2型糖尿病の症状は?1型との違いや治療について解説
糖尿病は生活習慣病のひとつであり、身近な病気です。
聞き馴染みのある病気である一方で、「2型糖尿病にはどのような症状があるのだろう」、「2型糖尿病と1型糖尿病にはどのような違いがあるのだろう」など糖尿病についてさまざまな疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
この記事では2型糖尿病の症状や原因を始めとし、1型糖尿病との違いや治療方法について解説します。
糖尿病をお持ちの方やそのご家族の方など、糖尿病について知りたい方はぜひ記事を参考にしてください。
監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
目次 -INDEX-
2型糖尿病の症状は?
2型糖尿病は初期だと症状が出ないこともありますが、病気の進行に伴いのどの渇き・頻尿・体重減少・疲労感などの症状が出現します。
それぞれの症状について以下で詳しくみていきましょう。
初期は症状が出ないこともある
糖尿病の症状は血液中の血糖が上昇する「高血糖」の状態になることで引き起こされます。そのため糖尿病は初期にはほとんど自覚症状がなく、すぐには気付きにくいのが特徴です。
一方で血糖が徐々に上昇するにつれ、倦怠感・頻尿・尿量増加・体重減少・のどの渇きなどの症状が出現し、合併症による症状も出てきます。
のどの渇き
のどの渇きは糖尿病の症状のひとつです。血液中が高血糖状態となると、体内で血液を水分で薄めようとする「生体の防御反応」が起こります。
このように高血糖状態の場合、生体防御のメカニズムにより「のどが渇く」という信号を出すことで、水分摂取を促します。
頻尿
頻尿は糖尿病の代表的な症状です。
糖尿病になると血液中のブドウ糖が多くなるため、その濃度を下げようと、体内で水分を欲します。血中のブドウ糖が多いことは血液濃度が高いことを指し、その改善のために体は自然と水分を求めるようになります。
この多量の水分摂取が、尿量の多くなる「多尿」の原因です。また糖分過多により、尿に糖分が含まれるため、排尿回数が増える「頻尿」も起こります。
体重減少
糖尿病の症状に体重減少があります。
血糖値が非常に高い場合に「自分の膵臓から出るインスリンが少ない」などの状態になると、食事から摂取したブドウ糖をエネルギーとして使用せず、体内の脂肪や筋肉のたんぱく質をエネルギー源として分解するため体重減少が起こります。
特に急激な体重減少は極度のインスリン不足の可能性があるため、注意が必要です。
疲労感
糖尿病により疲労感を覚えやすくなります。糖尿病が原因で体が疲れやすくなるのは「高血糖のとき」と「低血糖のとき」の2つです。
高血糖のときは体が適切に血糖を使えない状態であり、体が必要とするエネルギー需要に見合っていないため、体の疲れが出現します。
一方で低血糖のときは血糖が低いことでエネルギー不足となり、疲労感を引き起こします。
糖尿病では高血糖状態と低血糖状態が、体の疲れの原因です。
2型糖尿病と1型糖尿病の違いは?
2型糖尿病と1型糖尿病は、発症しやすい年齢・進行のしかた・発症原因に違いがあります。具体的にそれぞれどのように違うのかについて、以下で詳しく解説します。
発症しやすい年齢に違いがある
2型糖尿病と1型糖尿病では発症しやすい年齢に違いがあり、2型糖尿病は主に中高年以降に発症しますが、近年では若年層に増加がみられています。
一方で、1型糖尿病を発症しやすい年齢は乳幼児期から思春期です。
進行のしかたに違いがある
進行のしかたにも違いがあり、2型糖尿病ではインスリンによる血糖低下作用の低下や、膵β細胞からのインスリン分泌が不十分なために血糖値が上昇します。
2型糖尿病は1型糖尿病と比較すると気付かないうちに発症し、ゆっくりと進行する場合が多いのが特徴です。
一方で1型糖尿病では膵臓のランゲルハンス島に炎症が起こり、インスリンを作る膵β細胞が壊されます。それによりインスリンの量が足りなくなり、ブドウ糖が細胞に取り込まれなくなることで血糖値が上昇します。
そのため外からのインスリン注射が必須となる場合が多く、2型糖尿病よりも進行が早いため生命の危機に瀕するようなインスリン欠乏状態へと進行しやすくなるのです。
発症原因に違いがある
2型糖尿病と1型糖尿病では発症原因が異なるのが特徴です。
2型糖尿病の発症原因ははっきりしていませんが、遺伝因子とともに生活習慣や外部要因が関係して発症すると考えられています。
一方で、1型糖尿病の原因は遺伝因子・自己免疫反応の異常・ウイルス感染と考えられています。
2型糖尿病の原因は?
