うつ病の治し方は?原因・症状・回復方法を解説
うつ病は、主要な心疾患の一つで、持続的な気分の低下や興味喪失などの症状がでることを特徴としています。
近年、うつ病などの心の問題に対する社会のとらえ方がよい方向に変わりつつあり、社会的に認知されつつある疾患の一つといえるでしょう。しかし依然として、学業や就労に関わるような問題は多く存在しています。
そのため、最近ではメンタルヘルス対策に力を入れる企業も多くなってきています。
うつ病の治療には、継続的なアプローチが必要ですが精神科医や心理療法士などの専門家による治療を受けることが重要です。
薬物療法や心理療法などさまざまな治療アプローチが存在します。それぞれの症状や重症度に応じて、適切な治療法が選択されます。
専門の医師の指導のもとあなたに合った診療方法を選びましょう。
監修医師:
舘野 歩(東京慈恵会医科大学附属病院)
目次 -INDEX-
うつ病の治し方は?
うつ病の治し方には、どのようなものがあるのでしょうか。うつ病治療の基本となるのは、休養・環境調整・薬物治療・精神療法です。
しっかりと休養をとり、心身を休ませることがまず、治療の第一歩となります。うつ病の原因の1つであるストレスを軽減するために、環境調整も大切です。
勤務時間を減らしたり、家事を手伝ってもらったりなどの対策を考えましょう。あわせて、薬物治療も行われます。抗うつ薬や患者さんの症状にあわせて抗不安薬・睡眠導入薬などが処方されます。
精神療法は、調子のよい状態の維持と再発防止の2つを主な目的として行う治療です。困ったことが起きたときにマイナス思考になってしまうのを改善する認知行動療法や、うつ病の原因となった対人関係の改善を目指す対人関係療法などがあります。
このほかにも運動療法などさまざまな治療法があります。
うつ病の原因
うつ病の原因は明確に特定されているわけではありませんが、複数の要因が組み合わさることで発症すると考えられています。
以下に、うつ病の一般的な原因をいくつか記載します。
- 環境によるもの
- 性格によるもの
- 遺伝的なもの
上記の要因といわれるうつ病ですが、ここでは原因に関して詳しく解説します。
環境によるもの
うつ病は、環境により発症や進行に影響を与える可能性があります。失業・離婚・人間関係・経済的困窮・重度のストレスなどの環境要因によってうつ病が発生するリスクが高くなります。
孤独などの社会的孤立により、うつ病の発症が引き起こされることもあるので社会や人との関わりあいも重要です。
職場では、長い時間過ごすので人間関係の問題や労働負荷などが加わるとワークバランスの欠如によってうつ病のリスクも高くなるのです。
性格によるもの
うつ病の発症では、個人の性格や心理的な特性が一因として考えられます。
以下のような性格的特徴を持つメランコリー親和型性格はストレスを感じやすいといわれています。
- 生真面目・几帳面
- 責任感が強い
このほかにも、完璧主義だったり、凝り性で弱音をあまり吐かない執着性格も注意しましょう。ただし、あくまでも性格は危険因子の一つです。
そのため、必要以上に深くとらえる必要はないでしょう。
遺伝的なもの
近親者にうつ病発症者がいる場合は、発症するリスクも高くなります。うつ病の発症に関与すると考えられる複数の遺伝子が特定されています。
近親者でうつ病を発症した人がいる場合は、発症するリスクも高まるのでうつ病への理解を深めておくと自分への対策にもなるので気をつけておきましょう。
しかし、遺伝的な素因がうつ病の発症に寄与する可能性はあるものの、環境により、ストレス・トラウマ・人間関係の問題などがトリガーとなって発症する場合もあるので一概にはいえません。
重要なことは、遺伝的な要素がうつ病の発症に影響する可能性があることであり、個人の状況やリスク要因にもとづいて適切な治療やサポートを受けることが重要です。
うつ病の症状
うつ病の症状には、どのようなものがあるのでしょうか。一般的な症状といわれるものを下記に記載します。
- 精神症状
- 身体症状
上記のように、精神的な症状と人との関わりに関しても身体的な症状がありますが、ここでは詳しく解説するので参考にしてください。
精神症状
うつ病の精神的な症状は、個人によって異なります。気分の低下により、悲しみや絶望感などが起こり虚無感などを感じることで日常の楽しみや興味をもちにくくなります。
日常生活を送るなかで、日々の活動に対しての意欲が減退してしまい物事に取り組むことが困難になる状態です。集中力や注意力も低下するので、仕事に関しても影響を与えてしまいます。
身体症状
うつ病は、精神的な症状以外に身体的な症状も引き起こします。持続的な疲労感や体力の低下を引き起こし、日常的な活動に対するエネルギー不足を感じるのです。
うつ病の症状として、顔つきが変わるともいわれますが、具体的には無表情やぼんやりとした表情になることが増えるとされています。
本人にとっては、無意識の場合が多く、気付かないうちに精神的に追い詰められている状態になるのです。
うつ病の人は、睡眠障害にもなりやすく過度の睡眠や不眠症などに悩まされる場合があります。消化器系の症状として、胃痛・腹痛・消化不良・便秘・下痢などのトラブルに悩まされることがあるので注意が必要です。
うつ病の発症から回復までの流れは?
