クラミジアの症状を見逃さない!男性が知っておくべき検査方法や治療薬まで解説
「クラミジア」という病気を知っていますか? 正式名称は「性器クラミジア感染症」と言い、性感染症の1つです。クラミジアにかかると、排尿時の痛みや性器のかゆみといった症状が現れるだけでなく、不妊や感染拡大につながる危険性があります。そこで本記事では、クラミジアの特徴や主な感染経路、男性によく見られる症状などについてまとめています。検査方法や治療薬についても掲載していますので、ぜひ最後までご覧ください。
監修医師:
村上 知彦(薬院ひ尿器科医院)
目次 -INDEX-
クラミジアとは
クラミジアとは、クラミジア・トラコマティス(Chlamydia Trachomatis)という病原菌が感染することで起こる病気です。性感染症には、性器ヘルペスや淋菌、梅毒、HIVなどさまざまな種類がありますが、その中で最も感染者数が多いのがクラミジアです。感染部位としては尿道や腟、喉が挙げられますが、自覚症状がないことがほとんどのため、感染に気づかず放置されてしまうことも少なくありません。
感染経路
性感染症ということからもわかるように、クラミジアはセックス・オーラルセックス・アナルセックスといった性行為によって感染します。クラミジアは精液や腟分泌液に存在するため、避妊具を使用せずに感染者と性行為をしたり、肛門に男性器を直接挿入したり、舌で性器に触れたりすると感染の可能性が高くなります。また、感染者の体液が手についた状態で目に触れたりこすったりすると結膜に感染することもあります。さらに、クラミジアに感染している女性が出産し子どもに感染してしまうというケースも少なくありません。
感染者数
前述したように、クラミジアは性感染症の中で最も感染者数が多い病気で、世界では年間120万人以上が感染していると言われています。日本でもクラミジアの感染者数は多く、国立感染症研究所の調査によると、年間報告数は2002年がピークでした。その後は減少傾向にありましたが、2016年頃からは徐々に増えてきていることがわかっています。また、年代別では、20代前半の女性や20~30代の男性に多く発症しているというデータが出ています。
クラミジアの症状
クラミジアは男女を問わず感染する病気ですが、男女の性器の形が異なることから現れる症状にも違いがあります。ここからは、男性によく見られる症状について紹介していきます。
尿道の症状
クラミジアに感染すると、尿道のかゆみや不快感、排尿時の痛みが生じるようになります。これらの症状が現れた場合、尿道に炎症が起きている「尿道炎」を発症している可能性があります。また、透明や乳白色の膿が出ることもあります。
結膜の症状
性行為を行った後に目の充血や目やに、まぶたの腫れといった症状が現れた場合はクラミジアの感染を疑いましょう。クラミジアに感染した人の膿や分泌物、体液などが手指を介して目に感染することがあるからです。これは、成人型封入体結膜炎と言います。
精巣の症状
精巣に感染が広がり、睾丸の上部が腫れたり痛くなったりすることもクラミジアの症状の1つです。感染に気づかず放置してしまうと、尿道や精管などを通って炎症が広がり、精巣上体炎になることがあります。また、発熱を伴うこともあります。
喉の症状
喉に現れる症状としては、腫れや痛みなどです。フェラチオやクンニリングスといったオーラルセックスをした際に喉に感染し、咽頭炎のような症状が出ます。無症状であることがほとんどですが、場合によっては耳閉感や難聴、鼻閉、咽頭痛、頸部リンパ節の主張、滲出性中耳炎を併発することもあります。
女性特有の症状
精巣に異常をきたすなど男性特有の症状がある一方で、女性特有の症状もあります。例えば、おりものの増加や不正出血、下腹部の痛み、性交時の痛みなどがこれにあたります。女性は、ホルモンの影響でおりものの量が増えたり生理時以外に出血が見られたりすることもあるため、これらの症状が現れてもクラミジアだと疑う人は少ない傾向にあります。
クラミジアの放置リスク
クラミジアは前述したような症状が出ることもあれば、出ないこともあるということがご理解いただけたかと思います。症状が出ないことで「無意識のうちに放置してしまっている」というケースも少なくありません。そこで、ここからはクラミジアを放置することで生じるリスクについてご紹介します。
不妊の原因になるリスク
クラミジアが自然に消失することは基本的にはありません。しかし、時間がたつにつれて治癒したかのように錯覚してしまうことがあります。ただこれはクラミジアの感染範囲が変わり、これまでに感じていた痛みや違和感がなくなるだけであって、「治った」わけではありません。女性がこの現象に気づかずクラミジアを放置すると、卵管炎や卵巣炎、骨盤腹膜炎、肝周囲炎を起こしてしまいます。卵管が炎症を起こすと、卵管の機能がうまく作動しなくなり子宮外妊娠を起こしたり、卵管内が癒着して不妊症の原因になったりします。