2型糖尿病には「インスリン」が深く関わっており、インスリンの作用が十分でないためにブドウ糖が有効に使われず、血糖値が高くなっています。
インスリンには血液中のブドウ糖を筋肉や脂肪に取り込ませる作用があるため、食後に血糖値が上がりすぎないようにする役割を持ちます。
一方で空腹時のインスリンは低い値で維持されるため、ブドウ糖が筋肉や脂肪に必要以上に取り込まれることはありません。
しかし2型糖尿病の場合、上記の働きを担うインスリンの分泌が不足、もしくは効果減少の状態となっています。
このインスリン分泌量の低下と、インスリンの効果減少について以下で詳しく解説します。
インスリンの分泌量の低下
2型糖尿病の原因のひとつがインスリン分泌量の低下です。
インスリン分泌量の低下は、膵臓にあるランゲルハンス島β細胞の機能が低下することによって引き起こされ、高血糖状態を引き起こします。
さらにインスリン分泌量の低下には「インスリン抵抗性」が深く関わっていることが明らかです。
「インスリン抵抗性」とは、標的細胞のインスリンに対する感受性が低下していることを指し、インスリン抵抗性になると糖分を取り込む機能が低下した分、血液中の糖分濃度が下がらず高血糖の状態が続きます。
それにより膵臓はインスリンがさらに必要だと判断し、より多くのインスリンを分泌するため、膵臓の機能低下につながりインスリン分泌量が下がるのです。
これにより血液中の糖分を上手く取り込めず、高血糖状態に拍車をかけ、2型糖尿病をさらに進行させます。
インスリンの効果の減少
インスリンの効果の減少とは、インスリンが細胞に作用する効果が低下することです。これは長期的なインスリン抵抗性に伴って、細胞がインスリンに対して適切に反応できなくなり、インスリン効果が低下することが原因とされています。
そのためインスリンの効果の減少が結果的に2型糖尿病の原因となっています。
2型糖尿病の治療
2型糖尿病の主な治療には食事療法・運動療法・薬物療法の3つが挙げられます。それぞれの治療方法やその特徴について、以下で詳しくみていきましょう。
食事療法
食事療法とは血糖コントロールに有効な糖尿病治療のひとつであり、多様化する食に対する価値観や食事環境に柔軟に対応しながら、医師や管理栄養士とともに患者さんの病態に合わせて行われます。
食事療法ではバランスのとれた食事摂取への指導や食べ過ぎへの注意喚起だけでなく、咀嚼などの食行動への指導も行われます。
例えば、2型糖尿病患者における三大栄養素の推奨摂取比率は以下の通りです。
- 炭水化物を50~60%エネルギー(1日あたり150g以上)
- たんぱく質を20%エネルギー以下
- その他の残りの割合を脂質
このほかにも食物繊維は1日あたり20g以上の摂取、食塩摂取は高血圧合併例の場合1日あたり6g未満を目標値として定められています。
また咀嚼・食事摂取時間・食事摂取速度は血糖コントロールに関係し、咀嚼回数を増やすことにより満腹感は上昇することや、食事摂取時間が短い方ほど糖尿病コントロール状況が悪いことが明らかです。
そのため糖尿病患者への食事療法のひとつとして、食事摂取速度を落として食事摂取時間を長くする「食べ方への指導」も行われます。
このように食事療法では、糖尿病患者の推奨摂取比率を考慮したバランスの摂れた食事指導や、時間をかけてよく噛んで食べるようにするなど「食べ方」への指導が行われます。
運動療法
運動にはブドウ糖や脂肪酸の利用を促進する作用があり、糖分が細胞や筋肉の中に吸収されることで血糖値を下げ、血中のブドウ糖の量を良好にコントロールします。
特に「有酸素運動」が糖尿病の改善に有効で、運動療法にも取り入れられています。
有酸素運動はウォーキングや水泳などが代表的です。「ややきつい」と感じる中等度の有酸素運動を1週間に3~5回、20~60分間行うのが望ましいとされており、運動しない日が2日間以上続かないようにするのがポイントです。
さらに運動療法では有酸素運動のほかにも、スクワット・腹筋・腕立て伏せ・ダンベル運動などの「レジスタンス運動」や、片脚立ち・ダンデム(一直線)立位・ステップ運動などの「バランス運動」も組み合わせて実施します。
