性病検査8項目とは?男性・女性の検査の違いや検査キットによる検査の流れを解説
パートナー以外と性関係を持ち、性病の不安を感じたことはありませんか。
性病は無症状の場合や自然に症状が消え完治したようにみえる場合もありますが、体内に潜伏して時間が経過してから症状がでることも少なくありません。
梅毒やクラミジアなどは、感染者が増加傾向にあり世界的に注目されている性感染症です。
性感染症は検査で特定できるため、早期に発見し治療を開始すれば感染を広げることがありません。
本記事では、性病や検査の方法を詳しく解説します。
監修医師:
村上 知彦(薬院ひ尿器科医院)
目次 -INDEX-
性病検査の8項目とは
今回解説する8項目の感染症は、性病検査ができる主な感染症です。
あらかじめ感染症が特定できている場合は単発の検査も可能ですが、特定できずに不安を持っている人は一括した検査を受けることで感染症を特定できます。
B型肝炎
B型肝炎は、B型肝炎ウイルス(HBV)に感染して肝臓が炎症を起こして肝細胞が壊れ、肝臓の働きが悪くなる病気です。急性B型肝炎と慢性B型肝炎があります。
急性B型肝炎の感染経路は、主に体液(性的接触)や血液(輸血・臓器移植など)から感染すると考えられます。
急性B型肝炎は、成人期の初感染でウイルスに感染して発病するもので、免疫不全の症状がなければ持続感染化せず自然治癒する傾向が強いです。
急性B型肝炎の症状は以下のものがあります。
- 微熱
- 食欲不振
- 全身倦怠感
- 嘔吐
- 悪心
- 右季助部痛(助骨の右下の痛み)
- 上腹部膨満感
- 黄疸
ほとんどの場合、症状は1ヵ月程で回復します。乳幼児・免疫機能の低下・免疫抑制剤を投与中などの場合キャリアに移行する場合があります。
慢性B型肝炎は、B型肝炎ウイルスのキャリアが発病するもので、放置すると慢性肝疾患(慢性肝炎・肝硬変・肝細胞がん)を発症する場合もあるので注意が必要です。
C型肝炎
C型肝炎とは、C型肝炎ウイルス(HCV)に感染して、2週間~6ヵ月程すると肝障害を起こす肝臓の病気です。
C型肝炎の感染経路は主に、体液(性的接触)・血液(輸血や臓器移植など)・未消毒の器具の使いまわしなどです。
C型肝炎ウイルスに感染した人の70%程は無症候HCVキャリアになり、感染を放置すると慢性肝炎に移行しやすく、肝硬変や肝細胞がんに進行する危険性が伴います。
C型肝炎の急性期の症状は軽度の倦怠感や食欲不振程度で、黄疸もほとんどわからない程度です。
慢性C型肝炎は、自覚症状がほとんどないといわれているため、血液検査で肝機能異常がわかることも少なくありません。
HIV
HIV(ヒト免疫不全ウイルス)は、エイズ(後天性免疫不全症候群)の原因になるウイルスです。HIVに感染しても数年間は自覚症状がでないことがあります。
HIVの治療を施されないでいると、免疫機能が徐々に低下して日和見感染症※やがんなどを引き起こす状態(エイズ)になります。
HIVの主な感染経路は、体液(精液・膣分泌液)・血液(輸血・臓器移植・医療事故など)・母子感染(経胎盤・母乳)などです。
HIVは体外にでると不活化する弱いウイルスのため、手指接触・唾液・公衆浴場などの日常生活の過程で感染した報告はありません。
HIVに感染すると2~3週間後にHIV血漿がピークに達します。感染初期の症状には以下のものがあります。
- 発熱
- 咽頭痛
- 筋肉痛
- 皮疹
- リンパ節の腫れ
- 頭痛
自覚症状のない人や無菌性髄膜炎になる程強い症状がでる人まで、症状には個人差があります。
初期症状は数日~10週間程続き、免疫機能の働きでウイルスが減少して初期症状は自然に治まり定常状態になります。
定常状態になった後、5~10年程の無症候期が過ぎると再び発熱や帯状疱疹などがでやすくなるでしょう。