うつ病の発症から回復するまでは、どのくらいの期間がかかるのでしょうか。本当に治るのか心配になるところです。発症から回復までの周期を下記に記載します。
- 急性期
- 回復期
- 再発予防期
上記のような周期の変化があるので、ここから詳しく解説します。
急性期
うつ病の急性期は、一般的には症状が重く、集中的な治療と支援が必要とされる期間のことです。
悲しみや絶望感が強く現れる時期で、感情の起伏が激しく、泣きたい気持ちや無気力感が感情を支配します。
睡眠障害を発症すると睡眠の質と量の低下がみられるので、必要に応じて睡眠補助薬などの使用を検討する必要があります。
急性期のうつ病では、食欲の低下や過食などにより体重の増減がみられるので、栄養バランスの取れた食事を心がけながら規則的な食事スケジュールを作ることが重要です。
回復期
うつ病の回復期は、症状の改善がみられる時期になります。日常生活や社会的機能の回復が進むことで気分の安定やポジティブな感情が戻り始める時期です。
回復期には、日常生活の活動などに、興味を持つことができるようになります。仕事や学校などの社会生活への関わりへ復帰が始まる時期です。
症状の改善が見え始めたからといって、焦って行動してしまうと逆戻りになる可能性があるので専門の医師の指導のもと進めることが重要です。
再発予防期
うつ病の再発予防期とは、うつ病の症状が緩和した時期のことをいいます。症状の再発や症状悪化を防ぐために、適切なケアや対策を講じることが重要です。
薬物治療や心理療法などを継続的に行うことで症状の再発を防ぎます。ストレスを受けることで再発しないように、適切にストレスを管理して再発予防をしましょう。
再発予防期を越えることが大きなハードルになるので、ここを乗り越えることができればうつ病の克服へとつながるのです。
症状が改善したからといって、生活習慣を崩さないようにしてください。健康的な生活習慣を維持することは再発予防に有効です。
うつ病の回復方法は?
うつ病の回復方法はどのような方法があるのでしょうか。一般的にいわれている回復方法を下記に記載します。
- 十分な休養と睡眠をとる
- 自分の性格や考え方を知る
- 適度な運動をする
上記の回復方法を取ることで、うつ病を克服できます。ここでは、回復方法に関して詳しく解説します。
十分な休養と睡眠をとる
うつ病では、十分な休養と睡眠をとることは重要なことです。休息と睡眠は身体と心の回復に欠かせない要素であり、うつ病の症状改善に役立つからです。
休息は、身体と心の疲労を回復させ、生きるエネルギーを与えてくれます。定期的な休息をとることはうつ病を克服するために重要となるのです。
睡眠は、脳と身体の回復に必要で、情緒を調整し認知機能を向上させます。十分な質の高い睡眠を確保するように心がけることは、うつ病の症状の軽減や回復につながるのです。
また、睡眠を取らなくても横になって体を休め、リラックスする状態を作ることは、身体にも脳にも休養を与えることになるのでおすすめです。
自分の性格や考え方を知る
うつ病の治療では、自分の性格や考え方を知ることは重要です。
自己理解を深めることによって、うつ病の発症や症状の悪化に関連する要因を理解しましょう。
そのような要因に対処するための効果的な戦略を見つけることが、うつ病の治療方法につながります。
自分の性格を知るためには、自分自身を客観的に観察してください。自己の感情や思考・行動に注意を払い、どのような要因がうつ病の症状に関連しているのかを知ることが重要です。
自分が思っているよりも、客観的に性格を診断してもらうことで、治療方法も変わるので医師からの診断や知人からの助言にも耳をかたむけましょう。
Webなどのオンライン自己評価テストなどの評価ツールを利用してみるのもおすすめです。自分の性格や思考パターンを知るきっかけになるかもしれません。
また、心理療法士や心理カウンセラーのサポートを受けることも有益です。専門家は今までの経験によって、うつ病の治療や回復に役立つアプローチを提供してくれます。
適度な運動をする
適度な運動は、うつ病の症状の軽減にとても効果的です。運動をすると心理的にもよい影響を与えることができます。
運動すると、脳内のエンドルフィンやセロトニンなどの神経伝達物質が増加し心地よい気分やリラックス効果を得られます。
運動によって、自己達成感や自己肯定感が高まり、自分への自信やポジティブな感情が増えることがあるからです。
具体的なアプローチは、有酸素運動が効果的です。ウォーキング・ジョギング・サイクリングなどは心肺機能の改善と心身の健康を促進します。
運動を習慣にすることで、運動が趣味になる場合もあります。運動の趣味によってうつ病の症状が軽減され、回復も早くなるのです。
過度な運動だと身体への負担が大きくなるので、自分の体力に合わせた運動を選ぶことが大切です。日常的に継続できる運動を短時間でも定期的に取り入れることをおすすめします。
うつ病は自分で治せるの?