また運動療法を行う際には、冷や汗・動悸・手足の震え・頭痛などの低血糖症状に注意することや、血糖コントロールが不安定なときは運動強度と運動時間を控え目にするなど無理のない範囲で行うことが大切です。
薬物療法
血糖降下薬とインスリン製剤は糖尿病の薬の代表です。血糖降下薬にはさまざまな種類があり、血糖状態やインスリン分泌量をみながら選択されます。
インスリン分泌が少なくなり、血糖降下薬では血糖コントロールできなくなった場合には、インスリン療法を行います。
糖尿病の具体的な薬は以下の通りです。
- 膵臓のランゲルハンス島の細胞に働き、インスリンの分泌量を増やす「SU薬」
- SU薬よりも効き目が速く、インスリンがすぐに増えて血糖値が高くなるのを抑える効果を持つ「速効型インスリン分泌促進薬」
- 腸でブドウ糖の吸収を遅らせることにより、食後の高血糖を抑える「α-グルコシダーゼ阻害薬」
- 肝臓や筋肉のインスリンに対する反応を良くすることで、肝臓が糖を作って血液中に送り出すことや、消化管からの糖の吸収を抑える「ビグアナイド薬」
- 肝臓や筋肉のインスリンに対する反応を良くし、血液中のブドウ糖が肝臓や筋肉に取り込まれやすくする「インスリン抵抗性改善薬」
- インスリンの分泌量を増やす作用を持つ「DPP-4阻害薬」
- 尿と一緒に体内の過剰なブドウ糖を排出し、血糖を低下させる「SGLT2阻害薬」
- 膵臓で作られるインスリンの量が不十分な場合に使用される「インスリン製剤」
- インスリンを分泌させる役割を持つ「GLP-1受容体作動薬」
このように糖尿病にはさまざまな種類の薬があるため、患者さんの病状に合わせて薬物療法が行われます。
2型糖尿病の合併症は?
2型糖尿病の合併症は糖尿病性網膜症・糖尿病性腎症・神経障害の3つが代表的です。
末期には失明や透析治療が必要となるだけでなく、脳卒中や虚血性心疾患などの心血管疾患の発症につながることも明らかとなっています。
これらの合併症の共通点は「細い血管の異常」によるものであり、糖尿病の代謝異常が長く続くことにより、それぞれ網膜・腎・神経を代表とする臓器に異常を来たすのが特徴です。
糖尿病性網膜症の進行により視力障害や失明・糖尿病性腎症の進行により腎機能障害や腎不全・神経障害の進行により下肢の壊疽など、糖尿病による合併症がさまざまな症状を引き起こします。
さらに糖尿病では全身の動脈硬化が促進されるため、心筋梗塞・脳梗塞・下肢血管における閉塞性動脈硬化症の原因となり生命を脅かすため注意が必要です。
2型糖尿病を予防するには?
2型糖尿病を予防するためには生活習慣を見直し、食事や運動を含めた望ましいライフスタイルを送ることが大切です。
また一次予防・二次予防・三次予防と、「糖尿病に罹患していない方への予防」から「糖尿病を悪化させないための予防」まで、段階に分けた予防が効果的とされます。
糖尿病に罹患しないことを目的とした一次予防では、一般国民を対象に身体的活動の増加・学童期からの食生活に関する正しい習慣・肥満者への減量を行います。
糖尿病となるリスクが高い集団へは職域やコミュニティーでの健康づくり活動を通して行うことが有効です。
糖尿病の悪化予防を目的とした二次予防では、検診受診率の向上・生活指導の強化・治療の継続へのアプローチが大切です。
また糖尿病による合併症予防を目的とした三次予防では、治療のガイドラインに沿って適切な予防を行うことが重要とされます。
このように2型糖尿病を予防するためには、良好な生活習慣を送ることに加え、3つの段階に沿って予防方法を変えることが効果的です。
編集部まとめ
2型糖尿病は初期だと自覚症状がない場合もありますが、進行に伴いさまざまな症状を引き起こします。また、2型糖尿病と1型糖尿病では作用機序に違いがあり、発症年齢や治療方法も異なるのが特徴です。
さらに2型糖尿病の場合、進行は1型糖尿病に比べてゆっくりですが、放置すると網膜症・腎症・神経障害などの合併症を引き起こす恐れもあり危険です。
糖尿病は一次予防・二次予防・三次予防など段階に沿った予防が重要なため食習慣や運動習慣を始めとした生活習慣を見直し、望ましいライフスタイルを送りましょう。
参考文献