※健康な人はかからない弱い病原体による感染症
梅毒
梅毒は、梅毒トレポネーマに感染して起こる性感染症です。主な感染経路は、性的行為や類似の行為により皮膚や粘膜に生じた傷から感染します。
妊婦が感染すると母体だけではなく胎盤を通じて胎児に感染して早産や死産になることもあります。また、新生児に神経や骨の異常がみられることもあるので注意が必要です。
梅毒の症状は、第1~4期に移行する場合があります。第1期の発疹は放置しても2~3週間程で消滅しますが、HIV感染者は2期まで症状が続くでしょう。
第1期梅毒は、感染して数時間で血液を通して全身に散布され、3週間程すると性器や口腔内に小豆大から指先程のしこりやただれが生じます。
やがて痛みや痒みのない発疹が全身に広がっていくでしょう。男性は冠状溝・包皮・亀頭部に好発し、女性は大小陰唇・子宮頸部に好発します。
第2期(感染から約3ヵ月後)になると全身の皮膚や粘膜に発疹や臓器梅毒の症状がみられるようになります。第2期梅毒の発疹は多彩で特徴的なものはバラ疹です。
梅毒トレポネーマが中枢神経系に浸潤すると髄膜炎や脳梗塞などを引き起こすことがあります。
さらに感染から数年から数十年して脊髄癆(脊髄の変形)や進行性麻痺が生じて死に至ることもあります。
淋菌
淋菌は、淋菌に感染したことで起こる性感染症です。淋菌は弱い菌のため、感染者の粘膜から離脱すると数時間で感染力が失われます。
淋菌は温度変化・日光・乾燥・消毒剤などに弱いため、感染経路は性的行為または類似性行為での感染がほとんどです。クラミジアと重複感染する場合も少なくありません。
主な症状は、男性は淋菌性尿道炎を生じるため、感染後2~9日間程の潜伏期後に排尿時の激痛・尿道からの膿・精巣の腫れや発熱などの症状があります。
女性は、子宮頚管炎を生じるため、おりものの増加・不正出血・下腹部痛・喉の違和感などがあります。
ただし、ほとんどの場合自覚症状が乏しく感染を自覚しないままパートナーに移ることも少なくありません。淋菌は何度も再感染する性感染症です。
トリコモナス
トリコモナスは、膣トリコモナス原虫(寄生虫)に感染して起こる感染症です。
主な感染経路は、性的行為により感染する場合が少なくありませんが、性行為が未経験の女性・幼児の感染がみられることがあります。
身につけている下着やタオルなどが感染源になることや健診台・便座・浴槽などからも感染します。
男性は感染すると尿道炎の症状を伴いますが、ほとんどの場合無症状です。稀に尿道口からの膿・排尿時の痛みなどを生じる場合があります。
女性は男性と比べると症状は多彩です。無症状の感染者が20~50%程いますが、3分の1程は6ヵ月程経過してから症状がでることがあります。症状には以下のものがあります。
- 悪臭が強い泡状のおりものの増加
- 外陰部や膣の刺激感
- 強い痒み
- 性交時の痛み
- 排尿障害
- 頻尿
女性の症状の発症原因は、トリコモナスが膣の乳酸桿菌と拮抗して起こる説が有効です。
膣トリコモナスは、再発を繰り返すことも少なくない感染症で、原虫の残存・隣接臓器からの自己感染・パートナーとのピンポン感染など注意が必要です。
カンジダ
カンジダはカンジダ属真菌(カビ)によって発症する感染症です。
カンジダは、通常は体内の全消化管内の粘膜や皮膚の表面に存在する常在菌です。
病原性は高くはありませんが、免疫力が低下している人や抗腫瘍療法中などにより日和見感染症を起こすことがあります。
カンジダ属感染症は表在性カンジダ症と深在性カンジダ症に大きく分類できます。
表在性カンジダ症には4種類あり、口腔咽頭カンジダ症・食道カンジダ症・外陰膣カンジダ症・カンジダ皮膚炎です。
口腔咽頭カンジダ症は、咽頭壁や粘膜に白苔を形成し、味覚異常・痛みなどの症状があります。