うつ病は自分で治すことはできるのでしょうか。一般的には難しいといえるでしょう。うつ病は、心の疾患の一つですが複雑な疾患のため専門家の支援と適切な治療が必要です。
ただし、自己管理や自己ケアによって症状の改善や回復を促すことは可能なので、ストレスをためないようにしましょう。
適切な自己管理を行い、睡眠・バランスの取れた食事・適度な運動・ストレス管理・リラクゼーション法などを実践してみてはどうでしょうか。自分の身体と心の健康には静養することが重要です。
自己認識を高めて、うつ病の症状やトリガーを理解すると、自己理解をして認知の再構築とストレス管理のスキル向上が可能となるでしょう。
医薬品や心理療法などの専門的な治療法は、自分ではできません。うつ病の管理や回復を支援するための重要な手段となるので専門家のサポートを受けるようにしましょう。
自己判断で治療をしない
うつ病は、自己判断で治療すべき疾患ではありません。重度のメンタルヘルスの問題からくる症状で、専門家の指導と適切な治療が必要です。
自己判断で治療を行ってしまうと適切な診断が行われず、状態が悪化してしまう可能性があります。
うつ病を治療するためには、専門の医師や心理療法士との相談が重要になります。医師はその人の症状に合わせて、必要な治療法を判断し心理療法士は心理的なサポートや治療プログラムを提供してくれるのです。
その人の症状に合わせて適切な治療方法が必要になるので、うつ病にはこの治療が効果があると勝手に判断しないようにしましょう。
専門家の指導のもと、適切な治療プランを立てることで、症状の軽減や回復の促進ができるのです。
焦らず治療することが大切
うつ病の治療では、焦らずに適切な治療を行うことが重要です。専門家からの診断結果に基づき、個々の治療プランを設定してもらうことによって、うつ病を克服するための治療が始まるのです。
うつ病の治療は、長くかかるのが一般的なため治療を継続できるように初めに治療計画を立ててみましょう。
また、治療プロセスは個人によって異なるので、自分のペースで進めることを心がけてください。うつ病の完治を目標としているわけですから、じっくりと治療に向きあうことが重要になってくるのです。
編集部まとめ
ここまで、うつ病の治し方や原因・症状・回復方法などを解説しました。
うつ病は、どのような人でも発症する可能性がある心の疾患であることを忘れないでください。
誰もがうつ病になるリスクを持っているのです。
現代社会の特定の状況や生活スタイルによって引き起こされる健康上の問題を近代病と呼びますが、うつ病も現代社会のストレスや圧力が一因となることがあり、近代病の一つとされています。
現代社会では、高い競争・孤立感・労働環境の変化などによって、うつ病のリスク要因となる場合があります。情報過多や社会的なつながりの減少なども、うつ病の発症に関連しているとされるからです。
このように、現代に生きる人達にとって心身ともに負担になる状況が多く存在しています。
社会情勢の悪化や不安定さは、雇用や経済的な問題にも影響を与え、経済的な困難や財政的な不安がうつ病の発症や回復の妨げとなるのでないでしょうか。
うつ病から立ち直るプロセスは人によって異なるので、焦らずに自分のペースで進めることが重要です。挫折を繰り返すこともあるかもしれません。あきらめずに専門家の指導を受け、一歩ずつ前進していくことでうつ病は克服できる可能性が高くなるのです。
うつ病になったからといって落ち込む必要はありません。段階的に治療を行えば、明るい未来を取り戻すことができるでしょう。
参考文献