリスクが高くなるため、早期の発見と適切な治療が重要です。
A型肝炎
A型肝炎は「A型肝炎ウイルス(HAV)」によって引き起こされ、主に糞口から感染します。性行為を介しての感染も起こりえますが、多くは食品や水の汚染が原因となります。
感染後、2〜7週間の潜伏期を経て、発熱、頭痛、筋肉痛、腹痛といった全身症状が現れます。
重症化すると急性肝不全に至ることもあるため注意が必要です。
マイコプラズマ感染症
マイコプラズマ感染症は、性行為やキスを通じて感染しますが、「マイコプラズマ・ジェニタリウム」と「マイコプラズマ・ホミニス」が原因菌になることが多いとされています。
この菌により性器や咽頭に感染し、尿道炎や膣炎などの症状を引き起こすことがあります。
放置すると炎症が悪化し不妊の原因になることもあるため、必要な場合はパートナーも治療を受けることが推奨されます。
定点報告されている性感染症の割合・動向
性感染症の発生動向を定点観測することで、感染症の流行や変動を詳細に把握できるとされています。以下で種類別に解説します。
性器クラミジア感染症
性器クラミジア感染症は、主に若年層で増加傾向にあります。
年齢別で見ると、男性は20代前半が、女性は20代前半が感染が多い傾向にあり、近年は若年層での増加が顕著になっています。
淋菌感染症
淋菌感染症は、男女共に2000年代初頭をピークに減少しましたが、2016年以降は横ばい状態が続いています。
主に若年層の増加が顕著で、男性では2017年以降20代前半の感染が増えています。女性も同様に20代前半で多い傾向にあり、2021年には20代後半で増加が見られました。
性器ヘルペスウイルス感染症
性器ヘルペスウイルス感染症は、男性では2006年にピークを迎えた後減少し、2013年からは横ばいの状態が続いています。
一方、女性では2005年がピークで、その後はわずかに増加傾向にあります。
なかでも、若年層での感染が目立ち、2022年に男性では20代前半から30代後半、女性では20代後半に多い傾向にありました。
尖圭コンジローマ
尖圭コンジローマは、男性で2005年にピーク後に減少しましたが、2012年からは再増加しています。
なかでも2017年以降、20代後半の男性に多く見られ、2022年には20代前半から30代後半の年齢層で増加傾向にあります。
女性では2005年にピークを迎えた後減少し、2013年からは20代前半に多く、10代後半から30代後半で横ばい状態が続いています。
梅毒
梅毒は、2011年から急増を始め、なかでも2021年以降の届出数が著しく増加傾向にあります。
2022年には約13,258例が報告され、これは半世紀ぶりの高水準です。
年齢別では、男性は20代から40代、女性は主に20代の届出数が多いことが確認されています。
後天性免疫不全症候群
後天性免疫不全症候群(AIDS)は、2000年代前半の増加から近年は横ばい状態が続いています。
主に男性における同性間の性行為が新規HIV感染の主な経路とされ、日本では2016年の新規HIV感染者数は1011例、新規AIDS患者さんは437例でした。
このうち、新規報告数の約60%が日本人男性の同性間性行為によるものです。
エムポックス(旧:サル痘)
エムポックス(旧称:サル痘)の国内初報告は2022年7月25日で、その後も感染者数が増加し続けています。
2024年4月19日の時点で、国内で245例の感染が確認されており、その数は増加の一途をたどっています。
性感染症の検査
性感染症の検査は3箇所で行えます。
ここでは、「保健所」「医療機関」「検査キット」に分けて解説します。
保健所
性感染症の疑いがある場合、保健所は無料かつ匿名で相談や検査を受けられます。
全国の保健所でHIV検査を匿名かつ無料で受けられる一方で、クラミジアや梅毒、淋菌感染症などほかの性感染症検査は施設によって異なるため、事前の確認が必要です。
結果が陽性の場合、保健所は適切な医療機関への受診を案内してくれます。
医療機関
性感染症の検査は、医療機関で検査を受けられます。
女性の場合は婦人科、男性の場合は皮膚科や泌尿器科、主に若者向けに設けられた思春期外来やウイメンズクリニックなど、専門的な医療サービスを提供する施設も多くあります。
医療機関を選ぶ際は、インターネットや地元の保健所で情報を収集し、診療科や診療時間、保険適用の可否などを事前に確認することが重要です。
検査キットでも調べられる
検査キットは、プライバシーを確保しながら簡単に性感染症を診断可能とされています。
検査キットには検査物を採取するための詳細な説明書が同封されており、血液、尿、咽頭ぬぐい液、膣分泌物など、必要なサンプルを簡単に採取できます。
検査結果はオンラインで確認できます。もし性感染症に感染していることが判明した場合、提携しているクリニックへの紹介サービスも利用できます。
まとめ
ここまで性感染症の実態についてお伝えしてきました。
性感染症の実態の要点をまとめると以下のとおりです。
・性感染症のなかでも「梅毒」、「クラミジア」、「尖圭コンジローマ」の感染者が急増傾向にある
・性感染症には多くの種類があるが、それぞれの病原体や感染経路を理解し、早期発見と治療が重要
・性感染症は、「保健所」「医療機関」「検査キット」で検査を受けられる
性感染症の実態についてご理解頂けたかと思います。
性感染症の疑いがある方は、一度検査を受けてみることを推奨します。