外陰膣カンジダ症は女性の75%が生涯に1回は発症するといわれており、外陰部の掻痒感・おりものの増量・排尿痛などが現れることがあります。
深在性カンジダ症は複数の臓器や組織に侵襲するため、重篤な病態になることがあるため注意が必要です。
クラミジア
クラミジアは、クラミジア・トラコマチス病原体の感染症です。成人は主に性行為により感染しますが、新生児が感染している場合は出産時の産道感染が原因です。
若年層の女性の感染率が高く、性感染症のなかでも罹患率が高いため、世界的に注目されています。
男性の症状は尿道炎が主で、精巣上体炎の原因とされ排尿痛・尿道不快感・掻痒感などがあります。潜伏期間は2~3週間程です。
女性は、子宮頸管炎・骨盤内付属器炎・肝周囲炎・不妊などがありますが、自覚症状がないことも少なくありません。
部位ごとの性病検査方法と男性・女性の違い
検査で正確な判定をだすには病態毎に採取のタイミングが違います。それぞれのタイミングは以下になります。
性病は肛門性交(アナルセックス)や口腔性交(オーラルセックス)などで性器以外に感染していることもあるため、性器以外に肛門や咽頭から検体を採取します。
検体採取後、検鏡法・培養法・核酸増幅法(PCR法・TMA法)のいずれかで行います。
性器
男性は尿や尿道分泌物を採取します。女性は膣壁を綿棒でこすって膣分泌液やおりものを採取します。
検査で検知できる性病は、トリコモナス・カンジダ・性器淋病・性器クラミジアです。
肛門
肛門に綿棒を挿入し、直腸から分泌物を採取します。検査で検知できる性病は、直腸肛門淋病・直腸肛門クラミジアです。
咽頭
咽頭からの検査は、長い綿棒を使用して喉の奥をぬぐって検体を採取します。
水道水または生理食塩水でうがい液を採取する方法では、咽頭の広範囲の粘膜細胞や粘膜付着物が簡単に採取でき、患者さんの負担を減少し菌の検出率も高くなります。
うがい液検査で検知できる性病は、喉淋病・喉クラミジアです。
病院で性病検査を受ける場合は何科を受診する?
性感染症を専門にみる内科を性感染症内科といいます。男性の場合は泌尿器科や皮膚科、女性の場合は婦人科も性病の検査を実施しています。
ただし、検査項目が限定されている場合もあるので性感染内科以外を受診する場合は、先に病院に問い合わせるとよいでしょう。
性感染症は、無症状の場合や排尿時の痛みや性器に痛みがでるものなど疾患によってさまざまな症状がでます。
恥ずかしいし、我慢できるからと放置していると治療が長引くことや重症化して重篤な疾患に移行する場合があります。
気になる症状がある場合は、躊躇わずに検査を受けましょう。
性病検査キットによる検査の流れ
性病の検査は病院や保健所などで受けられますが、オンライン診療や検査キットを購入して自宅で検体を採取する方法なら他人と会うこともなく簡単です。
検査キットによる検査の流れは以下になります。
- インターネットで希望の検査キットを購入
- 自宅に検査キットが届く
- 説明書をみながら検体を採取する
- 採取した検体を郵送する
- 数日後にWeb上で検査結果を確認する
オンライン診療を受ける場合は、検査キット郵送前と検体郵送後に医師の診察を受診できます。薬の処方も可能です。
編集部まとめ
性病は、不特定多数のパートナーと性的行為があり、予防措置を怠った場合に感染する可能性があります。
感染しても無症状の場合もあるので、感染に気付かずパートナーに感染させたり胎児に影響がでたりした例も少なくありません。
性病は早期に治療を開始すれば治療も容易で、合併症のリスクも減ります。
性病の検査を受けるのは勇気がいりますが、匿名で検査を実施している病院や保健所などもあります。
検査キットは自宅で採取できるので他人に知られることなく検査が可能です。気になる症状があるのなら検査キットでの検査も選択肢に入れてください。
参考文献