性病の潜伏期間について!知っておくべき重要なことを解説
性病はどのくらい潜伏期間があるのか知っていますか?
本記事では、性病の潜伏期間について以下の点を中心にご紹介します。
・そもそも性病の潜伏期間とは
・潜伏期間中の感染リスク
・潜伏期間中の注意点
性病の潜伏期間について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
監修医師:
村上 知彦(薬院ひ尿器科医院)
目次 -INDEX-
そもそも性病の潜伏期間とは
「潜伏期間」とは、病原体に感染した後、初めて症状があらわれるまでの時間を指します。
性病の潜伏期間は、その種類により異なります。
淋病の症状が出るまでの期間は、個々の免疫力などにより異なり、強い痛みや膿などの症状がなくても、淋病に感染している可能性があります。
また、全く症状が出ない、または気づかないケースもあります。
したがって、症状の有無や潜伏期間にはあまりとらわれず、不安があれば一度検査を受けることが重要です。
潜伏期間中の感染リスク
性病は、症状があらわれない潜伏期間中でも感染のリスクがあり、また体内に細菌が存在するため、他者に感染する可能性もあります。
性病は、セックスだけでなく、オーラルセックスやアナルセックス、ディープキスなどでも感染します。
したがって、「本番じゃないから大丈夫」と思っていても、知らず知らずのうちに感染していたり、他人に感染させていたりする可能性があります。
主な性病の潜伏期間と検査可能時期
性病の潜伏期間と検査可能時期は病気により異なり、早期発見と治療が重要なため定期的な検査が推奨されます。
以下で詳しく解説していきます。
クラミジア
クラミジア感染は、感染後1日から3週間で症状があらわれ、感染翌日から検査が可能です。
主な症状には、尿道の違和感や臭いがあります。
病原体分離は信頼性が高い検査方法ですが、時間と技術を必要とします。
淋菌
淋菌感染は、感染後2〜7日で症状があらわれます。
主な症状には、排尿時の痛みやおりものの増加があります。
感染の可能性がある場合、感染の翌日から検査が可能です。
ヘルペス
性器ヘルペスは、感染後3日から1週間で症状があらわれます。
主な症状にはかゆみや水泡があり、症状がある場合に検査が可能です。
梅毒
梅毒の感染は、感染後3週間から3ヶ月で症状があらわれます。
主な症状にはしこりやバラ疹があり、感染の可能性がある場合、感染から4週間以降に検査が可能です。
HIV・エイズ
HIV感染は、感染後3ヶ月から数年で症状があらわれます。
主な症状には発熱や咽頭痛があり、感染の可能性がある場合、即日または感染から4週間以降に検査が可能です。
マイコプラズマ
マイコプラズマ・ウレアプラズマは、感染から1〜3週間の潜伏期間を経て、排尿時の不快感などの症状があらわれます。
感染の可能性がある場合、感染の翌日から検査が可能です。
性器カンジダ
性器カンジダ症は真菌感染症で、潜伏期間は長く、数年後に発症することもあります。
男性の症状は、亀頭や包皮に白いカスが付き、亀頭がかさつき、かゆみが出ます。
女性の症状は、陰部の強いかゆみとチーズ状や粥状のおりものです。
感染の可能性が考えられる性行為後、24時間以上経過すれば検査が可能となります。
トリコモナス
トリコモナス症は性感染症の1つで、潜伏期間は1〜2週間です。
男性の症状は、尿道から膿が出る、軽い排尿痛があるなどですが、無症状の場合もあります。
女性の症状は、異臭の強い黄白色のおりもので、膣やその周辺にかゆみや痛みを感じることです。
感染の可能性が考えられる性行為後、24時間以上経過すれば検査が可能となります。
尖圭コンジローマ
尖圭コンジローマは、ヒトパピローマウイルスの感染により、性器周辺に発症します。
潜伏期間は2〜3ヵ月で、男性は亀頭・陰茎に1〜3ミリほどの尖ったイボや乳頭状のイボがあらわれます。