感染を拡大させるリスク
ここまで男性・女性に見られるクラミジアの症状をご紹介してきましたが、クラミジアに感染している方の半数以上は無症状です。そのため、感染に気づかないままパートナーと性行為をして、感染を拡大させてしまうというリスクがあります。「避妊具を装着せずに性行為をしてしまった」「性行為後から下腹部に少し違和感がある」「オーラルセックスをした」という方は、感染拡大を防ぐためにも一度検査を受けるようにしましょう。
クラミジアの検査方法
続いて、クラミジア検査の種類や、主な検査方法についてご紹介します。「検査方法を詳しく知りたい」「検査を受けたいと考えているが何科に行けば良いかわからない」「病院で知り合いに会いたくない」という方はぜひ参考にしてください。
検査の種類
クラミジアの感染を調べる方法は主に2つあります。1つは、クラミジアそのものを調べる方法です。尿や腟分泌液、うがい液などを採取し、そこから菌を特定します。核酸増幅法などがこれに当てはまります。もう1つは、クラミジア感染によってできる抗体を血液検査によって調べる方法です。酵素抗体法などがあり、この方法は主に女性の腹腔内感染を疑う場合に行われます。
検査方法
何科を受診すれば良いかわからず検査機会を失っているという方もいらっしゃるでしょう。クラミジアなどの性感染症に関する検査は、主に性感染症内科で受けられます。また、泌尿器科や産婦人科、耳鼻咽喉科などで性感染症検査を行っているところもあります。クリニックのホームページや医療ポータルサイトなどを通じて、通いやすいクリニックを探しましょう。
もし「仕事が忙しくて病院に行く時間がない」「知り合いに会うかもしれない」「病院に行くのは恥ずかしい」という理由で受診をためらっているのであれば、検査キットを活用することをおすすめします。検査キットはインターネットなどから手に入れることができ、ご自身で検体を採取して医療機関や専門機関に郵送するだけで簡単に検査ができます。人に会うことなく、ご自身の都合の良いタイミングで検査が行えるのがメリットです。検査結果の開示方法については検査機関によって異なりますが、インターネット上でIDや氏名などを入力して結果を確認するのが一般的です。検査結果が書類で送られてくることもあります。
クラミジアの治療薬
最後に、クラミジアの治療に使われる薬についてご紹介します。主に抗生物質が用いられますが、テトラサイクリン系・マクロライド系・ニューキノロン系とあらゆる種類があり、症状によって使用する抗生物質はもちろん必要な量や服用期間も異なります。自己判断で薬を選択してしまっては、治らない可能性があるほか体の奥にまで感染を広げてしまうこともあるため、医師の処方のもと服用することが非常に大切です。
テトラサイクリン系
テトラサイクリン系の薬には抗菌作用があります。服用することで菌の増殖を止めつつ、人の体に備わっている防御機能によって菌を除去することができます。服用方法としては、1日に1~2回の服用を7日間続けます。飲み薬として使用するのが一般的ですが、重症の方に対しては点滴を使って静脈に直接投与することもあります。なお、食欲不振や悪心・腹痛・嘔吐・めまいといった副作用が現れることがあります。また、胎児の歯や骨の発育に影響を及ぼす可能性があるため、妊婦が使用することはできません。
マクロライド系
テトラサイクリン系の薬とは異なり、妊娠中でも使用できるのがマクロライド系の薬です。悪心や嘔吐・下痢といった胃腸症状が副作用として現れる場合がありますが、感染部位での細菌増殖を抑えて殺菌するという作用が期待できます。1日1~2回の服用を単回もしくは7日間続ける必要があります。マクロライド系の薬は基本的に作用が長続きするため、治療の際に選ばれることが多くなっています。
ニューキノロン系
ニューキノロン系はテトラサイクリン系と同じく、抗菌作用があり、妊娠中の服用は禁忌とされている抗生物質です。副作用として、下痢や吐き気・食欲不振などが現れる場合があります。ニューキノロン系の薬は、1日1回の服用を7日間続けるのが一般的です。なお、ミネラルを含む製剤や食品と併用すると効果が弱まってしまう可能性があるため注意しましょう。
まとめ
クラミジアの感染経路や症状、検査方法や治療薬などについてまとめましたがいかがでしたでしょうか? 繰り返しにはなりますが、クラミジアはご自身では気づきにくい病気です。あらゆる合併症や不妊につながる病気ではありますが、適した治療を受ければ完治が見込めるものですので、まずは一度検査を受けることをご検討ください。「パートナーと結婚を考えている」「これから妊活を始めようと思っている」という方は特に、性感染症への知識を深めておきましょう。
参考文献