女性は陰唇や会陰部などに乳頭状のイボが出現します。
感染の可能性がある性行為後、3週間〜8ヵ月経過後に視診で症状を確認でき、検査が可能となります。
A型肝炎
A型肝炎は、感染から発症まで平均して約1ヶ月の潜伏期間があります。
症状は突然あらわれ、38℃以上の高熱、吐き気、嘔吐、寒気、倦怠感、食欲不振、黄疸、褐色の尿、白い便、関節痛、筋肉痛などがあります。
感染者の約30%は無症状で、自然に治癒します。
感染から1ヶ月〜3ヶ月以内に、感染の有無について診断が可能となります。
B型肝炎
B型肝炎は、感染から発症まで平均して1ヶ月から6ヶ月の潜伏期間があります。
症状は、倦怠感や嘔吐、尿が茶色くなる、目の白い部分が黄色くなるなどがあります。
感染から6週間以降に検査が可能となります。
C型肝炎
C型肝炎は、感染から発症まで平均して2週間から6ヶ月の潜伏期間があります。
症状は、体が少しだるい、食欲がないなどがありますが、自覚症状がないことも多いとされています。
感染の可能性がある性行為後、2ヶ月以上経過すれば検査が可能となります。
潜伏期間中の注意点
潜伏期間中には、どのような注意点があるのでしょうか?
以下で詳しく解説していきます。
自己判断の危険性
性病は、男女間だけでなく同性間の性行為によっても感染し、必ずしも性器に症状があらわれるわけではありません。
大部分の性病は、医師の治療が必要であり、自己判断による治療は危険です。
また、性病は自然に治るものではなく、早期の発見・治療が重要です。
症状が出ていたり心当たりがあったりする場合は、早めに検査を受け、感染の有無を確認しましょう。
性病を放置した場合の危険性
性病を放置すると、不妊症や子宮外妊娠などの深刻な結果を招く可能性があります。
クラミジアや淋菌は、症状が軽微であるため、多くの人が放置してしまいますが、放置すると体の奥へ進行し、男性では前立腺炎や精巣上体炎、女性では卵管や卵巣の炎症を引き起こします。
HIVやエイズは、免疫力を破壊し、梅毒は全身に症状を及ぼします。
高リスク型HPVは子宮頸がんの原因となり、細菌性腟症は妊娠中に流産や早産の危険性を高めます。
性病は、症状が出ない場合や自然に消える場合がありますが、治癒したわけではありません。
性病は恥ずかしい病気ではなく、放置するのは危険です。
自分の健康を守るため、そしてパートナーを守るためにも、病院での検査を受けることをおすすめします。
性病検査の種類
性病検査は、健康状態を確認し、早期治療を可能にする重要な手段です。
さまざまな種類の検査があり、それぞれが異なる目的を持っています。
医療機関での検査
性病の検査は、感染部位や感染症の種類により異なります。
クラミジアや淋病の場合、女性は膣分泌液、男性は尿を用い、肛門や喉への感染がある場合は、それぞれ肛門周辺の分泌物やうがい液を採取します。
カンジタの場合、性器に症状があるときは綿棒で菌を採取し、症状がないときは、女性は膣分泌液、男性は尿から検査します。
ヘルペスや尖圭コンジローマの場合、病変部分から細胞を採取し、症状が出ている場合のみ検査可能です。
梅毒、B型肝炎、C型肝炎、HIV感染症は血液を採取し、HIV感染症はさらに確認検査も行います。
性病は、同時に複数の細菌やウイルスに感染する可能性があるため、複数の検査を同時に行うことが推奨されます。
また、感染が判明した場合は、パートナーに告知し、同時に治療を開始することで感染を防げます。
検査キット
性病の検査は、医療機関で受ける方法と自宅での検査キットを使用する方法があります。
検査キットは自宅で検体を採取し、郵送するだけで検査が可能であり、誰にも会わずに検査できます。
また、費用も抑えられ、結果も早く確認できる場合があります。
しかし、検査キットでは検査できない性病もあるため、検査キットが対応していない症状の場合は、病院で検査を受ける必要があります。
また、検査キットの結果が陽性だった場合、病院を受診しなければならず、その場合は、病院で再度検査が発生する恐れがあります。
そのため、提携病院が多い業者の検査キットを選ぶことが推奨されます。
提携病院であれば、検査キットの結果で治療を開始できるため、再検査は不要です。
性病検査をする際は、医療機関で受ける場合と検査キットの場合のメリット・デメリットを理解し、適切な方法を選ぶことが重要です。
検査のタイミングと頻度
性病の検査は、症状の有無や感染の可能性により、そのタイミングと頻度が異なります。
分泌物の異常や排尿痛などの症状がある場合は、すぐに検査を受けることが推奨されます。
また、治療後も完治確認検査をすることが重要です。
症状がない場合でも、不安な行為や最後の性行為から一定期間経過した場合は検査を受けたほうがよいでしょう。
自覚症状がない性病も多いため、早期発見と治療のためにも、年に1度程度の定期検査が必要です。
これらの検査は、自身の健康を保つだけでなく、パートナーを守るためにも重要です。
性病の予防
性病にならないようにするためには、どのような予防法があるのでしょうか?
以下で詳しく解説していきます。
日常的な習慣
性病は、どんな方でも感染する可能性があり、予防にはコンドームの使用が必須です。
しかし、コンドーム使用でも尖圭コンジローマや梅毒などは防げない可能性があります。
コンドーム使用以外には、性行為をしない、特定の相手以外とは性行為をしない、避妊具を装着する、うがいをするなどの日常的な習慣が予防に役立ちます。
また、性行為の前は身体を洗い、清潔な状態に保つこと、生理中や体調が悪い時は性行為を避けること、不衛生な場所では性行為をしないことなど、日常的に注意することが必要です。
パートナーとのコミュニケーション
性病の予防には、パートナーとのコミュニケーションが重要です。
新しいパートナーができたら一緒に検査を受け、2人でセーファーセックスについて考えることが大切です。
また、パートナーが遊び人でなくても、過去のパートナーからの感染の可能性があります。
性病の検査は、お互いを思いやり、良い関係を築くための第一歩となります。
厚生労働省の新しいデータによると、性病の感染者は増加傾向にあります。
しかし若い世代ほど、性病は「特定の性的指向や職業の人だけがかかるものだ」という誤った認識があります。
性病の予防として、定期的な検査とパートナーとのオープンなコミュニケーションが重要であることを理解することが必要です。
まとめ
ここまで、性病の潜伏期間についてお伝えしてきました。
性病の潜伏期間の要点をまとめると、以下の通りです。
・潜伏期間とは、病原体に感染した後、初めて症状があらわれるまでの時間のことである
・性病は、症状があらわれない潜伏期間中でも感染のリスクがあるため、注意が必要である
・潜伏期間中は、自己判断せず医師に判断をあおぐことが重要である
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
参考文献
- 性病、治療しないとどうなるの? 今月の特集|STD研究所
- 性器クラミジア感染症とは|NEED国立感染症研究所
- 淋菌感染症とは|NEED国立感染症研究所
- 性器ヘルペスウイルス感染症とは|NEED国立感染症研究所
- 梅毒とは|NEED国立感染症研究所
- AIDS(後天性免疫不全症候群)とは|NEED国立感染症研究所
- マイコプラズマ肺炎とは|NEED国立感染症研究所
- 性器カンジダ症|東京都性感染症ナビ
- トリコモナス症|東京都性感染症ナビ
- 尖圭コンジローマ Condyloma acuminatum | 東京都感染症情報センター
- A肝|NEED国立感染症研究所
- B型肝炎とは|NEED国立感染症研究所
- C型肝炎とは|NEED国立感染症研究所
- 性器カンジダ症|日性感染症会誌